第28話
祖母は居間に女と女性と少女(孫娘)を
招き入れるとお互いに座り改めて少女と共に挨拶をした。
「この度は孫娘をお助けくださり
本当にありがとうございました。
私は微力ながらこの村の村長を務めているものです。」と祖母(村長)は先程にもまして丁寧な挨拶をしながら少女ともども頭を下げた。
少女は何かに気づき女と女性と祖母に挨拶をすると居間から出ていった。
僅かな時間が過ぎて再び少女が来客のために
お茶を運んできて女と女性と祖母の前に
「失礼します。」と言いながら置き自らも
お茶を持ちながら女の右隣りに座った。
居心地のよい居間だった。
女が眠りについていた社ほどに作り込まれた
居間ではなかったが4人が座して尚、
広々としていて柱の組み合わせも良いのか天井も高く真ん中にある囲炉裏が絶妙の位置に配置してあった。
庶民の住む家としては見事な造りをしていた。
家全体を僅かな時間見渡した女は出されたお茶を一部の隙もない所作で持ち孫娘に礼をするとお茶を飲んだ。
その動作があまりにも上品で美しい動作だったため、少女と村長は見惚れてしまった。
また窓より朝日の陽光が女にあたりその姿はまるで地上に舞い降りたマルス(戦女神)のように美しく気高さを感じさせた。
そのあまりの神々しさに少女(孫娘)と祖母(村長)はしばらく息を呑んだが我に帰り女に村長は質問をした。
「失礼とは存じますが、あなた様はとても
普通の方には見えません。どこか特別の方なのではありませんか。それにどこかでお見かけしたことがあるような……。」と村長は自分の意見に疑心暗鬼で最後は押し黙るように言葉を止めた。
それに対して女は誠実に答え「実は今の私には記憶がありません。私がどこの誰なのか自身ではわからないのです。誠に申し訳ございません。」と祖母(村長)に目を閉じて上品に頭を下げた。
それに対して村長は「そのような深い事情がお有りとはこちらこそ配慮が足りませんでした。どうかお許しください。」と頭を下げた。
「ただあなた様があまりに美しく神々しかった為、言わずにはいられなかったのです。
誠に申し訳ありませんでした。」と補足で村長は言った。
女は「まあ」と言葉を発し頬をほんのりと
赤らめた。
若い女性がたとえお世辞でもそのように言われたら照れるか悪い気はしないものである。
女は前者だった。(明らかにお世辞ではなく真実なのだが。)
これに今まで黙っていた少女(孫娘)と女性が話に加わり「会った瞬間から見惚れてしまったのですが、本当にお綺麗です。物腰も上品でどこかご身分の高い家のお方なのでは。」と
少女が右手で頬を押さえながらうっとりして言うとそこに女性が言葉を発して「実は私はこの方を知っているのですが、
記憶がないことや素性を秘密にしなければならない事情がありますので、誠に申し訳ありません。ご容赦ください。」とこちらも上品に頭を下げた。
慌てた村長と少女は「こちらこそ孫娘の命の恩人に対して誠に申し訳ありません。
そうだ本日はおつかれでしょう。
寝室を用意いたしますので、そちらでゆっくりとお休みください。」と村長は何故か妙に丁寧なお辞儀をした。
祖母(村長)は少女(孫娘)と共に女と女性を寝室へと案内した。
寝室の前にきて戸を開けると客間になっているのだろう「こちらでお休みください。」と
村長は女と女性を手招きした。
それとほぼ同時に少女が布団を敷き始め
女と女性が客間に入り程なく2つの布団を敷き終わった。
「それではゆっくりとお休みください。」
と祖母(村長)と少女(孫娘)はお辞儀をして戸を閉めた。
女と女性はその際目を閉じ上品にお礼の挨拶をした。
2人はお互いを見合い相槌をすると上品な仕草で服を脱ぎ肌着になると丁寧に衣服をたたみ枕元に置くと布団に入った。
女と女性は今日起きた出来事を思いながら
深い眠りに入っていった。
第28話序章 完
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