第6話 寂しい・・・
ベッドで横になる
どうしても
本当に眠らなくて大丈夫なのか、という疑問もそうだが、守られている自分が呑気に眠るのは申し訳ないような気がしてならない。
それと同時に、また襲われるんじゃないか、という恐怖心も睡眠を妨げていた。
芽愛は布団をギュッと握りしめる。
「グゥー!」
そんな芽愛の悩みを知る由もなく、ベッドの横に敷いた布団で、
あまりにも気持ちよく眠る鹿島を見て、少し不愉快な気持ちになる。
「…………ちょっといいかしら」
突然リビングから声が聞こえた。
微かだが、間違いなく
壁の向こう側には、舞が寝るのに使っているソファーの場所なのだ。
芽愛は息を殺してリビングの方へ耳を傾けた。
〇
部屋の明かりは消え、ただ1人恭兵だけが胡座をかいて壁に寄りかかっていた。
アニメの世界だからか、月明かりつで部屋の中が薄っすらと見えるくらい明るい。
恭兵が左を見ると、ソファーで横になる舞。
(これじゃ足りない)
「……ナビゲーター、ちょっといいか?」
恭兵は周りに配慮して小声で言った。
〈はい〉
「……マシンピストルの場合はそれくらいポイントを消費するんだ? それとライフルにランチャーを付けた複合タイプの銃を出す時も、あと照準器とかも一緒に?」
〈マシンピストルの場合は、ハンドガン同様1ポイントを消費して召喚が出来ます。ただし、複合タイプの銃の場合は、3ポイントを消費します。照準器などに関してはオーダー時に申告すればポイントは消費しません〉
「……なるほどね」
恭兵はナビゲーターウォッチに表示されている残ポイントを見る。
ランプが点灯しているのは4つだ。
「……試してみるか、オーダー――いや待てよ。俺の知ってる車を召喚できるってことは、銃も俺が知っている物を召喚できる、ってことだよな?」
〈その通りです〉
「……それなら、オーダー、グロック18ウィザードカスタム」
〈グロック18ウィザードカスタム、召喚します〉
光と共に恭兵の手元に1挺の拳銃が現れた。
グロック18 ウィザードカスタム。
恭兵が書いていたノベルの主人公のパートナーが使う銃だ。
スライドから銃身が5センチほど伸びており、先端付近の上部には、反動による跳ね上がりを抑えるための、通称コンペンセイターと呼ばれる穴が開いていた。
更に反動を抑えるために、銃身前部には重りのバレルウエイトも装着。コンペンセイターによるガスも排出できるようにバレルウエイトの上部は開いている。
元々グロック18Cをベースにしていた設定なので、本来コンペンセイターの位置に合わせて開口したスライド上部がそのままになっているのは恭兵のこだわりだ。
毎分1000発近く連射できるマシンピストルということで、出来るだけコントロールができるように、とカスタムしたのだが、あくまで想像なので、どこまで実用性があるか不明なのが、恭兵本人もマニアとして未だに不満なところだ。
自分が――想像して――カスタムした拳銃を手にして上機嫌になった恭兵。
もう少し時間が経てば今のベレッタを消して、別の銃を召喚するつもりだ。
そんな上機嫌も時間が経つうちに徐々に消えていった。
確かにスキルで眠気は全く感じないが、それでもこの感情だけが全然消えない。
退屈だ。
何もしない――一応警戒はしているが――のは面白くない。
更に時間が経ち、また別の感情が芽生え始める。
寂しい。
何時も話し相手になってくれる
考えてみれば、自分は利輝を頼ってばかり、実家を出てから全く成長していないような気がする。
そんなことを考えているうちに、つくづく思い知らされる。
自分は駄目人間なのだと。
誰かに認めてもらおうと頑張っていたつもりだが、結果が出なければやはり意味がない。
このままミッションをこなしても無意味なのではとさえ思えてくる。
モヤモヤが募り、このままあの世に逝ってもいいのでは、とさえ考えていた時だ。
「ちょっといいかしら?」
突然、話かけてきた舞。
いつの間にか恭兵の前に立っている。
不意を突かれた恭兵は思わず「おっ‼」と間の抜けた声を上げた。
「なっ、寝てたのでは?」
舞は返事をすることなく、恭兵の横に座った。
(なんだ……?)
状況が分からず困惑する恭兵。
「あなた、家族と上手くいっていないのね?」
突然の質問に恭兵は驚いた。
「どうしてそんなことを?」
「学校で聞いたの、あなたが両親から大切にされていないこと……」
(そう言えば言ってたな兄貴が)
「あなたが人殺しになったのもそれが原因なんでしょ?」
(…………はっ⁉)
別に恭兵が人を撃っているのは、殺しが好きだからではない。芽愛を守るためにやっているのだ。
「あのね。それは芽愛ちゃんを守る為にしてる訳で……」
「その割にはノリノリに見えたけど?」
「それは相手が暴力団や
「同じ人殺しでしょ? それにあなたは、自分のお兄さんも殺した」
「……」
理由も知らずに何でもかんでも一緒にするな、と言い返したいが、アニメキャラとはいえ、人を殺している事実は変わらない……ような気がする。
それでもやむを得ない事情は分かってほしいが、説得できる自信がない。
ギャグアニメなら何処かから取り出したハンカチに思いっきり噛みついて引き裂こうとしているところだ。
「俺の家庭環境なんか聞いても面白くないですよ?」
「一応これでも教育者よ。間違ったところを正すのが仕事」
(よく言うよ……)
これは話さないと納得しないタイプだ、と悟った恭兵は、渋々自分の家庭環境を舞に話し始める。
「アンタの言う通り、両親とは上手くいっていない。俺は兄貴と違って勉強も出来ないし、何か才能があるわけでもないから……」
「どういうこと?」
恭兵は家族事情について詳しく話し始めた。
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