第48話 YouTube

 美咲の『虹色の命の炎』の特性。


 それを隠す意味が、イバラには全く分からなかった。


「ちゃんと能力を教え合って、ゼロワールドとの戦いに挑むんでしょ? どうしちゃったの? 美咲」


「……今は、激しく言いたくない」


 美咲は頑なだ。そんな2人を見かねて真珠が話しかけた。


「今は言いたくない。じゃあ、いずれは教えてくれるってことよね? それでいいんじゃない? イバラっち」


「何か理由があるんだよね? 美咲ちゃん」


 藤花も優しく微笑みかけた。


「なくはない。激しくあるよ」


「分かったよ。またその時が来たら、ちゃんと教えてよね」


「激しく、そのつもりです」


 イバラはなんとか自分を納得させた。



 パンっ!



 アンティキティラが軽く手を叩く。


「美咲、その時が来たらちゃんとみんなに言うんだよ」


「はい」

(言わなくていいのが、1番だけど……)


「よし! じゃあ、とりあえず、みなさんの能力、特性、どっちも理解はできましたね?」


「了解じゃ!」


「いい感じねっ♡」


「はい!」


「分かったっ!」


「激しく」







 黒宮藤花 17歳 168センチ

 髪色『赤』能力『天才』

 命の炎『紫』

 特性『変幻自在』……炎を武器化できる。武器は手から離せない。接近戦に特化。


 天使イバラ 19歳 160センチ

 髪色『金』能力『光速移動』

 命の炎『青』

 特性『ブリザード』……燃焼に加え凍結可能な炎。3〜5メートル冷気を噴射できる。


 風原美咲 14歳 156センチ

 髪色『緑』能力『見抜く力』

 命の炎『虹色』

 特性『???』


 甲賀陣平 74歳 165センチ

 髪色『白』能力『飛翔』

 命の炎『黄』

 特性『ナノレベル』……目に見えないナノレベルの炎を敵の周りに配置、爆破できる。相手の動きに反応して爆発もする。『火の玉ファイアボール』を標的めがけて発射する事も可能。


 西岡真珠 35歳 162センチ

 髪色『ピンク』能力『テレパシー』

 命の炎『黒』

 特性『メデューサ』……5匹の『炎の蛇』を召喚、操れる。標的をどこまでも追いかけていく『追尾攻撃』が特徴。









「今後はゼロワールドの動向に注意して行動してもらいます。単独での行動は厳禁です。最低でも2人、できる事なら5人で動いてもらいたい。それが理想です」


「運命共同体ってわけねっ♡」


「そうですね。さきほど天使さんが言った通り、腐神の力はアンティキティラのそれを上回っている。連携攻撃が要となるでしょう」


「一体どんな腐神が他にいるのか、想像できないですし、その場の判断力が、かなり問われますよね」


「お願いねっ! 天才っ!」


 イバラが、とびきりの笑顔で、藤花の肩に手を置く。


「イバラちゃん、恥ずかしいってばーっ! でも、西岡さんの能力、すごい助かりますよ!」


「うふ♡ そーお?」


「はい! 腐神と遭遇したらまず、テレパシー状態を作ってもらって、それから戦いましょう! 連携も取り易いはずですっ!」


「OK♡ 任せといてっ!」


 






「ね、ねぇ、これ見て。ゼロワールドの動画がYouTubeにあがってる……」


 腐神の出没情報を探ろうと、スマホをいじっていた美咲のその言葉に、皆、息を飲んだ。


「今度はなんなのよ?」

(牙皇子狂魔、結構な目立ちたがり)


 美咲は、テーブルにスマホを置いて動画を再生した。


『みなさん、こんにちは。ゼロワールド、牙皇子狂魔です』


 相変わらず、声はボイスチェンジャーで変えている。


『実はですね。昨晩、我々の仲間の腐神がひとり、何者かに消されたのですよ』


「あっ……」

(あの氷の腐神の事だっ!)


『つまり、ゼロワールドに楯突くやからが存在する、という事です』


「狂魔ちゃん、怒ってるわねえ」


「楯突くに決まってるでしょ! 何言ってんのっ! こいつっ!」


『私はその存在を許さない。何人いるか分からないが、必ず、殺すッ!』


 髑髏どくろの仮面の下の表情が、怒りで歪んでいるのがハッキリと分かる。


『本日、V県に腐神を送りこんでやる。『力ある者』よ、止めてみろ。我々ゼロワールドの侵攻を!』


「本日 V県って、既に新たな腐神が、このあたりにいるって事っ?」


「あらまっ♡」


「ワシら5人で出迎えてやるかの」


「エロジジイ! がんばってね!」


「た、退治に行きましょう!」

(フロッグマン、そして昨夜の白雪、次はどんな腐神なの? 方舟様、見守ってて下さいっ!)


『ブラック・ナイチンゲール』


 ついに5人揃って出陣である!

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