第10話 マシン・GKS8
駐車場の前で
恭兵たちを抑えたいけど人で不足だ。
「おい、どうだ」
2人が声のする方へ向くと、新たにアロハシャツのような絵柄のシャツを着たチンピラが3人現れた。
「お前たち無事か?」
銀髪の組員が訊いた。
「向こうの駐車場に居たんですけど、銃声が聞こえたんでここまで」
「お前ら
「あります」
そう言ってチンピラたちはそれぞれ懐の拳銃を見せる。
「でかしたぞお前ら! 一斉にあのコンパクトカーに向けて撃ちまくれ、俺がその隙に近づいて奴らに――」
近づいて仕留める、と言いかけたその時、恭兵の声に遮られた。
「よし! オーダー、マシンGKS8!」
と、男の声が聞こえたと思ったら今度は「え⁉」と叫ぶ2人の女の声。
「なんだ?」
組員2人が首を傾げていると、今度は男の声で「後ろに乗って」と言った後に車のドアを開閉する音が聞こえた。それも複数だ
「おい、まさか俺たちの車開けたのか⁉」
あのコンパクトカーはタイヤがパンクしているので使えない。自分たちの車は当然何もしていないが、カギは掛けてあるので開かないはずだ。
だが、確かにドアを開閉する音が聞こえた。
「早く見てこい!」
「はい!」
3人のチンピラが気合の入った返事を返すと、チンピラたちが一斉に駐車場へ向けて銃を構え――そして固まった。
「おい、何やってんだお前ら⁉」
「あのスポーツカーはなんですか?」
「は?」
(何を言っているんだこいつ?)
駐車場にある車は2台だけだ。
銀髪の組員が駐車場を覗くと自分たちが乗って来た車と理事長のコンパクトカー。
そして、自分たちの方に向く……スポーツカー。
「おい、あんな車さっきまでなかったぞ⁉」
さっき恭兵のリーンバック弾を受けた組員も駐車場を見て声を上げた。
〇
時間は遡り。
「よし! オーダー、マシンGKS8!」
するとナビゲーターウォッチのディスプレイにワイヤーフレーム状の車が表示された。
〈GKS8。召喚します〉
すると、恭兵たちの側に1台のスポーツカーが現れた。
「え⁉」
芽愛と舞が突然現れたスポーツカーに目を丸くした。
マシン・GKS8。
ベースは、ランサーエボリューション
ボディーカラーは黒だが、マシンSKN1と違って、つや消しの無地。
ホイールはシルバーの6スポークホイール。前席の屋根にはサンルーフが付けられている。
見た目は殆ど普通の車だが、勿論この車にもガジェットが取り付けられている。
「後ろに乗って」
恭兵は
「ところでこの車、何処から出したの?」
「それは後で」
舞の質問に答える前に恭兵が一度ショットガンを助手席に置き、GKS8のセルを回した。しかしエンジンは掛からない。
恭兵はディスプレイに表示されたメニュー画面を左に何回もスクロールすると、テンキー入力の画面に変わった。
(えっと……確か4月2日だから2040で1989年だから……)
パスワードを入力すると、その間に正面には男が3人銃を向けながら固まっている。
「早くしてください恭兵さん!」
「慌てない、慌てない」
パスワードを入力して「ENTER」を押すと、ディスプレイに「SYSTEM ONLINE」と表示されエンジンが始動。
恭兵はヘッドライトを点灯させ、チンピラや組員を照らした。
「撃て!」
銀髪の組員が叫ぶと組員やチンピラが一斉に銃撃。
「危ない!」
舞は隣に座る芽愛の抱きしめ、庇うようにその場に伏せた。
「ご心配なく、防弾ですから」
「え? ――ホントだ」
続いて恭兵はハンドブレーキのレバーの横にあるドリンクホルダーの蓋を開けた。
しかし、そこにあったのはドリンクホルダーではなく、色んなボタン。ガジェットのコントロールパネルだ。
「シートベルトを!」
恭兵の呼びかけに芽愛と舞が息ピッタリにそれぞれシートベルトを掛ける。
「行くぞ!」
恭兵はギアを
「オマケ」
そう言うと恭兵はガジェットのボタンから「GAS‐R」のボタンを押した。
すると、GKS8の後部から白煙が噴射された。
組員たちは迫りくるGKS8を避けることが出来たが、GKS8の後部からの白煙が組員たちを襲った。
「何だこれ――ゴホ!」
その場に居た5人が一斉に涙を流しながら咳き込み始めた。
煙の正体は催涙ガスだ。
時間稼ぎに恭兵が巻いたのだ。
「おい待て――ゴホ、ゴホ!」
恭兵たちを追いかけたいが、催涙ガスのせいで目は沁みて涙は止まらず、同時に咳が止まらない。
とても追跡が出来る状況ではなく、まんまと恭兵たちを逃がしてしまった。
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