第42話 西岡さん

 噂のダイナマイトボディ西岡さんがついに登場。エロジジイ陣平の反応が気になるところ。


「美咲っち、その女の子とおじいちゃんは? ひょっとして……」


「藤花さんとエロジジイこと陣平だよ。2人ともブラック・ナイチンゲールだよ」


「そうなんだあ。おじいちゃんもブラック・ナイチンゲールなんだー!」


 西岡さんを見つめる陣平の顔が、少し、いや、だいぶ引きつり始めた。


「この方が西岡さん? ダイナマイトボディの?」


 そんな陣平をお構いなしに、西岡さんは自己紹介を始めた。


「どもどもー! 西岡にしおか真珠しんじゅでーすっ! ピッチピチの35歳でーす♡ えへっ! よろちくびー!」


 西岡さんは、大きな胸の前で乳首をつまむ真似をしながら、とびきりの熟女スマイルでウインクをした。藤花も慌ててあいさつをする。


「どどっ、どうもっ! 黒宮藤花です! 17歳です! よろちくお願いしますっ!」

(つられて『よろちく』って言っちゃったよ……)


「わ、ワシの、ダイナマイトは? どこ? ねえ、どこ?」


 陣平は迷子の子供が母親を探すように、キョロキョロしていた。キョロキョロが止まらない。


「んんっ? どうしたのぉ? おじいちゃん?」


 西岡真珠 35歳。彼女は陣平の思い描いていた『ボンッキュッボン』のダイナマイトボディではなかった。

 

 いわゆる『ボンッボンッボンッ』のポッチャリ系だった。


「イバラちゃん、嘘つきじゃあ!」


 陣平は涙を流し、うなだれた。


「おじいちゃん? なんで泣いてるのぉ? しょうがないなぁ!」


 ムギュウウッッッ♡


「ほへええぇぇぇ♡」


 西岡真珠は陣平をGカップの胸に抱き、頭を『よしよし』してあげた。


「元気出して。泣いちゃダメ♡」


「ハンマぁ♡ カンマあ……♡」


 陣平はまるで母に抱かれる赤子のように、Gカップの至福の中、深い眠りに落ちていった。












 おーい














 おーい!










「おーい! エロジジイ! 起きろーっ! 西岡さんのおっぱいで寝てんじゃなーいっ!!」


「ハンマぁ?」


 遅れて到着したイバラに起こされた陣平は、完全な赤子と化していた。


「正気に戻ってよ、陣さんっ! もうっ! 西岡さんもダメじゃん! 誰かれ構わず抱きしめちゃっー!」


「ごっめーん。つい、母性本能が溢れ出しちゃって! てへっ♡」


 西岡真珠は、ゆっくりと赤子の陣平を胸から解放した。


「…………………………」


 陣平の様子が明らかにおかしい。黙ってうつむいている。するとっ!


 ガバッ!!


「甲賀陣平ですっ! 28歳です! 僕、君のことが好きです! よかったら付き合ってください!」


 藤花、イバラ、美咲、皆 あんぐり。


「ま、まいったな。私、旦那と子供いるんだけどぉ。それでもよければ」


「いやいや! 西岡さんちょっと待って。私が殴って正気に戻すから。まったく武道の達人が聞いてあきれるっつーの!」


 イバラは強く拳を握った。


「僕と付き合ったら! 特典はっ!」


 ボカッッ!!


「特典は! じゃないっての!」


「パ、パンティ、テックス……!」


 パタッ……!


 陣平は再び、深い眠りについた。


「可愛いおじいちゃんね!」


「あはは。で、ですね……」


 藤花は思った。


(腐神退治、これで大丈夫なわけっ?)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る