第2話「過去に行くとしたら」

 時計を片手にスカイダイビング。

 時間を自在に操ることができるなら、このまま過去に飛び、ゲームのログインボーナスを取り戻す。

 さすればこの命は、吉でもなければ凶でもないけれども、平穏が約束されると信じている。

 一度の行為が、全ての決定につながることを忘れるな。

 一度でも取りこぼせば、そこで運命がずれることだってあり得る。

 そういった心得を踏まえたうえで、青年は現在高い場所に立っている。周りには何もない。あるとしても、空しかない。


「行こう」


 そう決心して、青年は高いところから飛んだ。

 ふんわりと、ゆったりとした感じで、倒れこむように。

 走馬灯が駆け抜けていくのは意外とこんな感じなのだと思う。時間が巻き戻ったり、時空を超えていくときの演出も同じだと考える。

 片腕に嵌めていた時計が動き出す。鮮やかな白い光が周囲を包みだす。

 そして、光になって消えていった。落下していく中だから、まるで海にダイブするかのように、固形の入浴剤が解けきった形で消滅していった。


 このまま、彼はどうなっていったのか、生きた状態でログインをすることが出来たのか、この結末は先の世界にいる彼自身にしか知らない。

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