第21話
女と女性はしばらくのあいだ抱擁を続けた。
しかる後にどちらともなく抱擁を終えると
違いに見つめ合いながらも自然と涙が頬を伝わり落ちた。
伝わり落ちる涙を互いに指で優しく拭いながら女性は「…………様、私のことは憶えておられませんか」と言葉をやわらかに発し尋ねた。
女はその問いに女性が自分にとって大切な存在であることは魂の記憶により理解できていたが自らに起きた凄まじい出来事により記憶の喪失がおきていた。
自らは衝動的な行動をとってしまったが
それは心の内より湧き出す女性への想いゆえの行動であり女性の無事な姿を見ると今でもその行為が間違いではなかったと女は思うのだった。
だがそれでも記憶の喪失は女にとっても女性にとっても容易ならざる事態であることに変わりはなかった。
女と女性はしばし言葉を交わしたが苦慮した結果この場を移動し女の記憶を蘇らせることにした。
女と女性は上品な仕草で汚れた部分を手で払い立ち上がると女が来た方向とは逆の出口に向かい歩み始めた。
女は出口近くに足した時、辺りを見渡した。
そこには女が窮地の際にも助けてくれた女性の痕跡があった。
女は再び心の中で女性に感謝すると2人は出口よりこの場を後にした。
第21話序章 完
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