第16話

安らかな表情で死を迎えていた女性とは思えない虚で精気のない表情をしていた。

女性はまわりの人々同様に何かを追い求めるようにゆっくりした足取りだが遥か先の黒い穴に向かっている。

もがいて必死に女の腕を引き離そうとした女性の正面に回り込み女は再び女性の額に自らの額をつけると「…………」とある言葉を発した。

その行為により女性はみるみるうちに顔に精気が戻り顔色が明るいものになっていった。

だがまだ女性はぼんやりとした表情のままたたずんでいた。

女は両手を女性の肩に置きそのまま女性を抱き締めると

「しっかりしなさい!あなたは生きているのですよ!」と静かに訴えかけるように話しかけた。

その行為が女性の正気を取り戻し徐々に目に生者の灯火を蘇らせていった。


16話序章 完





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