第26話 白雪
「藤花、離して。またいつニイナや他のアイドルを襲うか分からない。私が生きてるうちに殺すって決めたのっ!」
「もう、この人は、誰も襲わないよ。きっと……」
「そんな保証はどこにもない。だから離して」
「イバラちゃんっ!!」
藤花の悲痛な叫びにも、ブラック・ナイチンゲール天使イバラの眼光は、さらに殺意の乗った鋭さが増すのみ。
「偽善者ぶるのはよして。私はあのカエル、殺すの手伝うよ」
「イバラちゃん! だけど……」
「選ばれた人間はちゃんと仕事しなきゃ。義務なんだってば」
「義務っ?」
「明日からはゼロワールドとの戦いが始まるでしょ? その前にこの男だけは確実に葬りたいのッ!」
ボンッ!
ボッシュウゥウゥゥッ!!
バチバチッ! バシュンッッ!
青と紫の炎がぶつかり、弾ける。
「お願いだから! 私の大切なアイドル達を守らせて!!」
その叫びに押しだされるように、イバラの頬をつたう大粒の涙。
「イバラちゃん……」
それをまのあたりにした藤花の右手からは、炎も握力も消え去った。イバラを止めることはできない。無意識に体がそう反応した。
「ありがとう。分かってくれて」
ボボボボッ!!
ボンッッ! ボウッ!!
「あっ、待っ……!」
イバラの命の炎の勢いは、藤花の葛藤をも消しとばし、燃えさかったっ!
「クソストーカー!! 生まれ変わっても、もう2度とアイドルに近づくなぁ!!」
ドシュウウウウッ!!
ボォオォオオッ!!
パキパキパキパキィッ!!
土下座のまま、最狂ストーカーカマキリが、一気に凍りついていく。
バキバキッ!
バキキキッ……!!
「これで、終わりだあッ!!」
ガッシャァ──────ンッ!!
「はぁっ、はあっ、はあっ!」
シュウウウウウ……
カマキリは跡形もなく砕けて蒸発。この世から完全に消え去った。
イバラは人間相手の最後の仕事をこうして完了した。アイドルの悲惨な姿はもう見たくない。安心して活動してほしい。その願いをこめて。
「これで、心置きなくゼロワールドと向きあえる!」
「イバラちゃん……」
「ごめんね。さっきは偽善者とか言っちゃって」
「わ、私は、なにも覚悟なんてできていなかった。このままじゃゼロワールドに、カエル野郎に、勝てないね」
「カエルが泣いて謝ったら許しちゃう? そのときは私が代わりにやってあげるから。安心して」
「イバラちゃん……」
「でも、
「うん……」
(カエル野郎をぶっ殺すって言いまくってたのに。アンティキティラの力をもらった今、さっきまでの自分が逆に怖く感じてる……)
「ニイナ〜! もう大丈夫だよっ!」
イバラはトイレに隠れているニイナに笑顔で声をかけた。
ガチャ
「イバラっ! 終わったんだね! ありがと…………ううっっ!?」
ゴトンッ……!!
イバラ、藤花、2人とも背筋が凍った。心拍数が一気に跳ね上がった!
ニイナの頭部が、床に転げ落ちた。
「な、なんなのよ!!」
「なになに!? なにー!?」
『あはっ、あはっ、あはっ!』
腐臭と共にする、不気味な笑い声。
「なにかいるっ!! 気をつけてッ!! 藤花っ!!」
「どこっ!? どこっ!? どこっ!?」
『あなたを探していたんですよ。金髪さん。昼間はフロッグマン様がお世話になりました』
「誰っ!? 出てきなさいよッ!!」
しゅゅううう………
水蒸気のような煙とともに、2人の前に現れたのは真っ白い顔をした女。
腰までの長さの髪はそれに反して
「これがっ!? 腐神!?」
「えっ!? 腐神っ!? もう!?」
『その通り。あなた察しがいいじゃない。私は『腐神
「あんた元々は人間なんだよね? 契約して腐った神に体をあげちゃったんだ? ありえなくない?」
『そう? WIN WINの関係よ』
「で? ニイナを殺して、他になんの用があるっていうの?」
『あなたを殺しに来たの。それしかないわよねぇ。あはっ!』
「そうくるだろうと思ったっ……!」
イバラは怒りと恐怖の両方に体を支配されつつあった。『明確な殺意』をもった腐った神との戦いが始まる!
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