第17話 鳴き声
「『へ?』じゃなくてさ。聞いてんだけど。人殺せるの? って」
かわいらしい
「ほらほら、どうなのよ。殺せるの? 殺せないの? どっち?」
美咲はさらに藤花を
藤花は「はあっ」と息を吐き、問いに答えた。
「さっき私が『へっ?』って言ったのはさ。美咲ちゃんの質問に驚いたからじゃないんだよ」
「じゃ、じゃあ、なによ!?」
「あまりにバカな質問だから、呆れただけ」
「なっ? バカー!?」
「私は人は殺さない。殺すのはあのカエル野郎だけ。その為に力をもらいに来たんだよ」
「どうするのー? 美咲ー?」
唇を噛みしめる美咲にイバラが問いかけた。藤花は意味が分からない。
「イバラちゃん『どうする?』ってどういう意味?」
「アンティキティラの力をあげる人はね、美咲が決めてるの」
「えっ? そうなのー!?」
(バカな質問とか、呆れたとか言っちゃったぁ。怒らせちゃったかな……)
美咲は強いまなざしでなにかを見さだめるように、藤花の頭からつま先まで見回した。そして、軽く微笑んだ。
「あのですね。さっきの質問に『殺す』や『殺せない』って言いきる人には力をあげない方針なんです」
「そ、そうだったの?」
(えーと、わ、私はどうなるの?)
「藤花さんは人は殺さないけど、カエル野郎は殺すって言いましたね?」
「うん。カエル野郎は私が仕とめたいよ。杏子ちゃんの仇だからね」
「分かりました。後で私の話も聞いてもらうけど、それでもいいですか?」
「もちろんっ!」
それを聞いた美咲は、父アンティキティラに告げた。
「お父さん。藤花さんに力をあげて」
「いいんだね?」
「うん。激しく藤花さんは大丈夫」
「黒宮さん。娘の美咲から許可が出たので、力を与えようと思います」
「お願いしますっ!」
(ずいぶんと美咲ちゃんの言うことを聞くお父さん。娘がかわいくて仕方がないんだね)
アンティキティラは、藤花の手を握ろうと手を伸ばした。
「ひ、ひゃあっ!!」
藤花は反射的に手を引っ込めてしまった。
「んっ? どうしました?」
体に染みついている
『20歳まで異性に触れてはならない』
物心ついてから今までずっとだ。
無理もない。
「どうしちゃったの? 藤花」
「藤花さん?」
「何か理由がありそうですね。話してくれますか?」
藤花は自分でも驚くほど震えていた。
「わ、私は『永遠の方舟』の信者です。だから20歳まで異性に触れても、触れられてもいけないんです……」
「宗教でしたか。なるほど」
「マジか。まいったねー」
「藤花さん! カエル野郎をやっつけるにはアンティキティラの力が絶対に必要でしょ?」
「そうなんだけど……」
(分かってる! 分かってるのにっ!)
プツッ……!
テレビ画面が急に暗くなり、音声も消えた。
「激しく停電? 違うよね?」
「テレビだけ消えるってさ、おかしくない?」
「今やってたのは、報道天国ですよね?」
みんなが不思議がっていると、真っ暗なテレビ画面から、音声のみが聞こえてきた。
『ゲロ、ゲロゲロ!』
「えっ!? 今のはっ!」
「カエル野郎の鳴き声っ!?」
その場の4人はテレビになにが映るのか、恐怖に似たなにかに惹きつけられていた。
『ゲロゲロ! ゲロゲーロ!』
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