第18話 ゼロワールド

 夜のニュース番組がとつぜん途切れ、数秒後、暗い画面から音声のみが聞こえはじめた。


『ゲロゲロ、ゲロゲロ!!』


「これが激しく藤花さんの言っていた、カエル野郎の鳴き声?」


「噂のフロッグマンですね。最近ここV県に出没するという。しかし、この番組はTKのテレビ局。そこをジャックしているということなのか?」



『ガガガッ……ビーーーーーッ……あっ……あっんんっ!』



「なにっ? カエル以外に誰かいるみたいっ!」


 イバラがそう言うのと同時に、パッと画面が明るくなった。


 そこに映しだされたのはフロッグマン。それと、今まで番組の司会者が座っていた席にすわる謎の人物。



『えーーっ……』



 声はボイスチェンジャーで変えている。


 黒マントに髑髏どくろの仮面。長くも短くもない髪は、にぶい灰色に輝いている。


『みなさん、こんばんは。この番組は現在、我々『ゼロワールド』がジャックさせてもらっています』



「ゼロワールド? なによそれ!」


「カエル野郎の親分!?」


『ゲロゲロッ!』


『どうでしょう? みなさん、最近ある地域で、この子が活躍してくれているのをご存知でしょうか?』


『ゲロゲロッ♪』


「あのカエル喜んでない? ちゃんと感情があるんだ……」


「カエル野郎を『この子』とか……あの髑髏どくろ仮面、むかつくっ!」


『フロッグマンなんて名前まで付けてもらって、ありがとうございます』


「礼義正しいのが逆に激しく不気味」


『我々『ゼロワールド』は、そうですね、世間で言うところのカルト……カルト教団にあたります』


「言われなくても、という気はしますが、なるほどですね」


『カルト教団ゼロワールド。私は教祖の『きば皇子おうじきょう』と申します』


「きば……おうじ?」


『牙の皇子おうじ……そして、狂った魔王で牙皇子狂魔だっ!! 覚えておけッ!』


「この人、急にカルトっぽくなったじゃん! こわっ!」


『我々は今のところ総勢5人しかいないのだ。まぁ、それでも十分目的は達成できるだろう』


「目的……気になりますねぇ」


 牙皇子が少しズレた仮面を直してから語り出した。


『我々 ゼロワールドの目的は世界の再構築。貴様ら人間をこの世から消し去る事だ……』


「なに言ってんの? この人、カルトじゃなくてバカなんじゃない?」


天使あまつかさん。そうとは言い切れませんよ。牙皇子は『我々は5人』と言った。フロッグマン1匹とってみてもかなりの化けものだ。あんなのが、まだ他に3体はいるということです」


「それはそうと、あんな化け物をどこから連れてきたのかが激しく謎すぎ」


『テレビの前の皆さん。私を人間だと勘違いしていませんか?』





「ゼロワールド……牙皇子!」


 藤花は拳を強く握った。







『私は『残酷ざんこくしんネル・フィード』と契約を結んだ! 私の肉体は残酷神と一体化し、もはや神となったのだ!!』


「残酷神……?」


『ここにいるフロッグマンも腐神ふしんと契約を交わしたれっきとした神だ! お前達、人間になす術はない! この突然訪れた終末に嘆き、怯え、苦しみ、滅びゆくがいいっ!!』


「こいつらのせいで、私の大切な杏子ちゃんがっ!」


 藤花は、怒りによる震えを抑える事ができないでいた。

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