第15話 エイリアン・アブダクション
『
『場ちがいな人工物』
『オーパーツ』とは、それらが作られた時代の人間が持っていた技術や知識に照らし合わすと存在し得ない人工物のことである。
「アンティキティラ島の機械は確か、古代ギリシア時代の遺物で『天体運行』を計算する『歯車式の機械』だと以前に読んだことがありますけど」
「君は見るからに頭よさそうだけど、博識なんですね」
「オーパーツ。わりと好きなんです」
「他にはなにが好きなんですか?」
「水晶
「本当に好きなんですね」
「でも、その腕のタトゥーがオーパーツとはどういう意味なんですか?」
アンティキティラが神妙な面持ちになった。
「僕は長年、人類史や考古学の研究をしているんです」
「長年、研究?」
「もちろんオーパーツもです」
「失礼ですが、アンティキティラさんはおいくつなんですか?」
「僕は今年で50歳になります」
「えっ? 20代かと思ってました!」
「あまり紫外線に当たってこなかったからでしょうか。研究室にこもることも多いですし」
「アンティキティラ島の機械と歯車のタトゥーが、どう繋がるんですか?」
「
「わ、私をバカにしないでよー!」
腹を立てるイバラをスルーして、アンティキティラは一気に考古学者モードになる。
「アンティキティラ島の機械は、天体運行を計測する機械なんかじゃないんですよ。そう説明するのがもっともらしいだけで」
「えっ!?」
「あれは『
「超地球人って、超サイヤ人みたい」
「君なら分かりますよね? 人知を超えた存在が古代にはいたはずだと」
「確かに。あの有名なピラミッドですらどのように作られたのか未だにはっきりと分かっていないし、巨人の存在も示唆されていますよね」
「そうなんです。現代の重機を持ってしても作るのが困難な古代の建造物が世界中に溢れている。それが謎でした」
「はい」
「ここからは信じてもらえないかもしれませんが、話だけはしておきます」
「は、はい」
「私はエイリアン・アブダクションの経験者です」
「エイリアン・アブダクション!?」
エイリアン・アブダクションとは、俗にいう宇宙人による誘拐。中には、UFO内で体になにかを埋め込まれたり、妊娠させられたなんて話もあるのだ。
「超地球人とか、エイリアンまで出てきちゃって、私はこの辺で眠くなっちゃったよぉ。また眠い……」
「イバラちゃん、なんでっ? これ、すっごい話だよ!?」
「藤花、目パキってるよ。あはは!」
藤花はくるりとイバラからアンティキティラに向きを変えた。
「で? 続きをお願いしますっ!」
「その謎をすべて教えてくれたのが、私をアブダクトした『アンティキティラ』という種族のエイリアンだったのです」
「ここでアンティキティラ!」
「古代の巨大建造物は、我々の力を分け与えた人類に作らせ、力を誇示させた。そして、未熟な人類に神の存在を根付かせたのだと」
「そ、そうだったんだぁ♡」
(やっぱり人の力を超えた存在が古代にはいたんだっ! も、萌える♡)
「藤花、目がハートになってるし」
「で!? エイリアンってどんな感じだったんですかっ?」
「ほぼ我々人類と見分けはつかなかった。ただ目は赤く、手には指ではなく無数の触手がユラユラ伸び縮みしていたように見えましたね」
「うえぇぇっ! 触手っ?」
「なぜ私が選ばれたのか、それは分からない。ただ『君に今必要な力を与える』と言われた。それだけは覚えているんです」
「それが、その歯車のタトゥーなんですね」
「でもさー、歯車とか古臭くない? なんかの光でピカッと超地球人を作れないわけ? 宇宙人ならさー」
「イバラちゃん。歯車って実はすごい神秘的なものなんだよ。宇宙の真理が詰まっているといっても過言じゃないよ」
「黒宮さんの言う通り。この世には宇宙のエネルギーを持ってしても動かせない装置があるのをご存知ですか?」
「えっ? そんなのあるの?」
きょとんのイバラの隣で、藤花は思い出した。
「ひょっとして、100枚の歯車ですか? 10の100乗を可視化したという。仮に100枚目の歯車を無理やり力で回したとしたら、1枚目の歯車は光を遥かに越えるスピード回るとか」
「黒宮さん、さすがです。ゆえに全宇宙の力を待ってしても無理やり100枚目の歯車を動かすことは不可能、というお話です」
「地球の歴史と同じ46億年かかっても、18番目の歯車が半回転くらいでしたね。やっぱり歯車には未知の力が秘められているって思います」
話が通じ合うアンティキティラと藤花。イバラはちんぷんかんで少し悔しかった。
「朝、目が覚めたら三角筋から手首にかけて、この歯車のタトゥーですからね。さすがに驚きました」
「けっこうイカついですもんね」
「でも『力を与える』と言われはしたものの、なにをどうすればいいのか、まったく分からなかったんです」
「不親切なエイリアンですね」
「それ私も思ったーっ!」
「けっきょく、なにも分からないまま3ヶ月が過ぎてしまったんです」
「3ヶ月ですか」
アンティキティラは、悲しい顔で話を続けた。
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