第37話

女が村の出口の門の外に出ると

そこには以前少女を襲おうとした狼の夫婦がいた。

狼の雄が女に近寄ろうとすると女性は警戒し

前に出ようとした。

それを女は手で制止し狼の雄の思うように行動させた。

すると狼の雄は女のすぐ前まで来て寝転んで

仰向けになった。

ついで狼の雌もほぼ隣の同じ位置に来て同様に寝転んだ。

それを見て女性は驚きを隠せなかったが

女には理解できた。

狼に限らずおよそ生き物が寝転んでお腹を見せる行為は相手に敵意がないことを示す又は服従する、或いは相手をまるで問題視していないかのどちらかである。

後者は自然界においてこの行為を行うのは

百獣の王ライオンのみであるが狼の行為は

前者で女への敵意がないことと服従の行動だった。

女は歩み出し狼の夫婦の元へ行き仰向けになって剥き出しのお腹を丁寧にさすってあげた。

狼の夫婦は嬉しそうにしていたが女を見て

何かを言いたそうにしていた。

女は「そうお前たちが案内してくれるのね。」と狼たちの心意を理解すると

名残惜しそうにしている狼たちから離れて

女性の元へ戻った。

女は女性に預けて肩に留まっていた鷹の頭を撫でて言った。

「この子を放って例の件をお知らせください。私はあの狼の夫婦と共に盗賊一味の

隠れ家(アジト)に向かい一連の騒動の決着をつけます。もし私が戻らなければ村の人たちと共に例の件で盗賊一味の隠れ家(アジト)を……。」と女性に指示を与えた。

「狼の雌を残して行きます。

狼の案内に従ってください。」と

女は再び狼たちの元に行き仰向けに

なったままの狼の雌のお腹を優しく撫でながら「あなたのお腹には赤ちゃんがいます。

何かあればあなたの旦那様に申し訳ないでしょう。残ってもしもの時皆を案内する手助けをして頂戴。お願いね。」と狼の雌に言い聞かせた。

その状況を見ていた女性は危険な行動の為、

何とか女を説得しようと思ったが、

村人の犠牲者を出さないためとの女の心意を理解しまた自分を救う時も散々無理をした

女の行動を垣間見ると説得は難しいと考え渋々同意した。

これで全てのピースが埋まり女は狼の雄と共に盗賊一味の隠れ家(アジト)に向かう準備が整った。

一連の件、全てに決着がつく少し前のことである。


第37話序章 完


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