第38話 ナノレベル

「ぐぐぐっ! このジジイっ!」


 九鬼涼太が思い切り振り下ろした金属バットを片手で受け止めた1人の老人の姿に、鬼鬼羅羅の集会場は異様な空気に包まれた。


「なんだよっ? あの炎っ!」


 しかも、その受け止めている手からは、黄色い炎が吹き出しているのだから その驚きは尋常ではない。


「やっぱり異世界の人間だぜっ!」


「普通じゃねェ!」


 怖気づく者も出てきた。


「逃げられても困るんでな。さくっとお仕事させてもらうぞい!」


「し、仕事だぁ!?」


 バッ!!


 九鬼は金属バットを離し、後ろへ下がった。そして!


「くたばれやぁぁああっ!!!」


 渾身の蹴りを放つ!


 バシンッ!!


「あっ……」


 九鬼の体重の乗った重い蹴りは、風船をキャッチするぐらいにあっさりと陣平に受け止められた。


 その瞬間、九鬼涼太は感じた。


『同じ生き物ではない』と。


「悟ったか九鬼涼太。お前が今まで犯してきた罪。つまらん裁判など抜きでワシが合理的に判決を下してやる。控訴など認めんぞ!」


「あっ、あわっ、わ!」


「恐いか? 一瞬でワシの力が分かったんじゃから、大したものよ」


「た、助け、てっ!」


「判決っ! ブラチンの名の下に! 甲賀陣平っ! 貴様を処刑するッ!」


 ボアウォォッッッ!!


「うがっ……」


 一瞬で九鬼涼太は灰となり、夜風に乗って消えた。


「ろくに苦しまなかったじゃろ。これがワシのスタイルじゃ。感謝せい」


 暴走族『鬼鬼羅羅』


 ここにはまだ100人程のメンバーが揃っている。しかし、誰一人としてこの老人に近づこうとはしない。


 逃げることも出来ない。


 ただ、驚愕のなか立ち尽くしていた。


「よしよし。いい子ちゃんじゃ。そのまま動くでないぞ。動けば皆、死ぬ」


 そう言って陣平は『飛翔』の能力で上空高く舞い上がった。


「まっ、動かなくても死ぬがな! さらばじゃっ!」


 パチンッ!


 陣平は指を鳴らした。




 ド──────ンッ!!


 バババババッ!!


 ボボォンッ!!


 ボボォンッ!!


 ボボォンッ!!


 バ───────ンッ!!


 ドドォォオンッ!!!!








 総勢100人とくだらない改造がほどこされたバイク。すべてが爆発の炎に焼き尽くされ、灰になり消え去った。


「お仕事完了じゃ。メールしとこ」


 甲賀陣平の黄色のみことの炎の特性は『ナノレベル』


 標的は気づかぬうちに周りを大量のナノレベルの炎の粒に囲まれる。


 『粉塵ふんじん爆発ばくはつ


 まさに、それである。


 先程のように自動操作も可能だが、相手の動きが激しいほど、それに反応して強い爆発が起こる。



















「陣平さんのその黄色の炎って、そんな特性があるんですね」


「炎の大きさはナノレベルからバランスボールぐらいまで調整できるがよ。飛び道具としても使えるんじゃ」


「ああっ、火の玉を飛ばせるんですね! 鉄砲みたいに!」


「そういうことじゃ!」


「私の変幻自在。飛ばせるかな?」




 ボボォンッ!




 藤花は、紫の炎を右手に纏わせ、てのひらを空へ向け、気合を込めたっ!



「はあっっっ!!!」
















 シーン……











「だ、ダメでした。あはは」



「わはは。そう うまくはいかんか」

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