第33話 大天使ガブリエル
赤と黒と白の三色の光がガブリエルに殺到した。まさに、光の狂乱。
天空から悠長に物探しもできなくさせて、地上に落とすつもりだ。
警戒をしておらず、油断をしていたのか思った以上に損傷を与えたようだ。
落下してきたのである。
落下した大きな音は大地を抉るほどで、そこは大きく町を外れた場所だった。
急ぎ向かい様子を見ると、落ちたことでの損壊は見受けられなかった。
物理的な物に対しては、かなりの頑丈さを誇るのかもしれない。
俺たちは有無を言わせず、奴に息を吐く暇も与えず、攻撃を繰り返した。
リリーのフェアリーランスは貫いたかのように見せて、エルのインフェルノは
周囲も含めて焼き尽くし、俺のダークボルトは全てを消失させた。
……はずだった。
ゆっくりと起き上がる様子から、攻撃を自ら防いだというよりは何かに
守られているようにも見える。
立ち上がった姿は、全身から湯気のような水蒸気が立ち登るように見える。
まだ俯いたままで表情は掴めない。攻撃をする素振りも見せないことから
続けて放とうとする矢先、目の前にガブリエルが迫る。
「何!」
完全に予想を覆す動きだ。
ガブリエルの右腕から繰り出される拳の勢いは、俺の腹に目掛けて突き刺さろうとしている。
俺は辛うじて体を左側にひねることで、触れるか触れない距離感で空に拳を誘導した。
次に迫っていたのは、俺の右側から迫る左ストレートだ。
顔を左側に倒すことでこの拳も避けると同時に、右手から掌底を繰り出す。
ところが、掌底が触れると同時に放つダークボルトは、空を切り裂いた。
あのタイミングで避けるとは、尋常ではない。
今回の動きその物は転移に近かった。すでに背後にいたからだ。
背後から迫る拳は貫く意思が具現化したかのように、鋭いランスのごとく右脇腹を突き刺す。
避けきれず表面を切り裂く。
血飛沫は飛び散り、あたりは凄惨な状況に見える物の見た目以上の損傷はない。
ガブリエルが振り抜いた瞬間に対峙して、振り抜いた腕を俺の左腕でつかみすかさず
ダークボルトを右手より放つ。
さすがに避け切れる物ではなかったのか、左わきばらを奴も損傷した。
顔を歪めはしても何事もなかったようにすぐに腕を振り解き、正面で互いに対峙する。
この間わずか数秒での出来事だ。
肉弾戦を主体にして戦う天使は、今回が初めてかもしれない。
俺とガブリエルの接近戦ゆえに、リリーもエルも手出しができずにいる。
それも、奴の狙いなのかもしれない。
再び起きた。ガブリエルの瞬間転移というべき間合いの取り方だ。
今回はもろに腹に直撃を食らってしまい、体がこの字に曲がる。
その状態を見逃すはずもなく奴は、左右から休む間もなく怒涛の勢いでパンチを繰り出す。
腹がサンドバック状態となってしまい体が宙に浮くほどの状態だ。
至近距離から俺は、必死にダークボルトを放つ。
ガブリエルは致命的なミスを犯していた。
なぜ気がつかなかったのか奴の左肩から腕は消え失せた。俺のダークボルトが直撃したのである。
先ほどまでの動きなら避けれたはずが、今になって避けられないのは、何か理由があるのかもしれない。
俺自身は、ボディーブローの応酬でのダメージはでかなり蓄積してしまった。
瞬時に後退したガブリエルは、瞬く間に修復してしまう。
あの様相はまるでトカゲの尻尾再生の超高速版だ。
再生途中を待つ必要もなく後退したタイミングで、エルとリリーは烈火のごとく魔法を放ち、攻撃の手を緩めない。
さすがにガブリエルも面食らったのか、シールドを展開して踏ん張る。
何やら再生中は制限があるのかもしれない。
俺もこの攻撃に合わせて、ダークボルトをすかさず放つ。
「ダークボルト!」
いつもなら、避けるはずが今回はその場に止まる。
シールドの防御など気に止めず打ち砕き、再生中の左腕ごと左半身を黒い雷で消滅させた。
「グガァァ!」
見た目は天使であるにもかかわらず、ここまでくると魔獣その物だ。
今度は唐突に光とともに天空より現れた者がいた。
――ガブリエルだ。
どういうことなのか、二体目がいる。
急ぎ奴にも攻撃を当てても、シールドなのか空間ごと歪み当たらない。
得体のしれないもう一人は、半透明状態になると地上にいるガブリエルと融合してしまう。
全身から水蒸気が立ち込めて、降臨した時の再び元の状態にもどってしまう。
今言えることは、何度でもヤルしかない。
敗北はそのまま目的を達成できないことになるからだ。今ここでは倒れられない。
倒れるのは、女神を全員殺してからだ。
俺たち三人で、各が得意とする攻撃を雨のごとく降り注ぐ。
どこまで耐えるのかいつまで持たせる気なのか、今はまだわからない。
そして今目の前にあるのは、上半身を失ったまま立ち尽くすガブリエルだ。
おもむろに上空を見上げると再び降臨してくる。
二回目は少し様子が異なるようだ。先の者より明らかに”薄い”
俺たちは待つ必要もないことから、降臨してくる相手と半壊した体の両方に
攻撃を撃ち続けた。融合したのち連続して降臨が始まる。
三回目だ。
予想した通り、さらに薄い存在で今度は体の半分程度の大きさまで縮小化した
半透明のガブリエルが降臨してくる。こうなると自動化されているのではと
思いたくもなる。
俺たちは攻撃の手を緩めるどころか、激しくなる一方だ。
ガブリエルの膝よりしたしか残っていない。それでもまた四回目の降臨が始まる。
今度は形すら維持できず、卵形の光でしかない。
その光は再びガブリエルと融合しはじめた……。
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