第31話 能力『天才』

「藤花ぁー! どういうことー?」


 イバラは気持ちよさそうに宙に浮かぶ藤花を見上げた。



 スタッ!



 藤花はゆっくりと着地。自分の髪色の能力について話し始める。


陣平じんぺいさんが教えてくれたように髪に意識を集中したらね、頭の中で声がしたの」


「声? 私のときとは違う」


「なんて言われたんじゃ?」


「『あなたはなんでも会得できる』そう聞こえました」


「なんじゃとぉ!?」


「なんでも会得!? だから陣さんの飛翔をっ!?」


「やってみたら、できちゃった!」


「じゃ、じゃあ、ひょっとして私の光速移動もできるんじゃないっ?」


「イバラちゃん! ちゃんと見せて」


「わ、わかった! いくよっ!」







 ビッシュッッッウン!!!









「ちゃんと見たー? 見えなかったと思うけどっ! あはは!」


 20メートル先に一瞬で移動したイバラ。それを見た藤花は、全身バネのイメージでイバラに向かって飛んだ!


「てえいっ!!」


 




 ビッシュッッッウゥッン!!!








 バッ!


「でーきたよっ! イバラちゃん♡」


「うわあっ!! でたあーっ!」


「やめてよ。人を幽霊みたいにー!」


 藤花はイバラと同じように光速で移動。2人は驚きを隠せなかった。


「こりゃたまげた。ワシの予感がみごとに的中じゃ!」


「藤花ずるいーっ! いいなぁ」



 陣平の『飛翔』イバラの『光速移動』その2つをひとめ見ただけで会得してしまった藤花の赤髪の能力。


「これは『天才』じゃな」


 陣平はそう名付けた。


「藤花はもともと頭いいんだもんね。やろうと思えばなんでもできるって、完全にチートじゃーん!」


「お勉強ちゃんとしといてよかったー! やったー!」


「うるさい、うるさい。あー、なんにも聞こえなーい! 私はどうせバカですよー!」


「ブラチン最強の女戦士が誕生したわい!」


「陣さん。美咲の前でだけはブラチンって言わないであげてよ。絶対に泣いちゃうから!」


 陣平はお構いなしに話し出した。


「それよりイバラちゃんや! 今朝のニュース見たか? なんだかこの世界は『エロワールド』になるらしいんじゃ! 素晴らしいのう!」


「陣さん。ちゃんとニュース見た?」


「ほへ? 違うの?」


「ニュースの見かたが適当なのにもほどがあるわよ! いい? エロワールドじゃなくてゼロワールド! この世界を、人類を、滅ぼそうとしてる連中が現れたのよ!」


「なっ、なにぃー?! ゼロワールドじゃっとお!」


「ざーとらしいわね」


「だってそんな奴ら、ワシらが倒しちゃえばいいじゃろ? 命の炎でボウッとな。今までのお仕事とさほど変わらんじゃろ」


「それが、そんな簡単にはいかないんだってば。陣さん……」


 イバラはゼロワールドの教祖、残酷神『牙皇子きばおうじ狂魔きょうま』のこと、腐神ふしんの存在、そして、昨晩の戦いのことを陣平に話した。


「な、なんと! これからはエッチな世界を死ぬまで堪能できると思っていたのに! まさか腐神とはな……」


 陣平がいつになくシリアスな表情になり、なにかを考え始めた。


「陣さん! まさか腐神のことまで知ってたの?」


「え? 知らーんっ!」


「知ってるみたいな顔で知ってるみたいに言わないでよっ! まぎらわしいんだからっ!」


「だが、ワシのエッチな世界とエッチなギャルたちを殺そうとするやつらは絶対に許さん!」


「まっ、陣さんにはそーゆーことにしとけば、分かりやすいかあ」


 パシッ!


 陣平が拳と掌を力強く合わせた!


「ゼロワールド! 絶対に『エロワールド』に改めさせてやるわ!」


「もう、変態ジジイ……」


 あきれるイバラの横で、藤花はそんな陣平を真剣な表情で見つめていた。


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