第57話 沼田竜一
カチャカチャカチャ!
カチャカチャカチャ、カチャ!
俺の名前は
『ドラゴンヴィーナスIIIグロテスク♡』略して『ドラヴィ』
いわゆる、ネトゲだ。
ネトゲは10代の頃からちょこちょこやってはいたが『ドラゴンヴィーナス』には見事にハマった、ハマってしまったのだ。
ゲーム内のフレンドとチャットしたり、クエストしたり、アバターもすごくカッコよく作れる! 時間を忘れて没頭した。
あっさりネトゲ廃人と化した俺は、当然の如く社会との縁を切る道を選んだ。
この6畳の部屋からろくに出る事もなく、親の金で生活。特に自己嫌悪や罪悪感などもなく、平然とそんな異常な日常を過ごしていた。
そんな俺だったが、ちゃんとゲーム内では『恋人』がいた。
現実はただの童貞野郎。彼女なんてできた事もない。その『恋人』の存在が俺のすべて、支えだった。
『ゆあたん』
気が強いかと思えば甘えん坊。そんなツンデレな彼女に俺はゾッコンだった。毎日 毎日ゆあたんと過ごす時間が楽しくて楽しくて。
しかし、神はそんなニートな俺を許さなかった。幸せは、俺のすべては、突然 闇に葬られることとなったんだ。
ゆあ:[ぬまっち。私 今日でドラヴィを卒業する事になりました。今までありがとうね♡ すごく楽しかったよ!]
「は!? な、なに? なに言ってんの? ゆあたん、俺たちはずっと永遠だって言ってたじゃん!」
カチャカチャカチャ!
ぬまっち:[どうして!? ねえっ! なんでだよっ! 裏切んのかよ!?]
「はあっ、はあっ、ふざけんなよ、許さねぇよ。ゆあ、早く返事をしろっ!」
ゆあ:[子育てで忙しくなるからごめんね。旦那さんにもやめろって怒られてるんだ。許してね。OK?]
「子育てが忙しくなるだと?」
ゆあ:[ぬまっちとは本当に楽しく遊んでもらったから正直にね。今までありがとうございました。これからもがんばってね♡]
「黙れッ! いつか会ってちゃんと付き合おうと……そ、そうか、俺が勝手にそう思ってた、だけか」
カチャカチャ
ぬまっち:[あっそ。お幸せに]
ザァァァァァー!!
ゴロゴロ……ゴロゴロォッ!
絶望に打ちひしがれていると、外は大雨。雷まで鳴る始末。まるで俺の心模様だった。
「ゆあに落ちやがれ! 死ねっ! バカ女! ガキなんか作りやがって! ヤリマンが……くそっ! くそっ! くっそおおおおおおおおぉっっ!!!」
ガシャンッッッ!!
ガシャンッッッ!
「はあ、はあ!」
なにもかもがどうでもよくなった俺はパソコンをぶっ壊した。
「ゆあをレイプしてぶっ殺すっ! どこに住んでんだぁ!? なんとしても見つけ出してやる!」
俺のゆあに対する殺意が頂点に達した時だった。
『素晴らしい……』
「うおっ? だ、誰っ!?」
『その殺意、本物ですねぇ。すごいすごい。私には分かりますよ』
「マジでなんなんだ!? この声は!? 幻聴!? 俺、ヤバいのか!?」
『ケケケッ! ヤバくなんてありませんよ。あなたは選ばれた人間。そう、神になるに
「俺が神!?」
『そうです。あなたを見下す人間に天罰を与えるのです。『死』というね』
「俺を見下す人間に天罰を……」
俺はその男の声にどんどん引き込まれていった。その声には不思議な力があった。こんな惨めな自分を優しく包んでくれるような、そんな感覚。
『さあ、腐神『
「ゆあ……ゲスな女……殺すッ!」
そのあたりから俺の記憶は曖昧だ。口にドロドロの物体が入ってきて、俺は今まで感じた事のない高揚感に襲われた。目が覚めると俺の体は泥になっていた。形も自由に変形できた。
『こ、これが神の力ですかっ!?』
『その通り。あなたは腐神『底無死』と契約を交わし、神と一体化した。今日から『ヘドロ』と名乗るのです』
『ヘドロ……分かりました』
『では、我々ゼロワールドの本拠地に向かう。行くぞ、ヘドロよ』
『はい』
ザァァァァー!
ゴロゴロ……ゴロゴロ……
ズガァ─────ンッ!
ザァァァァー!!
とある都市のビルの高層階。
『ゼロワールドの本拠地』
『連れてきました牙皇子様。これが腐神『底無死』の契約者ヘドロです』
『
『はい』
『私とフロッグマンはTK都のテレビ局をジャックする。そして、我々『ゼロワールド』の存在を公にする』
『分かりました。こちらも用意できました。『
『ありがとう! うん! ぴったりだよ。さて、暗くなったら、ひとっ飛び行くからね。フロッグマン』
『ゲロ!』
そして数時間後、あの世間を震撼させた『電波ジャック』が行われたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます