第10話 高い壁

「初期場札は『ライオン』! ファーストターンは、『仏罰の代行者』寂然じゃくねん選手!」


 実況の声と客席の興奮が言悟の身体をびりびりと揺らす。大画面に映し出される「ライオン」の語彙、そして真っ白い数珠じゅずとともに五枚のカードを扇のように広げた尼僧の姿に、満員の観客の好奇の視線が注がれている。


阿仁川あにかわさん、この場札ですが、単純な暴力としては比較的下位の語彙カードですね」

「そうですねぇ。まあ、『ライオン』如きさばけないようでは、語彙大富豪に名乗りを上げる資格は無いと言えるでしょうね」


 解説者の言葉にたがわず、ファーストプレイヤーの寂然という尼僧は、その場札に微塵も動じていない様子だった。彼女は太く白い指で一枚のカードを手札から抜いたかと思うと、じゃらり、と数珠を鳴らし、そのカードを卓上に滑り落とした。


拙僧せっそうの語彙は、『火葬』でありますわ」


 彼女の野太い声に合わせ、大画面には「ライオン」VS「火葬」の語彙が並んで表示される。審査員は直ちに満場一致で「通し」の判定を示した。


「おおっ、今回も寂然選手の『火葬』が炸裂しました! 生物系語彙はひとたまりもない!」

「やはり寂然、今回も同じ仏教デッキで来ましたか」


 感心するような解説者のコメントに、彼女は自信満々の様子で応える。


「決まっておりますわ。拙僧が信じるものは、ただ一つ、御仏みほとけの力を宿せしこのデッキのみ」


 寂然のその宣言を待っていたかのように、観客達が一斉に「いいぞ!」などと歓声を上げた。この尼僧もまた、語彙大富豪の大会における有名人であるらしかった。


(仏教デッキ、だと……!)


 上家に立つその姿を見据え、言悟は驚愕に目を見張っていた。五枚の語彙カード全てを特定のテーマに揃えたデッキ……いわゆるテーマデッキは、隙も生じやすく、大会レベルの構築は難しいと言われる。そのデッキ一つでここまで勝ち上がるなど、よほど並外れた技量を持つプレイヤーでなければ有り得ない。

 その寂然がふと言悟に目を向けたかと思うと、微かに口元を吊り上げてきたように見えた。瞬間、言悟の全身に戦慄が走った。


(まさか、この尼さん、オレの手札に水属性の語彙カードが無いのを見抜いて……!?)


「さあ、初代語彙大富豪・黒崎言四郎の息子、黒崎選手、この『火葬』に対抗することはできるのか!」


 アナウンスが自分を急かしているような気がして、言悟は慌てて一枚のカードを卓上に出した。火属性に10-0を取れる水属性の語彙カードを用意していなかった以上、多少雑だが、これで攻めるしかない。


「オレのカードは、マグマの海にも耐える『仮面ライダーBLACK RX』!」


 二つの語彙が並んで大画面に表示され、審査員が次々と「通し」の判定を上げていく。ライオン程度なら容易く葬れる「火葬」でも、流石にRXを荼毘だびに付すことはできない。


「出ましたぁ、雑火力ざつかりょくの申し子・BLACK RX! さすが崎の血を引くだけありますね、阿仁川さん」

「いやぁ、これは正しいRXの使い方ですねえ。最近はRXをただの暴力装置として使うプレイヤーも多いんですが、黒崎言四郎の切るRXは、常に正義のヒーローの本分を忘れていなかった……。黒崎少年もまた、そんなRXの勇姿を見て育ったのでしょう」

「なるほど。無辜むこの市民相手でも構わずリボルケインをぶっ刺している最近のプレイヤーも見習うべきですね。……さて、場には『仮面ライダーBLACK RX』。金色こんじきのエンチャンター・荒浜あらはま選手に手番ターンが移ります!」


 解説者の言葉に頷き、言悟は下家のプレイヤーに目を向けた。金髪にグラサンの荒浜という男性は、五枚のカードを手の中でパチパチと弾きながら、言悟に向かってあごを突き出してきた。


「おいおいおい、一巡目から『RX』とかよぉ、カンベンしてくれよー、お坊ちゃんよぉー。インフレが過ぎんだろぉ。RXのバイクよぉ、アクロバッターっての? あれ、時速750キロも出るらしいじゃんよ」


 彼の言葉に客席がざわつき始める。彼は一体、何を詠唱しようとしているのか……?


「そんでよぉ、RXの乗るクルマのライドロンってのは、もっと速くて、時速1500キロ? とかいうフザけたスペックらしいじゃんかよ。ライダーのくせにクルマに乗るんじゃねーっての。時速1500キロつったらよぉ、音速に換算すりゃあよぉ、マッハ1.2くらいじゃねーかよ? ったく、とんでもねーよな、陸上で音速とかよぉ」


 言悟はごくりと息を呑んだ。RXの乗るマシンの最高速度など言悟も気にしたことはなかったが、ここまで堂々と数字を言い切るからには、きっとこの荒浜という男性は正確なデータを記憶しているのだろう。

 そして、革ジャンを着た腕をぶんと高く上げ、彼は一枚のカードを卓上に叩きつけた。


「つーわけで、俺様はコイツを出すぜ。『マッハ3.5で走る豚』!」


 刹那、ざわめいていた客席が一気に歓声に転じる。大画面にも堂々と表示された、その意味不明な語彙は――。


「で、出たぁー! 胡乱うろん特性付加エンチャントのお決まり、『マッハ3.5で走る豚』だぁーっ! 審査員の判定は――通し四票、異議チェック一票! 『仮面ライダーBLACK RX』のマシン、マッハ1.2のライドロンをも抜き去り、場には『マッハ3.5で走る豚』!」

「いやぁ、今のは詠唱が良かったですね。絶対的な攻撃力と防御力を誇る『RX』に対し、マシンの速度の話に無理やり持っていくことで、速度勝負の文脈を審査員に納得させた。こうしたプレイングの妙もまた、語彙大富豪の醍醐味なんですよねえ」


 ふふんと得意げに鼻を鳴らす荒浜を前に、言悟はぐっと奥歯を噛んでいた。「RX」の耐久性ならば、少しは下家の動きを封じられるかと思っていたが、甘かった……!


胡乱うろん特性付加エンチャントの使い手……「金色こんじきのエンチャンター」か……!)


 言悟も聞いたことはあった。語彙大富豪の世界には、一見すると意味不明としか思えない特性付加エンチャントを重ね、独自の胡乱うろん語彙を作り出す流派があることを。

 荒浜が今出した「マッハ3.5で走る豚」は、その中でも特に有名な語彙の一つだった。何か出典となる作品やネットミームがあるわけではない。これは、純粋に、語彙大富豪というゲームの中で生み出された語彙なのだ。


「さあ、手番ターン佐野さの選手に回ります。冷血のルーラー・佐野選手、荒浜選手の『マッハ3.5で走る豚』をどう料理するのか!」


 言悟の対面に立つチェックシャツの男性は、相変わらずノートパソコンに目を落としたまま、対戦相手の顔を見ることもなく呟いた。


「実に下らない……」


 その手が一枚のカードを卓上に切る。大画面に表示された語彙は「品詞分解」だった。


「ああっ、佐野選手の語彙カードは『品詞分解』です! 審査員は瞬時に『通し』の判定! 品詞分解でバラバラにされました、『マッハ/3.5/で/走る/豚』!」

「まあ、『品詞分解』は胡乱うろん語彙の天敵ですからねえ。こうなることはお互い承知の上でしょうね」


 解説者の言う通り、「マッハ3.5で走る豚」を「品詞分解」された荒浜も、特にそのことに動じているようには見えず、まだまだ余裕に満ちた表情で片手を革ジャンのポケットに突っ込んでいた。佐野という男は、彼が胡乱うろん語彙の使い手であることを知った上で「品詞分解」をデッキに入れたのだろうし、荒浜のほうもまた、佐野がそういう手段で胡乱うろん語彙に対処してくることは百も承知だったのだろう。

 恐ろしい猛者もさ達だ、と言悟は思った。こんな連中と同じ卓に飛び込んで、自分は果たして勝つことなどできるのだろうか――。


「さあ、手番が一巡し、ターンプレイヤーは再び寂然選手! 場の『品詞分解』に対し、『仏罰の代行者』が唱える仏教語彙は何だ!?」


 会場の注目が再び尼僧に集まる。彼女は涼しい顔で一枚のカードを手にし、数珠をじゃらりと鳴らした。


「品詞分解されない単純語を出せばいいわけでありましょう。では、拙僧の語彙はこちらです、『さとり』」


 その太い指からぱさりとカードが卓上に落ちる。審査員の判定は当然に「通し」だった。


「場には『悟り』! さあ、黒崎選手、『悟り』にも勝るカードとは何か!」


 大画面に表示されたその語彙を見上げ、言悟は考える。四枚の手札の中で「悟り」に勝ちうる語彙カードはあるか――。


(『悟り』ってのは……つまり、宇宙の真理を知って仏陀ブッダになること……)


 自分の名前の漢字ということもあって、言悟はその意味を深入りして調べたことがあった。仏教の修行の究極到達点である「悟り」とは、あらゆる迷いを乗り越え、宇宙の真理と一体になることだ。その境地に達した者は、サンスクリット語で「悟った人」を意味する「仏陀ブッダ」と呼ばれる。仏教の開祖であるお釈迦様は、元はゴータマ・シッダールタという人間であったが、悟りを開いて「ブッダ」となったのだ。


(! そうか――「ブッダ」だ!)


 言悟の脳裏に直感が閃いた。亡き父の意志に導かれるかのように、言悟は一枚のカードを手札から引き抜く。


「『悟り』とはブッダになること。だったら、オレが出す語彙カードは『火の鳥』だ!」


 輪廻転生の宿命から解き放たれ、宇宙の真理と一体化する「悟り」という概念には、「火の鳥」の時空間超越性能をもってしても勝てるかどうか怪しい。だが、この詠唱なら……。


「『火の鳥』は手塚治虫先生のライフワーク。同じ手塚作品の『ブッダ』よりも多くの人に読まれている!」


 言悟がそう言い切った瞬間、寂然が僅かにハッと目を見開いたように見えた。


「おおっ、黒崎選手、手塚文脈に持ち込んだ! 審査員の判定は――異議チェック二票、通し三票! 手塚治虫のライフワーク『火の鳥』、通りました! お釈迦様の人生を描いた『ブッダ』も名作ではありますが、『火の鳥』の人気と知名度にはかなわない!」


 際どいところだった――。言悟はほっと胸を撫で下ろした。だが、このくらいで安心している余裕はない。すぐに下家のプレイヤーの攻撃が来る。


「場には『火の鳥』! 金色こんじきのエンチャンター・荒浜選手、今度はどんな胡乱うろん語彙が飛び出すのか!」


「『火の鳥』……『火の鳥』かよぉ。参ったなぁ、俺様も大好きなんだよ、あのシリーズ。さっすが手塚治虫のライフワークとか言われるだけあってよぉ、なんつーの? 人のごう? 的なやつをヒシヒシと感じるって言うかよぉー」


 相変わらず顎を突き出した喋り方で、荒浜は言悟の方を向いて言ってきた。思わず頷きそうになるが、しかし、彼は決して自分と漫画談義がしたいわけではないだろう。既に詠唱が始まっているのだ。


「まあ、つってもよぉ……どんな名作でも、読めなくなっちゃしょうがねぇよな。『とろろ芋の津波』に流されてよぉ」


 その腕が高々とカードを掲げ、卓上に叩きつける。瞬間、会場からわっと歓声が上がった。


「出たぁっ、『とろろ芋の津波』! 先程の『マッハ3.5の豚』と並ぶ胡乱うろん語彙の代表格だーっ! 審査員の判定は全員一致の『通し』! 不朽の名作『火の鳥』といえど、『とろろ芋の津波』に流されてはブックオフにすら引き取ってもらえない!」

「いやぁ、やはり差してましたねえ、『とろろ芋の津波』。意地でもエンチャント語彙で勝つというこだわりを感じますね」


 実況と審査員の語りを耳に捉えながら、言悟は呆然と大画面の表示を見上げていた。この「とろろ芋の津波」という意味不明ワードもまた、語彙大富豪というゲームの歴史の中で生み出され確立されてきた、由緒ある胡乱うろん語彙の一つ。大会に出る以上、こうした語彙カードと相まみえることもあると頭ではわかっていたつもりだったが、しかし、やはり、こんな変な語彙に負けたとあっては、名状しがたい悔しさが沸々と胸に沸いてくるのを抑えられない。

 本当に自分は勝てるのだろうか。この魔窟のような戦場で……。


手番ターンは冷血のルーラー・佐野選手! 場には『とろろ芋の津波』!」


「何が『とろろ芋の津波』だ……。本当に下らない」


 チェックシャツの男の手が、するりと卓上に一枚のカードを切る。


「出たぁっ! 佐野選手の語彙カードは『5文字縛り』! 先程の『品詞分解』に続き、またしても枠外からの攻撃! これは審査員も通さざるを得ない! さすがは佐野選手、『冷血のルーラー』と呼ばれるだけのことはありますねえ、阿仁川さん」

「『初代ドラクエの名前欄』より縛りが強いですからねえ。これを出されて辛いのは下家ですよ。都合よく5文字の語彙カードを持っているか、それともルールブレイク系の語彙で迎え撃つか……」


 だが、解説者の心配もどこ吹く風といった様子で、三巡目を迎えるターンプレイヤー、寂然は一枚のカードをすっと手にしていた。


「『5文字縛り』ですか……。では、拙僧はこの語彙を提出いたしますわ。『寺生まれ』」


 そのカードが卓に落とされた瞬間、客席から割れんばかりの喝采が上がる。


「おおぉっ、『て・ら・う・ま・れ』! 寂然選手、狙い澄ましたように5文字のカードを持っていた!」

「というか、狙い澄ましてたんでしょう。佐野のプレイングスタイルは彼女も熟知しているでしょうからねえ。彼が上家と分かった時点で……いやむしろ、この大会に彼が参加していると知った時点で、『品詞分解』や『5文字縛り』に耐えうる仏教語彙をデッキに揃えてたんじゃないですかね」


 澄ました顔で微かに頷く彼女の姿が、解説者の推察の正しさを証明しているようだった。


「さあ、手番ターンは初代語彙大富豪の息子、黒崎選手に移ります! 場には『寺生まれ』!」


 残った三枚の手札を握り、言悟は無意識に三人のプレイヤー達を見渡していた。誰も彼も自信に満ちた顔で飄々としているように見える。自分のようなガキなど眼中にもないのだ、と言わんばかりに――。


(寺生まれ……「寺生まれのTさん」か……!)


 どこからともなく現れては、「破ぁ!」の一言であらゆる心霊現象を解決する、ネットミームの最上級ネタ。火力要因の「仮面ライダーBLACK RX」と「火の鳥」を既に切ってしまった今、「Tさん」の神出鬼没の無敵ぶりに対抗することは難しい。

 だが、だからといって諦める訳にはいかない。百地コトハに約束してしまったのだから。彼女の分まで自分が勝ち上がると。


「オレのカードは『119』! Aエースが二枚と9が一枚で、21ブラックジャックだ!」


 意を決し、言悟はカードを卓に切った。亡き父が編み出した一枚、詠唱次第で無限の対応力を発揮するその語彙カードを。


「確かに『寺生まれのTさん』の話は有名……! だけど、『ブラックジャック』の方がよく読まれている!」


「おおっ、黒崎選手、『寺生まれ』を『ブラックジャック』との知名度勝負に引き込む詠唱だ! これは――」


 いけるか――と思った瞬間、ぞくり、と三人の対戦相手の視線が言悟の心を刺した。


(――ッ!)


 冷たい悪魔の手で心臓を鷲掴みにされたかのように。凍り付くような悪寒が、言悟の全身を襲う。


「審査員の判定は――通し二票、異議チェック三票! 黒崎選手の渾身の『119ブラックジャック』、通らない! 場には引き続き『寺生まれ』!」

「まぁ、ネットミームと漫画の知名度を比べてもしょうがないですからねえ。さっきの『火の鳥』VS『ブッダ』は同じ手塚漫画という軸があったから比べようがありましたが、まあ、それを通した直後ということもあって、審査員の判定も厳しくなったんでしょうね」

「黒崎選手、痛恨のバウンスです。手番ターンは荒浜選手へ――」


 いつの間にか自分の足が震えていることに言悟は気付いた。灰原老人と卓で向き合った時の緊張感とも違う、心身を震わせる底なしの戦慄。

 まだ、たった一ターン分のアドバンテージを失っただけだというのに。形勢はまだ戦える筈なのに――


(勝てる気が……しねえ……)


 一回戦よりも遥かに高い壁を感じる。新参者の侵入を阻む、歴戦の猛者達の高い壁を。

 三枚の手札を汗の滲む手で握り締め、言悟は呆然と他のプレイヤーの動きを眺めていることしかできなかった――。



=====語彙ワンポイント解説=====


【マッハ3.5で走る豚】(使用者:荒浜)

 現実の語彙大富豪本家鯖において、意味不明系エンチャントの代表格としてよく知られる語彙。作中でも説明がある通り、何か元ネタとなった作品やネットミームがあるわけではなく、純粋に語彙大富豪プレイヤーの悪乗り文化の中で生み出された語彙である。本家鯖において、こうしたエンチャント語彙は「胡乱うろん」という形容で表現されることが多く、カードメイキングの一流派として受け入れられている(尚「胡乱」とは「正体が確かでなく胡散臭い」という意味である)。

 この流派の第一人者として知られる某プレイヤーによると、胡乱エンチャントの本義は「元の語彙に足りないものを補う」ことにあるという。この「マッハ3.5で走る豚」の場合、基本的に鈍足・愚鈍なイメージがある「豚」という語彙に対し、「マッハ3.5で走る」というエンチャントを付加することで弱点を補っているのである。

 一方、こうしたエンチャントは語彙の弱点を増やすことにも繋がる諸刃の剣である。「マッハ3.5で走る豚」を相手にする側からすれば、「マッハ3.5で走る」の部分と「豚」の部分のいずれかに勝てばよいわけであるから、本来の「豚」にはなかった弱点がこれによって生まれてしまうということにもなる。もっとも、これは胡乱エンチャントに限ったことではなく、形容を増やせば増やすほど長所の裏返しで弱点も増えるというのは語彙大富豪におけるカードメイキングの宿命でもある。


【品詞分解】(使用者:佐野)

 語彙大富豪における「ルールの外から殴るカード」の代名詞の一つ。あらゆる複合語(複数の形態素に分けられる語)に勝ち、単純語(それ以上分けることのできない語)に勝てないというシンプルな性能を持つ。現実の語彙大富豪においても比較的よく見かけるカードではあるが、作中のように相手が胡乱エンチャントばかり使ってくるといったことは現実にはあまり起こらないため、場合によっては手札で完全に腐ってしまうリスクも秘めた一枚である。

 同様の「ルールの外から殴るカード」としては、同じく作中で佐野が使用している「5文字縛り」や、4文字を超える語彙に特効となる「初代ドラクエの名前欄」(ひらがな・カタカナ4文字までしか入力できず、また濁点や半濁点も1文字にカウントされる)などが有名。前者に関しては、「5文字縛り」という語彙自体が5文字であるため、自己矛盾に陥らないという点がポイントである。


【とろろ芋の津波】(使用者:荒浜)

 本家鯖において、「マッハ3.5の豚」と並ぶ胡乱エンチャント語彙の代表格として有名な一枚。ディザスター属性による汎用的攻撃力を有するため、「~豚」と比べても実戦での使用頻度はかなり高いが、ただの「津波」でなくわざわざとろろ芋にする必要がどこまであるのかは不明。

 この語彙に対するメタカードとして誕生した「白米と醤油を携えた巨人」は有名すぎるほど有名であり、セットで語られることも多い。

 この語彙の隆盛以降、「○○の津波」シリーズは本家鯖における定番ネタとして定着し、同じく定番語彙である「核」と融合させた「核の津波」をはじめ、多くの魔改造語彙が生み出されている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る