その7 諷喩(アレゴリー)
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「12時まで魔法は解けない」――この言葉を口にするのも今夜が最後。劇場の片隅から駆け上がったシンデレラガールが、 ガラスの靴を脱ぐときが来たのだ。
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今回紹介する「
アイドルを星に、顔の怖い男を野獣に、太った男を豚に、難解な話を連立線形微分方程式に……。ある物事を別の物事に
しかし、言うまでもなく、物書きの仕事は一文だけを
例えば、あるアイドルを夜空に輝く星に
このように、ある一つの比喩を起点として、それと同系統の比喩を続けざまに繰り出し、
実は、これまでに見てきた各種の比喩の例文の中には、この
例えば、
「
という文章は、前田敦子を一度「星(恒星)」に
「12時まで魔法は解けない。ガラスの靴は脱ぎません」
とは、SKE48を支えたダブルセンターの一角、松井玲奈が劇場公演での名乗りに使っていたキャッチフレーズでした。
デビュー当初から最年少センターとして持て
冒頭の文の「ガラスの靴を脱ぐときが来たのだ」という一節は、このフレーズを下敷きにし、シンデレラに
ところで、SKE48の一期生にはシンデレラだけではなく白雪姫もいました。「名古屋の
つまり、
18世紀にクレヴィエが
その点、
「玲奈ちゃんと私は対照的だから、よく玲奈ちゃんが月で私が太陽みたいな存在って
と述べた松井珠理奈は、まことに優れた
「月は、太陽の太陽になった。」
「かすみ草は、太陽の太陽になった。」
とか、
「シンデレラは、太陽の太陽になった。」
という文であったらどうでしょうか。松井玲奈は確かに「SKEのかすみ草」であり「シンデレラ」でもありましたが、彼女がいかに多くの肩書きを持っていようとも、ここには「月」しか入りようがないことがよくわかると思います。
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以下、実践編です。
【実践例1】
冷たい秋の風が彼の武骨な顔面を刺す。手すりから身を乗り出して覗き込んだ先は真っ白な路面だった。無人自動車が行き交う高層道路。我が国の地上交通のすべてを手中に収める、
(『48million 〜アイドル防災都市戦記〜』 第6話「リストラクション」)
この
続く一文では、その「主君」の君臨する領域が「王国」と呼ばれています。同系統の
なお、この類似構造を逆用すれば、文字通りの王国から国民が追放される話を、会社からのリストラに
【実践例2】
「その子とあなたじゃ、立場が全然違うでしょ」
クリスはさらりとした口調でカスガのことを切って捨てた。チクサはそんなことをなるべく意識したくはなかったが、しかし彼女の言いたいことは否が応でも理解できてしまう。
親友を
(『48million 〜アイドル防災都市戦記〜』 第16話「伝説のアイドル」)
ここでは、国を代表するトップスターの地位まで上り詰めた芸能人が、ごく平凡なアイドルとして芸能生活を終えた親友のことを「
古くから人にとって身近な存在であった「山」は、同系統の比喩を連ねやすい題材です。もし、トップアイドルを目指したが夢半ばで挫折した……という人物がいれば、その人生は「五合目」や「遭難」といった言葉で表せそうです。また、トップスターが「頂上」への「登頂」を果たすにあたり、その「登山」を親身に手伝ってくれた人物がいるなら、その人を「シェルパ」などと
【実践例3】
「試用期間の趣旨とやらは、それだけか」
「潰れろ」
辣腕弁護士の口から、冷ややかな言葉が重たい響きで発せられたのを、志津は確かに聞いた。
「違法企業が一人前の綺麗事を叩くな。何が見合いだ。貴様のしたことは、嫁入り前の娘のもとに
(『ブラック企業をぶちのめせ!』 第5話「お見合い期間」)
中小ブラック企業の経営者は、よく従業員の試用期間をお見合いに
この場面では、ブラック企業の天敵である白山弁護士が、この
経営者の行為を単に
【実践例4】
「断じて容赦などせん。叩き潰してやる」
(『ブラック企業をぶちのめせ!』 第26話「労働基準監督官」)
引き続き白山弁護士の登場です。「
人を動物に
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以下、演習編です。お時間のある方はコメント欄にてどうぞ。
【演習1】
人間の死や引退、組織の解散など、何らかの物事の
【演習2】
ある人物を何らかの生き物に
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