第5話 瞬殺!マスゴミ報道陣!

『我々は現在、先月発覚した枡込ますごみ市の連続殺人事件の被害者の一人、河合かわい爽子そうこさんの実家の前に来ています……。十七歳の高校生だった河合さんをはじめ、実に八人もの若い命が奪われたこの凄惨な事件。被害者は果たして、どんな高校生だったのでしょうか。あ、あちらの通行人の方にお尋ねしてみましょう。スミマセーン』


(個人情報保護のため音声を加工しています)

『爽子ちゃんはホントにね……近所の私らにも、元気よく挨拶をしてくれる、いい子でね……。こんなことになるなんて信じられないですよ……』

『ご家族の仲は良かったんでしょうか』

『ええ、そりゃあもうね、河合さんちは、ご主人も奥さんもホント、爽子ちゃんを可愛がっててねえ……。特にあのおうちは一人っ子でしょ、目に入れても痛くないぐらいの可愛がりようだったと思いますよ。だから、事件があって以来、ご夫婦ともすっかり塞ぎ込んじゃってねえ。奥さんは寝込んでるし、ご主人もずっと会社に出てないそうですよ』


 ……。


『今の方のお話からも、河合爽子さんがご両親のもとで大事に育てられてきたことが伺えます。卒業アルバムでは、将来の夢はパティシエと綴っていた河合さん。卒業時の寄せ書きからも、多くのクラスメートが彼女を慕っていたことがわかります。……あ、あちらのお宅ですね。被害者の河合さんのご実家が見えてきました』


『ん? これは……。玄関に何か、張り紙がしてあるように見えますね。カメラさん、ズームしてもらえますか。……えー、直筆の張り紙ですね。ご家族が書かれたもののようです。読み上げます。えー、私達は深い悲しみの渦中にあります……感情が落ち着くまで、取材をお受けすることはできません……娘の実名や顔写真を報道することも、どうか控えて頂けますと幸いです……と書かれております。河合さんご家族の悲痛な心の叫びを綴った張り紙です。……これを書かれたご家族は、今もこちらのお宅の中にいらっしゃるのでしょうか。チャイムを鳴らしてみましょう――あ、いや、足音が!』


『アンタら! 取材はやめてくれって書いてるだろうが!』

『あっ。ご主人でいらっしゃいますか』

『帰ってくれ! カメラ止めて!』

『うわっ、何を――』

『迷惑なんだよ! 妻はお前らのせいで寝込んじまった! これ以上俺達を苦しめないでくれ!』

『す、すごい剣幕です。ご主人がすごい勢いで怒っておられます。一旦撤収しましょう!』


 ……。


『河合さんのご主人の激昂げっこうぶりは凄まじいものでした。あれだけの凄惨な事件。被害者遺族の心の傷は計り知れないものがあるでしょう。我々は引き続き、この事件の真相の究明のため、報道の使命にかけて――あっ、アレは何だぁっ!?』


 瞬殺!!

 ロケットランチャー仮面の構えたロケットランチャーが火を噴き、被害者の尊厳と遺族の生活を引っ掻き回したマスゴミの報道陣が、テレビ局が、新聞社が、雑誌編集部が、一瞬にして爆発四散する!!


「これにて一件落着!」


 遺族達を苦しめるものは最早何もなかった。呆然とする河合夫妻に見送られ、ロケットランチャー仮面は夕陽の中に去ってゆく。



  空気かぜを引き裂く号砲は 勝利の凱歌か懺悔ざんげ瞬間とき

  弱者甚振いたぶる非道を憎み 硝煙しょうえん引き連れ一人渡世とせ

  おとこ ロケラン 何処へ行く!

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