S.N.S.(Short Nonsence Sentence)
小林由正
第1話 「秘密の質問」
スマートフォンやパソコンが普及してから、様々な電子機器が活躍の場を広げていき、情報はすべて、電子の世界でのメモや記録を支配している。
そしてそれらを開くのに、
パスワードと言っても、数字を数文字入力すればいいだけのものもあれば、自分だけがわかるような答えを設定する「秘密の質問」というものがある(これらは一例であって、実際に存在しているわけではありません)。
「好きな食べ物は? 炙りしめ鯖」
これではありがちすぎるし、適当に選択すれば当たっちゃう可能性がある。43点。
「あなたの誕生日は? A月B日」
これも赤の他人ならわからないかもしれないが、知人や身内や同僚からは、見破られてしまう可能性がある。55点。
「子供のころに過ごした場所は? 〇〇町の公園」
場所が特定される可能性がある。33点。
「お母さんの料理で好きな食べ物は? カレーライス」
これは正直な答えになってしまうだろう。母親の作った料理でも、一番王道なのはカレーライスだ。少なくとも私はそう思っている。特に、脂身がついた豚肉が入っていたときは至福の一言だと言えるだろう。ただし、答えとしてはありがちすぎるので44点。
「今あなたが思っていることは? お前ぶっ潰してやろうか」
これの場合は、その時に思い付いた答えなので、当時の状況を作り出すか、思い出すかしないと答えられないだろう。61点。
「君は今現在何をしている? アルバイトをして粛々と生活している」
たとえこれを設定したとしても、全く違う未来を進んでいたとしたら、後々で知ると呆気にとられるだろう。しかし、答え方としては大分強固になるだろう。78点。
「あなたの未来を教えて? わからない」
確かに人の未来というのは、教科書や小説やビジュアルノベルゲームみたいに、事前に決められているわけではない。その時の行動や考えによって、常に左右されていくことであり、それが成功や失敗であったとしても、変えることはできない。
だからこそ、未来を教えてという質問が浮かんだら「わからない」と設定するのが妥当だろう。しかし、頭を空っぽにしたような、偏差値が低そうな人からしたら、すぐに思いつきそうな答えになる可能性がある。69点。
ところで、なぜ最後に採点をしているのか。それは、「わからない」のだ。
作品を作ると、決まって評価を得なければならない時がある。
「この作品はここがいい」とか、「ここがダメ」とか、「もう少しよくできたんじゃないか」・・・などとランク付けされることは、自分の頭で考えたモノから、存在の価値まで終わりが見えなくなるほど現れるものである。
全ての作品において、結末がどうなるかは結局のところでは「わからない」という結論になっていくのだ。そして、様々な事項に於いて“回避する手段”としては最大の武器でもある。
さて、ここまでで、多くの質問の案を集めることに成功した。ノートパソコンを開いて、データの記録を開始するとしよう。
「パスワードは何ですか?」
パスワードは数字を入力するのだが……
あれ?
何だったっけ?
ど忘れしたのだろうか。
思い出せない。
たった数字を入れるだけなのに。
――――――よくわからない。
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