アルファ先生の発案~英知の結晶~
~ここまでの登場人物~
私(アルファ先生):小説家
ロー君:メンタルが小学校から卒業できてない高校生
ベータ博士:「だよぉ」って喋る物知り、博士ではない
シグマ社長:マッチョ
パイちゃん:ロー君の彼女、中学生
ガンマ教授:おじいちゃんキャラ
イオタ主任:エスパー
◇
取り出だしたりますはおもちゃのコイン少々と、繋げて色んな形にできる棒、それとネームタグ付きのクリップ。まずは3本の棒にクリップをつけまして「固体」「液体」「気体」と書き込みます。
「アルファ先生、これなあに?」
「これはねえ、私がよく使ってるんだけど、小説のネタを考えるときに色んなものの繋がりを実際の形にして、分かりやすくするの。」
そうこう言ってるうちに、コインと棒をつなげて出来上がりです。
(高)
/|\
( )( )( )
| | |
気 液 固
体 体 体
| | |
( )( )( )
\|/
(低)
「さて、それじゃあ空いてるコインを埋めていきましょう。ロー君、エネルギーを持った気体は何だったかな?」
「風です。」
「次にパイちゃん、風と同じような状態の液体は?」
「風と!?空気が流れてるから……あっ、川!」
「同様にシグマ社長、固体で同じ状態を表すには?」
これはちょっと難しい、シグマ社長は腕を組んで考え込む。
「地震とは違うな、うむ。物が飛ぶ、走る、動く……『動』が良いかと。」
私はここまで出てきた文字をコインに書き込んでいく。
「となると、固体のエネルギーが低い側は『静』になるね。」
「川の反対は……海?」
「止まってる水ってそれはただの水なのでは。」
「あ、そっかぁ。じゃあ風の反対も空気ってこと?」
そしてみんなが思い思いに意見を言い始める。紙とペンを持ち出してくる者、ホワイトボードでディスカッションを続ける者、辞書を開いてヒントを求める者……
「うーん、エネルギーエネルギー……、水は流れて海に行って蒸発して雲になって雨に……あっそうか分かったあああああああ!!!」
どんがらがっしゃん
考え込みすぎて変なポーズになっていたロー君が何かに気づき、その拍子で盛大にずっこけ、そして叫ぶ。
「わかった!位置エネルギーと運動エネルギー!」
ベータ博士を始め、数人は既にその答えを知っていたけれど、あえて口にすることは無かった。
なぜならば、悩み、語り合い、考え抜いて答えに辿り着く経験は何事にも代えがたいものだからだ。今ここに居る人たちは、みんなそれを分かっている。
さて、壁を一つ越えると議論は飛躍的に展開するものだ。私が位置エネルギー用と運動エネルギー用に、もう一つ同じものを組み立てているうちにどんどん意見が出てくる。
「高いところにある固体なら、星!」
「星ってガス状のものも多いよぉ」「そこは踏み込まない方が良いでしょう、更に言えばガス状惑星も中心部は固体だし」
「上の方にある水は、雨かな?」「それはどっちかと言えば動いてる方」「では雲ならどうか」
「気体に位置エネルギーとかあるの?」「認識しずらいねぇ」「見たまえ!同じポジションの他二つが星雲だぞ!」「なるほど、じゃあ宇宙……『宙』がいい、空中ということだね」
「低いところの水は海で良いな」「じゃあ固体は陸!」「となれば気体は空しかないじゃない!」
「動く水は川だっけ」「さっき雨とか言ってなかった?」「川も雨もなんか限定的だなぁ」「動く気体は風で間違いないんだけど」「風が吹く、水は……流れる。」「じゃあ『流』じゃん」「その理屈で言ったら動く気体が『吹』になってしまうよ」
……出るわ出るわ、息抜きのちょっとした話題のはずが相当にヒートアップして、コインに書き込まれる字も何度も書き換えられている。ツルツルした表面にホワイトボード用のペンで書いているため、ティッシュなどですぐ消せはするのだが、流石にインクが窪みに残ったりで汚くなってきた。
私はバンバンと手を叩き、
「そろそろ締め切りますよー!」
と宣言する。いくらでも議論できるものは、スパッと切って終わらせてしまうのが大切だ。
そうして私の手元にはこんなものが出来上がった
(高) (速)
/|\ /|\
(宙)(雲)(星) (風)(流)(動)
| | | | | |
気 液 固 気 液 固
体 体 体 体 体 体
| | | | | |
(空)(海)(陸) (気)(水)(物)
\|/ \|/
(低) (止)
「そして高と速、低と止をクリップで止めると……こうだ!」
私は最終形態になったそれを掲げる。
「それって、クリスタル……?」
ロー君が呟いた通り、この形は先端が尖った六角柱。クリスタルと言えばこの形を連想する人も多いだろう。
なかなかに綺麗な形の結論が出て、辺りからは拍手が沸き起こった。
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