第27話 凍結戦

「ニイナ、ごめんね。まさか、こんなとこにまで腐神が……!」


 イバラは涙をこらえ、生き絶えたニイナに謝罪した。


『あなた、フロッグマン様をふっ飛ばしたらしいねぇ。強いにもほどがあるんじゃない? 本当に人間?』


「……あたりまえでしょ!」


『牙皇子様の計画の邪魔者、消えてもらうよ。あはっ!』


 イバラの悲しみが、一気に怒りに転ずる。


「こっちも狂った化け物は消すつもりだから! まずは1人目、ここで処刑させてもらう!」


『神に対する口の聞き方がなってないねぇ。処刑されるのは私じゃない。クズの人間の方だからねぇ』


 イバラが一瞬の隙をついて、冷たく揺れる白雪に殴りかかったッ!


「腐ってるから臭いのよぉっ!!」


 ガァァアンッ!!


 それをよける事なく、白雪は顔面で受け止めた。冷たい無表情で。


『それが全力? なら、あなたの死はすぐにやってくるよ』


「くっ……!」

(狭いっ! 家の中ここじゃ光速打撃ビームストライクが使えないっ! 距離をとりたいっ!)


 パキパキ……!


 白雪の顔面にめり込む、イバラの拳が勢いよく凍りはじめた!!


「うわっ!!」


 ボウォッウッ!


 慌ててみことの炎をまとわせ、拳を顔面からはずす!



『なに今の? 私の凍結術を一瞬で無にした。不思議な炎だねぇ』


「あぶなーっ!」

(この腐神も凍結系! 『白雪』って、なるほどね!)


『そんなの見たらかぜんる気が出てきたねぇぇえっ! ひゃぁあああッ!』


 白雪の全身から液体窒素をしのぐ、冷気の爆風が噴き出すっ!



 ぶわあああぁぁぁッ!!!!!



「藤花っ! 早くみことの炎で全身を覆ってっ────!!」


「分かったーっ!!」




 ボンッッ!! ボオオオウッ!!



 シュウウウウウッ!!


 命の炎が強烈な冷気を弾くっ!


『貴様らぁっ! なんなんだっ!? そのふざけた炎はぁっ!?』



 ガシャンッ!

 

 ガシャアンッ!



 ニイナの頭と胴体が凍って砕けた。



「はあっ! はあっ!」

(私のこの紫のみことの炎は、一体なんの役に立てるのっ?)


「今度はこっちの番。この命の炎には腐神様も驚いてたみたいじゃんっ!」


 ボオオオッ!! ボオゥッ!


『青い冷気をまとった炎? しゃらくさい。神の冷気のレベルには到底およばないと言うことを知るがいいわ!』


「あっそう、楽しみだなあ……!」


 シュボオオオオオッ!!


 イバラが拳の炎の勢いを上げたっ!


「イバラちゃんっ!」

(何かを狙ってるっ!?)


「くらえ─────っ!!」


 ボボォンッ!! ブオオオッ!!


 イバラが再び殴りかかった!


生温なまぬるいにもほどがあるっ! その程度の冷気、一気に凍りつかせてやるっ! はぁあああっ!!』


 白雪が攻撃態勢をとった。その瞬間、イバラは拳を強く握りなおす!


 ググッ!! ドウンッ!!


 ゴオオオオオオオッ!!


「摂氏100万度っ! 灼熱拳煌しゃくねつけんこう──────っ!!」


『ぎっ? ひゃ、100万度ぉっ!?』


「消っえろ────っ!!」


 ボオオオオオオオオッ!!


『冷気の炎じゃないっ!? あ、熱い───っ!!」





 ズゴオオオオオオオッ!


 ジュウウウウウッ!!


 ボボォンッ!!












「く、くたばりなさいよっ……!!」


 イバラの拳は腐神を貫いた。


 ボタボタボタ……!


 白雪の体が溶けだした。


『あがぁっ! あががっ! その炎、冷炎れいえんなんじゃ……?』


 イバラは貫通した未だ燃える拳を、醜く溶けた腐神の腹から引き抜いた。


 ジュボオオォォ!


「私の命の炎は『超凍結』から『爆裂燃焼』まで、一瞬で切り替え自由なの。残念でした」


『だ、騙され……た……』


 ブシュュウウウウッッッッ……


 腐神『白雪』が生き絶え、煙のように蒸発していく。2人は言葉なく、その光景をしばらく眺めた。


 ガクンッ


 完全な腐神の消滅を確認したイバラは、崩れるように床に倒れこんだ。


「助かったぁ! 死ぬかと思ったしっ! はあっ、はあっ!」


「まさか、いきなり腐神が襲ってくるなんてっ……」


 藤花も壁にもたれかかりながら、ペタンと座り込んだ。


「相手が雪女で助かっちゃった。こっちの武器は基本、炎だからね」


「ラッキーだったよね」


「私の炎が冷気をまとわせられるタイプでよかった。あの腐神、完全に油断してたし」


「腐神の実力って、かなり……」


「冷気のレベルはあっちが上。防御にそれを回されてたら、灼熱拳煌でも届いていなかったよ。腐神、想像以上の化けもの確定よ……!」


 憔悴の2人は、新たな腐神の来襲に備え、今夜は交代で寝ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る