第19話 腐神

『フロッグマンが次に現れるのは、あなたの街かも知れませんね……』


『ゲロゲロッ! ゲーロッ!』


『それでは、『ゼロワールド計画』のスタートッ!』



 プツッ!



 ピ────────────ッ





「まさかこんな事態になるとは。フロッグマンのニュースを見たときに、嫌な予感はしていましたが……」


「アンティキティラ! あんなの私がぶっ飛ばすから! 大丈夫よ!」


「イバラさんに激しく同意」


「天使さん、美咲、2人とも勝手な行動は控えてくださいよ」


「私たちにはアンティキティラからもらった力があるんだよ。そう簡単にやられるとは思わないけど?」


「激しく、うんうん!」


 アンティキティラが少しぬるくなったビールをコップに注ぐ。


「さっき、牙皇子が気になることを言っていたんですよ……」


「気になる?」


「はい」


「神が、どうとか?」


「そうです。牙皇子は『腐神ふしん』と言った」


「『ふしん』って、神なの?」


「腐った神と書いて『腐神』」


「腐った神ーっ?」


「神は神でも最下層に位置する人間界と最も近い存在。ゆえに数百年、数千年に1度、時に人間から、時に腐神からコンタクトを取る者が現れると言われているんですよ」


「そんな漫画みたいなことあるわけ?」


「人類の歴史上に起きた大きな戦争には裏で『腐神』が関わっていたのではないかと言われているんです」


「戦争なんて、狂ってるとしか言いようがないけど」


「激しく同意……」


「人類史における『空白の10万年』や『モヘンジョダロ遺跡』に見られる核爆発のような痕跡。それにもやはり『腐神』が関係していたのではないかと言われているんです」


「10万年? モヘ? 核爆発? 訳わかんないんだけど……」


「今回の『ゼロワールド』がしようとしているような人類滅亡が、過去に何回も繰りかえし起きていた可能性がある、ということですよ、天使さん」


 それまで黙って話を聞いていた藤花が口を開いた。


「それが空白の10万年の真実、ということなんですか?」


「そのぐらい『腐神』とは強力な存在なんですよ」


「ふーん。そっかぁ、なるほど」


「激しく理解した」


 イバラと美咲はため息混じりにうなずいた。


「数百年に1体あらわれるかどうかの腐神が、今『5体』この地上に存在しているという事が異常事態なんです。残酷神と契約したという牙皇子の凶悪さがハッキリと分かりますね」


風原かざはらさんっ! 私にアンティキティラの力を! お願いします!」


 藤花が力強くアンティキティラの目を見て言った。


「はい。わたくし風原かざはら正男まさおと申します」


「ぷぷー! アンティキティラって『正男さん』だったのー? ふ、普通じゃん!」


「普通とか言わないで下さい。天使イバラも本名ではないでしょう?」


「私は天使イバラだもん。うふん♡」


「それより黒宮さん。今、力を下さいと。大丈夫そうですか?」


「覚悟ができました。杏子ちゃんをそんなくだらないことの『見せしめ』の様に殺されて。ぜったいに許せない。カエル野郎も牙皇子も!」


「決心、できたんですね」


「杏子ちゃんの為にもぜったいにゼロワールドを倒す! そしたら私はいつ死んだって構わないっ!」


「藤花! かっこよすぎーっ!」


「激しく同意っ!!」


「分かりました。では右手をっ!」


 ついにアンティキティラの力が、黒宮藤花に授けられるっ!

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