第8話 魔王ちゃん、死す

「えええええええええ………なんなんだアイツは…!?」


魔王ちゃんは激しく動揺していた。



「と、とにかくだ、ここから一刻でも早く離れた方が良いということだけは、…!」


魔王ちゃんは勇者ちゃんにバレない慎重に木を伝って逃げていった。



「な、なんなんだこの全身が震えるような寒気は…!?私の気のせいかも知れないがと目が合ったような気がする…そして今は悪魔に心臓でも握られていらるような気分だ…」


魔王ちゃんは魔王のくせに悪魔に心臓を握られているようだと語ったのだった。魔王ちゃんは相当焦っていたようだ。



「何よりも殺気のようなものを肌でビンビンと感じることが出来た…」


これは今まで生温い生活を送ってきた魔王ちゃんが初めて体験した感覚だったのだ。



「私には分かるんだ…悔しいことに私じゃには敵わない…!逃げなくては…!!」


魔王ちゃんは声を押し殺すように半べそかきながらひたすら逃げた。



「逃げても無駄だよ?魔王ちゃん♥️」


魔王ちゃんはゆっくりとうしろを振り向いた。肩ぐらいのところに勇者ちゃんの顔があったのだった。



「うわああああああああああ!!!!!」


魔王ちゃんは足を踏み外して木の上から落ちた。



「イタタタタ…」


魔王ちゃんは振り返ると勇者ちゃんが目の前に立っていた。



「魔王ちゃん、もうここまでね。」


勇者ちゃんはゆっくりと歩いて魔王ちゃんのところまで近づいてくる。



「嫌だああああ!来るなああああ!」


これが魔王ちゃんの心からの叫びだった。魔王ちゃんも後退りしながら勇者ちゃんから距離を取ろうとした。



「あ…」


魔王ちゃんはとうとう後ろに逃げ場が無いことに気付いた。下からは川の流れるような音が聞こえてきたのだった。そこは崖になっていたのだ。



「うわあああああああん!!!!!!!!」


魔王ちゃんは、もうどうしようもない現状にとうとう小さな子供のように泣き始めてしまった。圧倒的な力の前には、もはやどうすることも出来ないからだ。



「………………………」


勇者ちゃんは魔王ちゃんに喋る言葉が見つからなかった。とうとう勇者ちゃんは魔王ちゃんに触れることが出来る距離まで近付いた。



「あ…」


勇者ちゃんの顔が魔王ちゃんの顔の目の前にあった。そして勇者ちゃんは魔王ちゃんの体に触れた。この時、魔王ちゃんは永遠に時が止まったような感覚がした。



「さようなら魔王ちゃん。」


勇者ちゃんは魔王ちゃんに耳元でそう囁き、震える魔王ちゃんを優しく崖下へと突き落とした。



「あああああああああああああれえええええええええええ!!!!!!!」


それが魔王ちゃんの最後の断末魔だった。



ジャッポン!


魔王ちゃんは水の中へと落ちた。



「ごめんね魔王ちゃん…」


最後に勇者ちゃんは哀しげにそう言ったのだった。果たして魔王ちゃんの運命は…!? 


ということで次回から魔王ちゃん追悼編ということで過去の話に入っていきます。



~つづく~

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