第5話『蘇る初恋、蘇るトキメキ』
「こんばんわ太志くん」
「お疲れ様香苗」
二人はあれから時折電話をする関係になっていた。
何も無かった日、出掛けた後など、不規則でも香苗からのアクション次第で電話が始まる。
学校でも普通に話すようになっているが、『くん』付けだけは「まだ恥ずかしいから付けさせて」とお願いされていた。
今更ながら香苗と早紀の関係性について、ふと疑問に思った。普通なら絡み自体不思議に思える組み合わせ。
いつから、どのように香苗と早紀は知り合ったのだろうか。
「そういえば香苗って早紀とどんな経緯で友達になったの?」
「ん? あれ、早紀ちゃんから聞いてなかった? 私と早紀ちゃんって同じ中学だったんだー」
「へえ、それだったら確かに仲が良いのも納得」
ん? 待てよ。それだけであんなに仲良くなるもんなのか?
同じ学校の人が居なくて、偶然顔見知りだったとか?
いや、それだけだったらあそこまで仲良くなるのか?
もしかしたら、そんなことがあるかもしれないが、何か共通の趣味とか?
「香苗は早紀と学校で普段どんな話するの?」
「本当に普通の会話だよ。勉強のこととか、好きな動画の話だったり、そんな感じだよ。あれ、その様子だともしかして、早紀ちゃんから何も聞いてない感じなのかな?」
「え?」
「私と太志くんって同じ中学校だったんだよー」
「――――え?」
どういうことだ。そんなことがあるのか。
信じられない。誰かと勘違いしているに違いない。
「い、いや、そんなはずはないよ。香苗はともかく、早紀みたいなギャルが居たらわからないはずがないじゃん?」
「あ、なんか今、少し傷つくこと言われた気がするけど、聞かなかったことにしておくね。うーん確かにそう言われるとそうかもだけど、じゃあ、何か照らし合わせてみよっか」
「俺らの学年の大体の人数は?」
「大体300人、体育教師の名前は、男子が林先生、女子は宮本先生」
あ、合ってる。いや、まだ、まだ偶然かもしれない。
「うーん、これで信じてもらえると思うんだ。校長先生は木村先生、副校長先生は滝沢先生、最後に、三年三組二十番篠崎太志くん」
「――合ってる。全部合ってる。本当だったんだ……こんなことってあるんだね」
「そうだよー。薄々そうなのかなって思ってたけど、やっぱり知らなかったんだね」
「なんかごめん」
「うんうん、しょうがないよ。偶然同じクラスになったこと無いし、それに私って今は髪の毛短いけど、あの時は結構伸ばしてたんだよ~。それに、女子はイベントごとに整えてて、ずっと流してたのって極少数、いや一人二人くらいだったんじゃないかな?」
「そうだったんだ」
俺は初恋の人の印象が浮かび上がっていた。
香苗の清楚な印象に、黒髪ロングの姿を照らし合わさる。
この時確信した。俺の初恋は間違いなく香苗だったのだと。
いや、これは運命なんだと。そうとしか思えない。
俺の初恋はキミだったのか。
あの時味わった胸のトキメキが蘇って来た太志。
叫びたい気持ちをグッと堪え、静かにガッツポーズをとり、これからを考え始めていた。
気持が昂り始めた太志。
だがその後、香苗から思いもよらぬ一言が太志の耳に飛び込んできたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます