第38話
盗賊一味の頭(傷の大男)は苛立(いらだ)っていた。
召集をかけたにも関わらず3日目夜を迎えて
部下の1人も隠れ家(アジト)に来ないからだ。
側にいる蛇に似た女に確認しても連絡は間違いなくしたとのこと。
「一体どうしたことだ。何故誰も集まらない。これでは襲撃計画が進められないではないか。」と盗賊一味の頭(傷の大男)は言ったがその通りでもあった。
いかに自分が屈強でも数百人はいる村を襲い
食料・金品の強奪を行い隠れ家(アジト)に運ぶなど無理なことだからだ。
苛立っている盗賊一味の頭(傷の大男)は念の為に蛇に似た女に再度確認をした。
「おい!本当に召集をかけたんだろうな!
誰も来ないだろう!」と盗賊一味の頭(傷の大男)が言うと蛇に似た女は
「間違いなく召集を今日の夜までに集まるように言いましたよ。何故集まらないのか私が知りたいぐらいです。」と多少不貞腐(ふてくさ)れた態度で返答した。
「なら何故誰も集まらない!」と
盗賊一味の頭(傷の大男)が考えを巡らせていると何か思いついたのか蛇に似た女に
「お前が召集をかけた後、村の様子を見てきて何も変わったことは無かったとのことだが、何か些細な出来事でもなかったか?」
と言うと少し考えを巡らせた蛇に似た女は
「そういえば数人の村の男達が私に声をかけて来たんですけど。」と答えた。
「どんなことを聞かれたんだ。」
「いえ、ごく当たり前のことで夕暮れ近く今から森に入って隣り村まで行くなら夜遅くになるから女の1人歩きは物騒だろうと。
まあお人好しの村人が言いそうなことですよ。」と蛇に似た女は言った。
「数人の村の男達」と盗賊一味の頭(傷の大男)は聞き返し
「どんな状況で声をかけられた。」と更に聞いた。
蛇に似た女は「どんな状況って!どういうことで!」
「声をかけられる前後で何かなかったか。」
「声をかけられた前後って……。
そういえば数人の村の男達は少しの間、
私をつけて来ていたように思いますね。
まあ私に声をかけづらいからつけて来ていたのかと思ったんですが。」と蛇に似た女が言うと盗賊一味の頭(傷の大男)もそれは理解できた。
もし自分が同じ立場なら蛇に似た女には声がかけられないだろう。
前にも記載したが傷の大男は蛇に似た女が苦手なのだ。
蛇に似た女の言う通りお人好しの村人だからこそ声をかけたのだ。
だがもしそれがお人好しの行動ではなく
蛇に似た女の後を追ってこの隠れ家(アジト)を
つきとめる為の行動だとすれば。
そこに違和感を覚えた盗賊一味の頭(傷の大男)は椅子がわりに座っていた丸太を切断した木から立ち上がり
「お前!つけられそうになったんじゃないのか!!」と蛇に似た女に言うと
蛇に似た女は「そんな馬鹿な!それはありえないことですよ。
それじゃまるで私たちが潜伏している隠れ家(アジト)をつきとめようとしていたことになるでしょう。何のために。仮につきとめても部下が十数人はいる隠れ家(アジト)を平和ボケしている村人にどうしようがあります。
仮に離れたところにいる役人達にでも報告しても時間がかかりすぎて村のこともこの隠れ家(アジト)のことも手遅れですよ。」と答えた。
蛇に似た女の言うことはもっともだが
盗賊一味の頭(傷の大男)は
「俺が最も言いたいことは俺の計画がバレているんじゃないかと言うことだ。そう考え
部下達が何らかの理由で集まらない事の説明はつく。だがこの計画はほんの数日前に決定し情報が漏れてから対応したにしても時間が
なさすぎる。」
「そうですよ!考えすぎです!」と蛇に似た女は言った。
「だが……。」と傷の大男が言い淀んでいると
「あなたの部下達は来ませんよ!」と
とても美しく響き渡る声が聞こえた。
「誰だ!!!」と傷の大男と蛇に似た女は
同時に問いかけた。
「お前は」と
蛇に似た女は現れた人物を見て仰天した。
そこに現れたのは女だった。
第38話序章 完
※いよいよ次回は最終話です。
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