第10話 はたらく魔王ちゃんさま!
「君、悪いけど別室で話がしたいから来てくれるかな?」
この店の店長らしき男は真面目な口調でそう話した。これは絶対に怒られる雰囲気だ。
「え…?あ、はい。」
私まだ試食を爆食してないけど、どうしてだぁぁ…!?
そして別室に連れて来られた魔王ちゃん。
「今から大事なお話をするからよく聞いてくれ」
この店の店長らしき男は魔王ちゃんを凝視する。
「へほ…!?」
も、もしかして私が魔王だから試食はダメなのか…!?
「まあ、あれだよ。君、うちの店で働く気はないか?」
この店の店長らしき男からは意外な言葉が飛び出たのだった。
「…………………え?」
魔王ちゃんも何がなんだか分からなかった。
「君が美味しそうに試食をすると他のお客様がその食品をたくさん買ってくれるんだよぉぉぉ!!! それに君は可愛いぃぃ!!!」
この店の店長らしき男は先ほどまでの真面目な口調から急にうるさいおっさんに変わった。
「君はただ食品を食べてくれるだけで良いんだ!頼むぅぅぅ!うちで働いてくれぇぇぇ!!!」
必死に魔王ちゃんに頼み込むおっさんだった。
「だけど、働けない事情が…」
魔王ちゃんは自分を魔王だということを隠して生きているために誰にも話せないのだ。
「私は君が何者かなんて気にしないよ。そして君が何者かなんて聞かないよ。私には君がどうしても悪いことをするような奴には見えないんだ。」
おっさんは真面目な口調でそう語った。
「………………………」
どうしよう。悪いことを散々してきたんだけどぉぉぉ…
「うーん…」
まあ食べ物には困らなさそうだし、お金も貰えるからやってみようかな。
「やりますぅ!」
魔王ちゃんは元気良くやると宣言した。
「ありがとう、その言葉を待っていたぁ!!!」
おっさんは嬉しそうだった。
「では、さっそく試食してきてくれ。」
と話す頃にはもうとっくに魔王ちゃんは試食コーナーで試食していた。
「おいおいおいおい! こんなおいしい仕事あっていいのかよぉ…!? 最高やんかぁ!」
魔王ちゃんは試食コーナーで爆食いしていた。
「さあオレンジを食べようか! いただきまーす!」
魔王ちゃんは大きく口を開けてオレンジを食べた。
「美味い! 口の中でオレンジのツブツブ1つ1つから果汁が染み出てくる! そしてちょうど良い酸味!! 最高だぁ」
魔王ちゃんの試食に連れて客がどんどんオレンジを買っていく。魔王ちゃんは色々試食した後にスーパーの今日の営業は終了した。
「今日は想像以上に店が繁盛したぁ! 次の日もよろしく頼むね!」
店長は魔王ちゃんに対してそう言った。
「もちろんです!店長さん!」
こんなおいしい仕事辞められる訳ないよねぇ!デュフフフ!
~つづく~
悪さをしたい魔王ちゃんと悪さを阻止したい勇者ちゃん 夢日記ノベリスト @supesuzu
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