第30話 藤花の力

「クロちゃんよぉ! ワシは元々髪の毛まっ黒だったんじゃいっ!」


「えっ!? そうだったんですか?」


「そうなんじゃ」


 甲賀陣平がゆっくり降りてくる。


 スタッ


「あの『パンティーキティラー』とかいう力をもらったら、白髪になってしまったんじゃ。なげかわしい」


「陣さん、アンティキティラだから」


 そんな甲賀陣平だったが、やはり藤花を見て一瞬で悟った。


「ワシがお見受けするに、クロちゃんは余命がだいぶ短そうじゃな」


「3ヶ月なんです。って、なんでブラック・ナイチンゲールのみんなは、私が不治の病だとか余命が短いとかズバズバ当てるの?」


「それねー。この力をもらってしばらくすると分かるんだよね。仲間を見つけやすくする機能なのかもね」


「そっかぁ、なるほど!」


「あとワシにはもうひとつ、分かることがあるぞ!」


 陣平があごひげを触りながらニヤリと微笑んだ。


「あっ! 陣さん、また藤花になんかエロいことを言おうとしてるっ!」


「違うわいっ! クロちゃんよ。お前さん、スゴい力を秘めとるよ」


「えっ!? 本当ですかっ!?」


「おっぱい触らしてもらったから言ってるわけじゃないぞ。本当にそうだから言ってるんじゃ!」


「まっ、伊達に『武道の達人』じゃないってわけね! 実力を見抜く力は人一倍だもんね!」


「武道の達人!? エロジ……陣平さんがっ!?」

(全くそんなふうに見えなかった……)


「そうじゃ。空手、柔道、合気道。忍術なんかもかじったのう。手裏剣シュシュシュってなっ!」


「スゴい! 私なんて勉強ばっかで、まるで運動してこなかったからうらやましいです」


「私はその逆。勉強なんてろくにしてこなかったな。踊ったり歌ったりが好きで。そればっか」


「イバラちゃんはカリスマだし♡ アイドルオーラもめちゃくちゃ出てるしっ!」


「本当? ありがとう。頂点目指してたんだけど。ニイナ……」


 イバラが泣きそうになった。


「あーと、えーと、あっ! 陣平さんのブラック・セラフィムって、私たちのとはデザインが少し違うんですね! ミニスカートじゃなくてよかったですね!」


「ワシは全然ミニスカートでもよかったがよ! 興奮しちゃうわい♡」


「あはは、陣平さんたらっ!」

(エロジジイ飛び越えて、変態ジジイじゃないっ!)


「クロちゃんよ。命の炎、全解放してみい」


「全解放……?」


「そうじゃ。で、まずは髪に集中するんじゃ。さすれば髪色の能力のイメージが浮かんでくる」


「わ、分かりました。やってみます」


「藤花の力、なんだろうね」


「非常に楽しみじゃ!」




 藤花は目をつむり集中した。


「てええぇぇいッッッ!!!」



「掛け声かわいいのう♡」










 ボボォンッ!!


 ボオワアアァァッッ!


 シュボボボオオオツツツ!!







「くっ! やっぱ大きいっ!」


「クロちゃんっ!! そのまま髪に意識を集中じゃっ!!」


「はいっっ!!」



 ゴオウッ!!


(ふぎゃー! ど、どう? 髪に集中してるけどっ……!)


 ボォウッ!!


(特になにもイメージが湧いてこないよ! ダメなのっ!?)



 と、思った瞬間っ!!!





 ボアアァァアアアッ!!




「キタッ! 感じ取れましたー!」



「よしっ! じゃあ1回、炎を消すんじゃあ!」


「はいっ!」



 シュウウウウウッッッ!



「藤花っ! なんだったの?」


「今見せるね。いけるはずっ! はあっ!!」








「こ、これは!? たまげたわいっ! わはははっ!」


「ちょっとぉ! それマジー?」






 ふわ、ふわ、ふわり。



 そう、陣平と同じく、藤花は宙に浮かんでいたのである。


「髪色 違うのにダダかぶりじゃわい!どういうことじゃあ?」


「高いっ高いっ! 気持ちいい」


 藤花は2人の前で、陣平と同じ能力『飛翔』を見事に使いこなしてみせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る