第4話『嬉しい操作ミス、今日だけで急接近?』
『こんばんわ、今お時間大丈夫ですか?』
スマホの通知音に気づいた俺は手に取り画面を見た。
通知には丁寧な文面が表示されていた。
特に意識せず、身近な人物に返す時のように『あいよ』と返信。すると、すぐさま通話がかかって来て瞬間的に着信に応じた。
「あ! 太志くんごめんなさい! 間違って電話掛けちゃったみたいだから切るね!」
「ん、あ、立花さん!? い、いいや、大丈夫だよ。ビックリしたけど、逆に立花さんが良かったらこのままでも大丈夫だよ」
「なら! なら、このままで良い……かな」
ガサゴソと音が聞こえてきた。寝っ転がっていたのか、遠めだった声が近くなった。
「改めてごめんね、急に電話掛けちゃって」
「大丈夫大丈夫、俺も丁度暇だったし。それより、何か用事があったんだよね?」
「ありがとね。用って言う程のことじゃないんだけど……今日、楽しかったから、それでちょっとお話しできたら……なって……」
後半になるにつれて小声になっていくのを感じた。
そして少しの沈黙の後、
「えへへ、なんか私、はしゃいじゃってるなぁ、なんかごめんね」
「あっはははっ」
「えっ、なになに、私何か変なこと言っちゃったかな!」
焦り出す様子から更に笑いが込み上げて来た。
立花さんに対する印象が完全に壊れた。
それにより緊張は解れ、更に笑いが込み上げて来た。
「いやさ、立花さんって普通の女の子なんだなって思ってさ、普段の印象と真逆で、なんだか面白くってさ」
「えー何それっ、私だって普通の女の子だよっ。もー、ちょっとひどいんじゃないの? それに……私の印象てどういうこと?」
「あっはは、ごめんごめん。立花さんってさ、ほら、普段は物静かで、何に対しても真剣に取り組んでて、なんかこう、高嶺の花って感じのイメージだったから、今日だけでイメージがひっくり返ったんだよね」
「な、なにそれ。太志くんって私のこと、そんな風に思ってくれてたんだ……なんだか恥ずかしいよ……それに、褒め過ぎじゃない?」
「いいや、そんなことはないよ。お望みならもっと良い所上げられるけど、続けましょうか?」
「や、やめてよ! あー、本当に私、今日はなんだか気分が昂りっぱなしで、確かにいつもの私じゃなかったかも。でもね、今日は本当に楽しかったんだ。ありがとね」
それからは、もっと行ってみたいところ、休みの日の過ごし方なんかを話した。
お互いの情報を交換していくうちに、親密さは増して話が盛り上がっていた。
このままいつまでも話していたいところだったが、お互いに晩御飯を食べる時間になり、通話を終了する流れになった。
「あ、今の今までなんで気づかったんだろう」
「ん? どうしたの?」
「私、今日が太志くんとほとんど初めて話すのに、名前で呼んでたね……太志くんはちゃんと名字で呼んでくれてたのに」
「ああ、そんなこと全然気にしなくて良いよ。立花さんが良かったらそのまま名前で呼んでくれると嬉しいな」
「え、良いの?! ありがとう。じゃあ、次から私のことも名前で呼んでくれると嬉しい……な。ダメかな?」
「え――いいの?」
「うんっ! こういうのはしっかり平等にいきましょう。それじゃ、また明日ね太志くん。今日は本当にありがとね、おやすみなさい」
「うん、また明日、おやす――」
俺が最後まで言葉を伝える前に切れてしまった。
その後すぐに、『ごめんなさい! 切断ボタンに間違って触ってしまいました』の文と頭を下げているスタンプが送られてきた。
この流れから、スマホを使い慣れてないのを今更ながら察した。
俺は歩き出した。
自分の意思で始まったものでは無いが、この気持ちを大切にしていきたいと思った。
明日の学校が楽しみで仕方がない。
明日だけじゃない、これから毎日が楽しみだ。
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