第4話 彼女は死んだ
ここは荒野。熱帯のメキシコ。俺、アントニオ・マルヴェルデは、国境の街シウダー・フアレス近郊の荒れ地で、サトウキビ農家を営む貧乏な両親のもとに生まれた。早くに父母を亡くし、たった一人残された家族である妹エスペランサを養うため、朝から晩まで畑を耕していた。しかし、農業だけでやっていけるほどこの世界は甘くはないし、むしろ悪事を働いたほうが金を稼げるというものだ。街はギャングがのさばり、川向こうのテキサス州エルパソからはFBIの追跡を振り切った犯罪者連中が流れ込んでくる。白い粉は飛ぶように売れるし、人買いが女子供を連れまわしている。道路には、マフィアの抗争に巻き込まれた市民の死体が転がっているよう、そんな地獄で、身ぎれいに過ごせる奴がどれだけいるというのだろうか。
俺は、妹エスペランサを愛していた。俺が彼女にしてやれることは、学校に行くという名目でカリフォルニアの遠い親戚の元に行かせて、まっとうな人生を送ってもらうこと、それくらいしか思いつかなかった。そして、そのためには金が必要だった。
薬も売ったし、たくさんの人間を騙した。時には、妹くらいの少女を娼館に売り飛ばすことを手伝ったこともあったし、敵対ギャングの下っ端を拷問して川に沈めたりもした。
「お兄ちゃん、無理はしないでね。私はお兄ちゃんが一緒にいるだけで幸せだから」
そんな健気なことを言われた俺は、フ〇ッキンジーザスと妹に、他人を不幸にするような仕事はしないと誓った。だが、俺はその約束を守れたためしはなかった。誰かを犠牲にしなくては、大事なものを守れない。俺はそう自分に言い聞かせた。
エスペランサをカリフォルニアの大学に入れるための学費は、俺にとってはかなりの大金で、密売シンジケートの危険な仕事も率先して引き受けた。ガンマニアのマフィア幹部に気に入られ、44マグナム仕様のデザートイーグルを手に入れたのものこのころだったと思う。いつしか、俺は仕事仲間にも慕われるようになっており、中でもジャンゴ・イスキエルドJr.、通称D.I.Jという男とは、当時相棒と呼んでもいいくらいの仲で、奴は、俺と一緒に仕事をするために、44マグナムが使える銃を手に入れるくらいだった。奴の両親はメキシコ人だったが、アメリカに不法入国し、奴自身はテキサスで生まれたという。少年時代をフロリダで過ごしたという奴は、両親共々強制送還され、気が付いたら気のみ気のまま対岸にエルパソが見えるこの街に流れ着いたという。奴から聞く「アメリカ」の話は、俺に希望を与え、いつか、エスペランサをカリフォルニアに送って幸せにしてやろうという気概を否が応でも抱かせるものだった。
俺は、ジャンゴから聞きかじった情報をエスペランサにも教え、「インド人はサトウキビの汁にレモンジュースを入れて飲むらしいぜ」なんて言うと、いつかお兄ちゃんとインドにも行ってみたいね。実物の象に乗ってみたいね。なんて笑いあった。俺が、裏の仕事を終えて早朝に帰ってくると、エスペランサは決まって不安そうな顔をしていたが、ジャンゴから聞いた「希望」の話をすると、彼女は笑顔になった。俺はエスペランサをなにがなんでも進学させようという思いを強くした。
もう5年くらい前になるだろうか。或る冷え込んだ冬の日。それは俺の誕生日だった。エスペランサは俺に内緒で、中心街に菓子か何かを買いに行っていたらしい。
その日の朝、俺は仮眠をとる前に、彼女に「フロリダで流行ってたケーキ」の話をした。この街じゃ手に入らないが、いつか一緒に食いに行こうなと、他愛もない話をした。そんな話をしたから、彼女は俺が甘いものを食べたいと思ったのかもしれない。俺がそんな話をしなければ、あんなことにはならなかったのか、今となってはわからない。
仮眠から目覚めて、日が沈むまで畑を耕した俺は、異変に気付く。10時を過ぎてもエスペランサが帰らない。彼女の代わりに、所管の刑事が扉をたたいたのは深夜過ぎだった。普段なら、何しにしやがった!と悪態の一つでもついていたところだが、その日はそんな気力もわかないくらい焦燥に駆られていた。刑事の険しい顔を見て、俺の中の世界が瓦解していくような、神経が一本一本剥がされていくような、そんな感覚に襲われた。
「アントニオ、今日はお前をしょっ引こうっていうんじゃねえ。妹さんのことで来た。」
結論からいおう。彼女は、路地裏で「発見された」という。フ〇ッキンジーザス。彼女は変わり果てた姿で見つかった。警察署の安置所で、みすぼらしいナイロン袋に包まれた彼女と対面した。刑事は俺に、彼女の近くに落ちていたという踏み潰された菓子屋の袋を見せた。
「お前、確か今日、いや、もう時間的に昨日か。誕生日だったんだってな。妹さんは、プレゼントでも買いに行った帰りに、襲われたんだろう。」
「やった奴は・・・わかったのか?」
「マデロ・カルテルの若い衆5人組だ。うちの署長にマジメに捜査しないように圧力をかけてきやがった。マデロ・カルテルは、お前さんらのシンジケートに、シマを荒らされて怒ってるからな。関係者への報復のつもりだろう。すまねぇが、俺から言えるのはこれだけだ。」
「そうか。それだけわかりゃ十分だ。ああ、刑事さんよ、もう一つだけいいか。今日くれぇはハッパ見逃してくれ。」
俺は震える手で、ガンベルトのポーチに突っ込まれていた紙巻のハッパに火を付けた。ああ、このライターも、いつぞやエスペランサが金を貯めて買ってくれたスイス製のビンテージライターだったな。カランなんとかっていったっけ。でももう、彼女はいないんだ。彼女は、死んだ。俺のせいで、死んだ。
「アントニオ、どうすんだ。」
「妹への、義理を果たすだけだよ。」
「バカな真似はよせ」
「彼女は死んだんだ。もう、悲しむ奴なんかいないさ。」
妹の葬儀はとても質素なものだった。俺はサトウキビ畑が見渡せる場所に彼女を埋めると、その墓碑に復讐を誓った。
この後の話は、とてもつまらねぇ話さ。一人ひとり、5人5様に奴らを葬り去っていっただけだ。肺に穴開けて風通しのいいところに吊るすとか、足だけ撃って生きたまま野犬をけしかけるとか。限りなく尊厳を奪う形で殺していった。若手5人を始末されたマデロ・カルテルは、当然俺だけでなく、シンジケートに対しても攻勢を強めたが、独自の密売ルートを持つシンジケートとの協業を目論むマフィアファミリーが介入したことで状況が逆転。マデロ・カルテルは幹部から関係していた売春婦に至るまでフアレスから駆逐された。
いつしか俺は「掃除屋(バスレロ)」と呼ばれて畏れられるようになっていた。しかし、残ったのは、血まみれのデザートイーグルと.44マグナム弾の空薬莢と、喪失感だけだった。警察も、エスペランサの件をもみ消したことへの復讐を畏れてか、マデロ・カルテル壊滅に関してろくな捜査もしなかったから、俺がブタ箱にぶち込まれることもなかったわけだが、エスペランサが、俺の代わりに5人のチンピラ野郎に嬲られて殺されたという、変わりようのない事実だった。
その後も、サトウキビ農家をやりながら、シンジケートの仕事をやったり、マフィアの用心棒をやったり、腐敗したフ〇ッキンポリスに代わって村の警備をしてやったりした。悪名のせいで、これまで以上に良いレートの仕事にありつけるようになった。だが、エスペランサはそこに居なかった。ハッパが無いと手が震えちまって落ち着かなくなったのもあの頃からだったか。いつしかジャンゴとも仲違いしちまったし、ただ破滅へ向かって転がり落ちている、暴力が求められている限りは俺の居場所があった。何のために生きている?分からない。ただ、生きている。そして、その自堕落な生活は、あの日突然終わりが来た。
そんな、突然の終わりの後に、フ〇ッキンジーザスは俺に悔い改めろという。そのためには、こんな少女の姿で、無法地帯の世界に放り出される必要があると抜かすんだ。嫌が応でもエスペランサのことを思い出しちまう。銃も車も無い魔法の世界で、俺は何をどう悔い改めればいいのか。修道院にでも行って懺悔しろとでもいうのだろうか。
揺れる馬の背中で、そんなことを思い出していた。エスペランサが小さかったころ、馬に乗せてやったことがあったな。荒野では、乗馬は基本スキルだ。ガソリンが手に入らなけりゃ車もバイクも鉄の塊だ。その点、馬は道の無い場所でも走ってくれる。
「ニアちゃん、馬もだいぶ上手にのりこなせるのね。」
馬で並走する金髪の剣術使い、エレナが俺に話しかける。俺は不愛想に答える。
「誰かさんのせいで、乗りにくい恰好だけどな。それなりには、乗れるぜ。」
エレナが、ギルドのおやじからタダで馬をせしめたおかげで、盗賊団アジトがあると思われる場所まで歩かずに済む。何事も戦闘の前には、体力温存が大事だ。疲れているところで敵に襲われてみろ。能力も発揮できずに蹴散らされて終わりだ。シンジケートで下働きをしていたパナマ出身のゴンザレスが「パナマ総督は、無駄に守備兵に斥候を命じたせいで、キャプテン・モーガンの奇襲に敗れた」とかパナマの故事を言ってやがったのを思い出す。最もゴンザレスは、興味本位でマフィアのスキャンダルに首を突っ込んだせいで、カリフォルニア湾で魚のエサになっちまったがな。
さて、昨晩俺は、このエレナに、無理やり風呂に入れられるという屈辱を味わっている。メキシコでは、売春宿で娼婦に体を洗わせるなんてことは日常茶飯事だったが、まさか、女の体になって、女に体を洗われるなんていう経験をすることになろうとは、思ってもみなかった。だがそれでわかったこともある。この華奢な体では、組みつかれてしまったら、容易に振りほどけないということだ。エレナが特別馬鹿力なだけなのかもしれないが、少なくとも俺は一瞬も抵抗できなかった。アウトロー共と対峙するときは間合いに気を付けなければいけねぇな。
そしてエレナは、着せ替え人形みたいな動きにくい服を着せてきやがる。他に服が無いから我慢して着るしかないのだが、はあ、女ってのはなんでこんなに動きにくい服を好んで着るのか。しかも、エレナが選ぶ服は特に動きにくいデザインが好きなようだ。ダボついた裾やスカートのフリルのおかげで、敵に動きを読まれにくいという利点はあるが、そのあたりも考慮した身の振り方をしなければ、出遅れる可能性もある。
「ニアちゃん、昨日の夜、私が言ったこと、覚えてる?」
「オレを無理やり風呂に引きずり込んだ話か?」
「そ、そうじゃなくて!賊の話!」
「ああ、盗賊団は、魔石の精製するために、川の近くに炉を立てていて、樹海の中に炉を隠してるってやつか。仮説にすぎないが。それにしたってなんだって奴らは魔石なんかに頼るんだ?魔法の能力を磨けばいいじゃないか。」
「うーん、ニアちゃんは特別な魔法が使えるくらいだから、きっと魔力に不自由したことがないのかもしれないけれど、大多数の人は、一定時間に絞り出せる魔力には限界があるからね。魔法をメインウエポンで使おうとするなら魔石で補助してその限界を超えないといけないわけね。より強力な魔石を作るのは、そういう人にとっては悲願ともいえるわ。罪を犯す狂気に走った魔法研究者は年に数回事件になるほどよ。剣や弓使いの傭兵の仲にも、サブウエポンとして攻撃魔法用の魔石を持ち歩く人は一定そういるわね。」
「そんなものなのか。」
まさに銃社会における、拳銃ってことか。
「エレナも魔石を持ち歩いているのか?」
「私は、ランタン替わりのものや燃料替わりのものは持っているけど、攻撃用途のは持っていないわね。剣一本よ。」
「それだけ剣に自信があるってことか。」
「ま、いろいろあったのよ。」
なぜか、エレナは遠くを見て目をすぼめた。何か思うところでもあるのだろうか。
「昨日オレたちが倒した奴らよりも手ごわいと考えていいのか?」
「そうね。あいつらは数が多かったけれど、普通の盗賊団だったしね。わざわざ攻撃用の魔石を精製してるってことは、それなりの魔法が飛んでくることを心配したほうがよさそうね。ま、ニアちゃんみたいに無詠唱高速魔法<ラピタマギア>なんて使える魔法使いはほとんどいないでしょうから先制・不意打ちが取れればこっちのもんだけど。」
「ふぅん、そういうもんかい。」
まあ、なんにせよ、俺が油断してヘマこかなきゃ大丈夫ってことだな。
「あ、そろそろ、馬車が襲われたっていう場所ね。」
そうこうしているうちに、馬車が襲われたポイントだ。生々しく破壊された馬車が残ってやがる。さすがに死体は連れ帰ったのか、残されてはいなかったが、ひでえ血の跡だ。ギルドの手練れが同行していてこの様なんだから、奴らは相当の腕利きなんだろう。正面きっての戦闘は避けたいところだ。
それにしても妙だな。俺たちがここまで乗ってきた馬の足跡、現金をここまで運んできた馬車の跡、犠牲者を街に連れ帰ったであろう馬車、その他入り乱れた人間の足跡はある。しかし、賊どもの馬の蹄の後が無い。事件があったのは一昨日だから、足跡が消えるには早すぎる。ということは、奴らは徒歩でここまできて襲い掛かったということになる。
「なあ、エレナ。地図を見せてくれないか?」
「はい、どうぞ。いきなりどうしたの?」
「いや、この道の、街側にも逆側にも、盗賊団が乗ってきたと思われる馬の蹄が無いんだ。ってことは、奴らはここまで馬に乗ってこなかったってことにならないか?」
「なるほど、ここから、徒歩で行ける距離にアジトがあるかもしれないってことね。」
「そう、しかも、大量の現金を抱えていける場所にだ。たしかエレナの読みだと、樹海の近辺の川がある方向だったな」
俺たちは、現場から樹海の方向に数キロ進んだところで、怪しい場所を発見した。道から離れた林の中によく目を凝らすと、焚火のような跡がある。
「おい、エレナ。あそこの林の影、火を起こした後じゃないか?」
「え、どこ?ただの旅人の野宿跡じゃない?」
「あんな道から外れたところで野宿なんざしないさ。旅人があともう少し行けば街に辿り着くような場所で野宿するか?土地を知らない奴が、凶暴な野生生物がいるかもしれないリスクをとってまでそんな冒険しないさ。つまり、そういうところで何か隠れてやることといったら、土地勘があって、しかも悪い奴くらいじゃないか?」
エレナに馬から降りるよう指示し、俺も飛び降り、立木に手綱を繋ぐ。もし敵が潜んでいた場合、頭が高い分狙撃される可能性が高まるからだ。もっとも、この世界に拳銃は無いんだが、魔法とやらがどの程度精密な狙撃ができるかわからないから慎重にいくにこしたことはない。サボテンの棘をとる手間を惜しんで、そのままかじりついたら口を怪我して死ぬ。メキシコでは当たり前のことだ。
「誰もいないわね。」
「だが、新しい痕だな。馬車を襲うために、ここで待ち伏せしてたのかもしれねえ。」
「じゃあ、ここを起点にして、河原の方角に歩いていきましょうか。」
地図を見ながら河原の方角に歩いていく。地面に落ちている枝に触れると、不自然な折れ曲がり方をしているのがわかる。まるで人間が靴で踏んだかのような。少なくとも、ここを人間が通行したことは確かなのではなかろうか。
「エレナ、隠れろ!」
十数分程歩いたところで、人の気配に気づく。とっさに俺とエレナは木影に隠れる。みすぼらしい身なりの、だが武器を携行している男が居た。あたりを見回している。
「まったく、ボスも人使いが荒いぜ。焚火の痕跡を消してこいだなんて。あんなの誰も気づきやしないさ・・・。」
「念には念をってことだろ。ボスは、用心深いからな。」
やはり、あいつらは魔石の盗賊団ってやつらの一味か。あたりを見回したが、2人だけのようだ。こうなったら、脅して道案内してもらったほうが早そうだな。とはいえ、デザートイーグルで脅したところで、銃の概念を理解していないこの世界のやつは言うことを聞くと思えねぇ。ここは、エレナの剣で脅してもらうことにしようか。さて、俺はとりあえずハッパをキメよう。
「エレナ。あいつらに道案内させよう。剣で脅してくれないか?」
「りょーかい!」
「やあ、お兄さんたち元気?」
おいおい、いきなり正面から行くやつがあるか。背後から忍び寄って刃を突き付けるとかやりかたがあるだろう。もしここがメキシコだったら撃たれて無名墓地行きなところだ。
「うお!?誰だお前!?森で迷ったのか?!」
「いや、違う、こいつ、剣を構えてやがる。村の自警団の仲間じゃないか?!」
「バカめ!相手は女一人だ。俺たちにはコイツがある。」
何やら石を取り出して呪文を唱え出したぞ。あれが魔石ってやつか。おっと、エレナに向けて何か撃ちやがった。魔法ってやつか。言わんこっちゃない。その魔石とやらの攻撃なのか、次から次へとエレナに向かって魔法が襲い掛かる。エレナのやつは表情一つ変えずに、剣で魔法の球を叩き落としてしのいでいるが、それもいつまでもつかわからない。音が出るからやりたくなかったが、仕方がない。やつらの腕でも撃って痛い目見てわからせるか。
「すまねぇエレナ、加勢する。」
「え、私は大丈夫よ?」
「なんだこんどはガキだと!?」
「そ、そいつはまさか…」
お、俺がデザートイーグルを構えながら飛び出すと、撃つ前に怯みやがった。
「お、お前、ガキがなんでそんな物騒なもんを!」
なんだと、撃ってもいねぇのに拳銃のことを知っているのかこいつ?
「お前、こいつがなんだか知ってるのか?」
「無詠唱高速魔法<ラピダマギア>の杖・・だろ・・?」
「エレナがこいつを見たとき、初めてみたような素振りだったが、このあたりじゃ、こういう武器は珍しくないのか?」
「いいえ、そういったものが存在することは噂で聞いてたけど、少なくとも私は、ニアちゃんが使ってるのを見たのが初めてで、どんな形をしているのか知らなかったわ。あ、もしかして、こいつら、ニアちゃんのこと知ってるんじゃないかしら?!ニアちゃんの記憶喪失を探るカギになるんじゃない?」
「いんや、オレはこんな奴ら知らねぇし、絶対に違うと思うぞ。」
成程、じゃあこいつらは、どこで知ったかは知らないが、この拳銃みたいな杖の存在を知ってるってことか。なんにせよ、こいつらが、銃が脅威だって知っているならやりやすい。
「よし、じゃあそんな魔法を眉間に撃ちこまれたくなけりゃ、おとなしくするんだな。」
奴らが俺のデザートイーグルを見て怯んでるすきに、エレナがやつらの魔石を砕きやがった。相変わらずいい仕事だぜ。エレナが剣の束で殴りつけると、気絶した大の男が二人、床につんのめった。手際よくロープで腕を縛る。
「よし、上出来だぜ、エレナ!」
「やった!一瞬、首を落とすべきか悩んだけど、気絶で正解だったね!」
よし、こいつらの所持品を改めつつ、案内してもらうとするか。
「ニアちゃん、こんな男どもの持ち物漁るの?汚いよ?」
「とはいえ、武器なんかは没収しておかないとだろ。」
「それは、そうだけれども・・・」
持ち物は、酒瓶、タバコ、短剣に、予備の魔石、コンパス。目ざといものはこのくらいか。
「地図はないみたいね。」
「おそらく、このコンパスを頼りにねぐらに戻るんだろう。こいつら一度起こして案内させないとダメだなこりゃ。」
未開封の酒瓶をくすねつつ、開封済みの酒の蓋を開け、伸びてやがる男どもの頭にばしゃばしゃふりかけていく。
「おい、起きろ、クソども。起きねぇとライターで燃やすぞ。」
俺が奴らの顔に火を近づけて炙ると、エレナも涼しい顔で奴らの腹に蹴りを入れる。男たちはむせながら飛び起きた。
「くっそ、なんなんだよ一体・・・」
「お前ら、数日前に現金馬車を盗んだ盗賊団の一味だろ?」
「だったら何だっていうんだ。」
「俺たちに協力して、アジトまで連れてってもらうぞ。そしたら殺すのは最後にしてやる。」
俺は銃を、エレナは剣を突き付けながら、奴らに向かってにやりと笑った。
「じゃ、案内してもらおうか。」
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