第3話 勇者ちゃん登場

「貴様、一体何者なんだ!?」

 魔王ちゃんは目が点になっていた。


「よくぞ聞いてくれましたね! 私は悪を成敗する正義の味方、勇者ちゃんです!」

 こうして魔王ちゃんと勇者ちゃんは初対面となったのだった。


「ふっ…。勇者だが何だが知らないが、お前ごときじゃこの魔王ちゃん様には傷1つ付けられやしない!」

「きみが公園で遊んでいた子供達を泣かしたのは許せないわ! 大人げないやつね!  覚悟しなさい!」

「おい、お前!」

「な、なによ魔王ちゃん!」

「この魔王ちゃん様が泣かせたのは公園のルールを守らずボールで遊んでいたガキ共だけだ! それのどこがおかしいというのだ!」

「えっ? そうなの?」

 勇者ちゃんは目が点になっていた。


「そ、そうだ! ワレが何か間違ったことをしたとでも言うのか? あ?」

「と、途中から来たからそんなの私には分からないよ!」

 勇者ちゃんは赤面していた。


「ならとっととお家へ帰れ!」

「だかしかし、魔王ちゃん! あなたは私に恥をかかせた! それは立派な悪いこと! だから成敗してやる!」

「ふざけんな! それじゃただの逆ギレじゃないか!」


私はまだやられる訳にはいかないんだ! ガキ共が食料を持ってくるまでは…!

「お菓子を持って参りました!」

 近所の子供達がお菓子を持って戻ってきた。


「でかしたぞガキ共! じゃあ魔王ちゃん様はこれで帰らせていただきやーす。じゃね!」

 魔王ちゃんはダッシュでアジトへ向かった。


「ちょ、魔王ちゃん待って!」

 勇者ちゃんは現状が飲み込めずアワアワしている。


「君たち、魔王ちゃんになんでお菓子なんかを渡したの?」

「ボール遊びを学校の先生に言いつけない変わりにお菓子をあげるっていう取引をしたんだよ」

「魔王ちゃんもなかなかズル賢いわね。ルールに則って上手くお菓子をゲットしたということか。でも、なんか恥をかかされたしムカつくから叩いちゃう!」

 勇者ちゃんは急いで魔王ちゃんの後を追いかける。



……………………………………



「食料ゲット~! ウッホホーイ!」

 魔王ちゃんは今喜びの絶頂だった。久しぶりの食料にありつけるからだ。


「アジトまでもう少しだ! そこの角を曲がれば!」

 魔王ちゃんは角を曲がった瞬間、ビックリ仰天した。


「ゼェ…。ハァ…。遅かったじゃない…。魔王ちゃん…」

 勇者ちゃんが汗だくでボロ小屋の前に立っていたのだ


「な、なんでお前がアジトの場所を知っているのだ!?」

「前から…。魔王ちゃんをずっと見ていたから…。ゼェ…。ハァ…」

「ええ…。なんで…?」


「そんなことはどうでもいいじゃない! 食らえぇ! 勇者タックル!」

「グハッ…!!!」

 魔王ちゃんは勇者にタックルを食らい気絶さして目を回してしまった。


「これで一件落着と。お菓子は子供達に返すからね。あと魔王ちゃん、もう悪いことしないでね!」

 勇者ちゃんはそのままお菓子を持って去っていった。魔王ちゃんの安否はいかに…!?


~つづく~

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