2 証拠隠滅
戦いが終わり、背中を押される目的も無くなった今、初めての殺人の代償は顕著に現れ、しばらく吐き気が止まらなかった。
悔いは残る。
悔いしか残らない。
分かっていた。
冬野を死なせるよりはまだマシな選択だっただけで、結局碌でもない選択肢から比較的マシな物を選んだだけなのだから。
こうして自己嫌悪で死にそうになるのは分かっていた。
だけどいつまでもそうしている訳にはいかなくて。
しばらくの間、まともに動けるようになるまで体力と肉体の回復を図った後、やれる事を一つ一つやっていく事にした。
とにかくまずは証拠隠滅を図らなければならない。
最悪な形で冬野を助ける事ができた訳だが、眷属化した隼人が逮捕されて冬野にまで矛先が向く様な事がないようにしなければならない。捕まる訳にはいかない。
どうすればいいのかは分からなかったけど、茂みに隠したり穴を掘って埋めるというのはよくニュースになっている通り発見されるリスクが高いように思えて。結果的に導き出した結論は呪術で跡形も無く消し飛ばす事で、それが最もリスクの低いやり方だと思った。
そう思って実行した。
実行しながら、その倫理的にあまりに惨く碌でもないやり方に泣きだしそうになったけど、それでもなんとかやりきる事が出来た。
間違いなく一生物のトラウマになるだろうが。
そしてやがて冬野の元へと戻るともう既に冬野は目を覚ましていて、ベンチで座って隼人の事を待っていた。
それ程強い呪術ではなかったので、打倒なタイミングだと思う。
「……終わったよ、冬野」
そう言う隼人の表情は本当に酷い物だったのだろう。
自分の命が救われた。そんな状況にも関わらず冬野は酷く心配そうな表情を向けてくる。
「……大丈夫? ……じゃないよね」
「……ッ」
当然、大丈夫、なんて言葉は出てこなくて。
「俺……俺は……ッ」
そこでもう限界が来て、泣き崩れた。
そんな隼人を冬野は自身の胸に抱きよせる。
涙が止まるまで。
ずっとそうしてくれていた。
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