「鼻毛」と「秘密」

 誰にでも『秘密』にしておきたいことはあるのではないだろうか?


 私が人に話せないこと……。


 子供達がまだ幼った頃。未就学児童が集まる教室に通っていたことがあって、先生と保護者(全員が母親)の謝恩会があり、その食事での席の話。


 私は、異常に涙もろい性格なのだが、お世話になった先生に一言みたいな場面があって、どんな風にお礼の言葉を述べたのかは忘れてしまったけれど、当然、私はグッとくるものがあって、涙を流してしまった。


 言っておきますが、女を前面に出すような泣き方はしていません。


 長男のことを考えて0歳の次男を抱いて通い、歌を歌ったり、紙芝居を読んでもらったり、運動会やクリスマス会などの行事もあり、いわゆるママ友が出来た場所でもあったから、私なりに込み上げる思いがあったのだ。


 すると、斜め向かいに座っていた人が、


「すぐ泣く人って、早死にするんだって」――と、あっけらかんと、しかも大きい声で言ったのだ。


――早死に?


 こちらは真面目だったけど(その人も真面目だったと思うが……)、揶揄されたようですごく恥ずかしくなった。


――はぁ?


 内心そう思ったが、ズバズバものを言う性格の人だと知っていたので、最後まで楽しく過ごす事が出来た。


 それから10年は経った――。


 感動ドラマ、動物愛、子供が部活の大会で頑張っている姿はてき面に涙を流してしまうけれど、涙が溢れそうになる瞬間、最近は特に涙を流さないようにコントロールする。


 だって、まだ死ねないから。


 子供達が社会に出るまでは頑張らなくちゃいけないから、死んではいけないのだ。


 ググったことはないけれど、科学的根拠があって本当だったら怖いから調べていません。


 でも絶対、人には言えない……。泣くのを我慢しているなんて。

 早死にが怖いからなんて言えない。

 あの時、実際は馬鹿にされただけだったのかもしれないけど、「すぐ泣くよね」と言われないように私なりに鍛えているのだ。

 恥ずかしいから絶対に秘密にしておく。

 人間の器がお猪口みたいな大きさの私が、自分の性格で気になっていたことだから、その人の言い方はさておき、改善しなくてはならない部分だと本気で思っているのだ。

 お喋り女(つい本音)が言った『早死に説』が、嘘ならいいのにと心のどこかで思ったりもする。


 でも、もし、私のように涙もろい性格の人がいたら、こう言ってあげたい。

「涙もろいのは、けして悪いことではないよ」――と。

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