第6話『計4時間の長電話』
俺は真相を確認するべく早紀にROINをした。
もちろん、香苗を信用していないわけではない。
『なあ、ちょっと聞きたい事があるんだけど』
『おいっす~、どした?』
『今電話掛けても良い?』
すぐにOKのスタンプが送られてきた。確認後、軽快なリズムの曲と共に通話を掛けた。
「急で悪いな」
「いいよいいよー。私も暇してたし。それで聞きたい事って何? なんかあった?」
「ああ、単刀直入で話すと、早紀と香苗って同じ中学だったの?」
「あれ、言ってなかったっけ、そうだよ、おなちゅーだよー」
「本当だったんだな」
それから、早紀からの返答が無かった。
沈黙が一分ぐらい続いた後、早紀が口を開いた。
「あっちゃー……香苗言っちゃったんだ」
「どういうこと?」
「話を聞いた時、なんか変だなって思わなかった?」
「…………思った」
「はぁ、そうだよね。あぁ、そっかー、まあ仕方ないっか……もう言うしかないかぁ~。ねえ、今から言うことは誰にも言わないでもらえる?」
「ん? ああ、まあ、わかった」
言葉を続ける前に早紀は咳払いをし始めた。
緊張しているのか、余程口に出したくないのか、俺は口を挟まず先の言葉を待った。
「えっと、笑わないで聞いてね? 私ね、実は世間一般的に言う……高校デビューってやつなんだ……よね」
「――――くっぷ、ふははは」
それを聞いた後、あまりの衝撃的内容に思考停止してしまった。
「ちょ、ちょっと! 笑わないでって言ったよね! てか笑いすぎっ!」
「あーっはは、おっかしい。悪い悪い、でもさ、それ面白すぎだろ」
「あーっもう、明日覚えてろ! それと香苗にもぜーったい何か仕返ししてやるぅ!」
その後気づけば数時間の長電話をしていた。
中学校時代の学年行事、みんなの前でやらかした生徒の話題、教師同士の職場結婚、それらを話している内に半信半疑だった気持ちは無くなっていた。
積もる笑い話を披露し合い、常にニヤニヤしていた。
とっておきの話を披露しようとしたところで早紀が話を区切って来た。
「うっわ、もうこんな時間じゃん。そろそろ寝ようよ。このままだと寝落ち間違いなしだからさ」
「もう0時か。そうだな、終わりにするか。寝落ち電話とか恋人同士かってな」
「はいはい。おやすみ。また明日ね」
「あいよ、おやすみ」
初めて聞いた早紀の張りの無い眠そうな声。普段の印象からはとてもじゃないが、想像もつかない声にギャップを感じた。
あれが素の早紀なんだな。不覚にも可愛いって思っちまった。
あんなギャルみたいな感じより、よっぽどさっきのままの方が良いと思うんだけどな。
あれ、俺、今……?
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