第39話 天野晶子

 私の名前は天野あまの晶子しょうこ、17歳。高校中退。アルバイトしながら『夢』に向かって頑張ってるよっ!


 私の夢。それは『アイドル』になる事! 歌にもダンスにも自信ありまーす!


『踊ってみた』の動画では結構人気あるんだよ! だいぶ、私の名前も有名になってきたと思うんだけど。


天使あまつかイバラ』


 聞いたことないっ?


 これから要チェックだから! 覚えておいてね! よろしく〜♡























(パパ……)


 高校を中退して何をするのかと思えば歌ったり踊ったり? くだらん!


 お父さん、晶子の夢なんですって! 応援してあげましょ。ねっ?


 美里はちゃんと私たちと同じ桃香とうきょう大学に進学したというのに!


 美里はお勉強好きだから。


 はぁ、アイドルが夢って、そんなもんになられても何も嬉しくないんだよ、こっちは!


 すごいじゃないですか! アイドルだなんて! 私もなってみたかったわ。なぁんてっ!


 なにをお前まで馬鹿なことを言ってるんだ。情けない!




(ママ……)













 私たち天使あまつかさんと一緒に活動できるなんて嬉しすぎます!


 こっちこそ ありがとう! こんなかわいい子達が応募してきてくれるなんて超感動っ! みんなの名前、考えてきたから!


 わあ! やったあ!



 今日からあなたは姫野ひめのミルクココア!


 はいっ!




 あなたは朝宮あさみやサラマンダ


 うわっ! かっこいい!




 あなたは竜胆りんどうブルーマーブル


 かわいい!



 そして、あなたは薄羽陽炎うすばかげろうニイナ


 すごいですぅ!




 私たちは今日から『満開のSAKURA』として活動していくよっ!


 はいっ!!


 もう、マジで敬語とかやめてね!

 

 イバラでいいからっ!









(みんな……)
















 晶子、お前ちゃんと将来の事は考えてるのか?


 うん。


 で、アイドルか?


 うん。


 お前レベルで何ができる? かわいい子なんて山ほどいるんだ。歌がうまい子も、ダンスのうまい子も。お前のはどうせ どっちも平均以下だろ?


 でも、情熱は誰にもっ















 お前はバカか?












 ………………



 情熱? そんなもんはいっぱしの実力を身につけてから言え! 売れないシンガーソングライターみたいな事を言ってるんじゃないッ!


 でも、そこそこ人気は……


 そんなものは一時いっときだ。次から次へとすごい子達が出てくるんだ。飽きられて、捨てられて、後になにが残る?


 そ、それはっ










『後悔』と『みじめさ』だ。よく覚えておけッ!


 …………!!


 単なる『思い出づくり』に無駄に時間を使うんじゃないッッッ!


 …………!!


 復学して大学へ行けッッ! 天野家の恥さらしがッ!


 …………いやっ!


 なんだとッ!?


 私はアイドルになるのッ!














(好きに生きさせてっ!!)




















 大変申し上げにくいのですが、娘さんは『バミューダ病』という不治の病に侵されています



 なんだとっ!?


 そんな……


 余命は半年と言われています。どうかご家族で幸せに過ごしてあげて下さい









(生きられない?)















 なんなの!? ちゃんと教えてッ!ねぇっ! ママっ!


 ……晶子。私は貴方が大好きよ。アイドルの夢だってずっと応援してたわ。だから、隠しはしない!


 ママ、ありがとう。大好き。


 晶子、貴方はバミューダ病という病気なの。不治の病よ。


 バミューダ病?


 そう。今の医学では治せない。


 そ、そうなんだ。


 で、余命、半年。


 は、半年で、死ぬの? 私


 そう、よ。だからね! 残りの時間を大切にしましょう。ママずっとそばにいるわ。


 もうっ! 満開のSAKURAのファンも少しずつ増えてきて、これからって時なのにっ!


 ふふふ。あなたらしいわね! こんな時でも体よりアイドル?


 あっははは。いたた……。だって、私の大事な夢だもん。














(死にたくないよォッ!)





























 初めまして。私、風原と申します。娘が天使イバラさんの大ファンでして、どうしても会いたいと聞かなくてですね。無理を承知でお願いしたんですが、お会いできて嬉しい限りです。


 晶子、じゃなくてイバラは、すごく喜んでいますよ。ファンの皆さんから元気を頂いているようなものですから。


 風原美咲です。イバラさん、今日は会ってくれてありがとう!


 美咲ちゃん? 可愛い! いえいえ! こっちこそ超嬉しいよっ!


 どうだ? 美咲、大丈夫なのか?


 勿論。激しく大丈夫!


 ん? 何が大丈夫なの?


 お母さん。私はこの子の病を治せます。


 ええっ!? そんなっ、不治の病なんですよ! この子はっ


 私には、そういう力があるのです。




 ガタンッッッ!


 ギリギリギリギリッ!


 ガタガタガタガタガタガッッッ!!




 ボボォンッボォオォオオッッッ!!



 嘘っ!? か、体が軽いっ! 痛くないよっ! なんでも出来そうっ!


 し、晶子がっ、金髪ぅっ!?


 お母さん、すみません。先ほども言ったように病は治せるんですが余命の方は変わらないんです。


 そ、そんな、残りの時間をベッドで寝て過ごすより、よっぽど素晴らしいです! 本当にありがとうございます!よかったわね! 晶子っ!


 うんっ! ママっ!! 嬉しい!




(ママ……)











(ママ……)















(ママの子供で良かったよ……)















(ママ、ずっと一緒にいたいよ……)

























(まだ死にたくないよッッ!!!)






























「マ、あっ、夢……?」


「あっ! イバラちゃん、起きた? よく寝れた?」


「うん。よく寝れた。ふわぁ」


 イバラは、目に溜まっていたそれを嘘のあくびで誤魔化した。



「2人とも風呂が沸いたぞいっ! 昨日の疲れを取る為にも入っておけ」


(絶対覗くつもりだ。丸わかりだよ。陣平さん)


(エロジジイ、凍らせとこう)


 とはいえ、とりあえず風呂には入りたい2人であった。

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