第8話 護衛
理事長室を後にした
理事長室から昇降口までは、割と近いが、同時に敵に出くわす可能性も高い。
恭兵はライフルを構え、何処から現れるか分からない敵に警戒している。
すると恭兵たちの正面から拳銃を持った組員が現れ、恭兵は透かさず引き金を引き組員を狙撃。
倒した組員を無視して先へ急ぐ。
「ねぇ、一体何がどうなっているの?」
状況を理解できていない
「
「あなたも男ですよね?」
「俺は――」
「――恭兵さんは例外よ、お母さん」
「……。そう……」
さすがに3回目なので芽愛が恭兵の代わりにツッコを入れた。
その恭兵は嬉しいような悲しいような複雑な思いがあったが。
「でも、どうして芽愛を狙うの⁉」
「私もよく分からないけど――って言うか恭兵さん。危うく初めて奪われるところでしたよ⁉」
「初めて?」
「私の……バ、バージンを……なぜかみんなが狙っているの」
「どうして娘の処女を⁉」
「俺もよく分からないけど、本当――隠れろ!」
恭兵が叫ぶと、芽愛と舞は近くのトイレの出入口に避難し、その間に恭兵のライフルで狙撃。組員を倒した。
「行こう」
恭兵が呼びかけると芽愛と舞が後に続いた。
そこで恭兵はある違和感に気づく。他の教職員が見当たらないのだ。
男の職員が居ないのは良いが、それでも女性の職員も居ないのが気になる。
「そう言えば、他の教職員は?」
「全員帰らせました。ただ、男性職員が何人か……」
「残っている訳ねっ!」
恭兵は素早くライフルを構え、鉄パイプを握る男の足を撃ち抜いた。今まで見てきた暴力団とは格好も雰囲気も違う。恐らくこの学校の職員だろう。
(ホント、めんどくせぇ……)
その後も組員やらチンピラ――偶に男性職員――が行く先々で現れては恭兵がそれを狙撃する、この繰り返し。現れる相手の人数は少ないが、正直うるさい。
ゲームなどで出て来る、他のキャラクターを守りながら目的地に向かうかなり面倒くさいボディーガード的ミッションをやっているような気分だ。
「ところで恭兵さん。昇降口に向かっているんですよね?」
「そう」
「あそこって、ガラの悪い人がいっぱい居ましたよ?」
「あのくらいなら大丈夫」
恭兵はプランがあるからか自信満々だが、芽愛は不安を隠しきれない様子だ。
そして昇降口に近づいた恭兵たち。
敵を倒しながらだったせいか、理事長室からここまで数十メートルしかないのに妙に長く感じた。
下駄箱がならぶ通路の先には、SKN1と――そして6人のガラの悪い男たち。
「居たぞ!」
「隠れろ!」
咄嗟に下駄箱の陰に隠れると同時に無数の銃弾が飛んで来た。
思った通り、昇降口の前には組員やチンピラが集まっていた。
「おい出てこい、もう逃げられねぇぜ! 大人しく女を渡しな⁉」
サングラスを掛けた――夜なのに――組員の挑発する強気な声が聞こえる。
「どうするんですか恭兵さん……?」
それでも恭兵は動じない。むしろ「いやなこった!」とこちらも強気で言い返すほど余裕だ。
「お前は馬鹿か⁉ こっちの方が人数は上だぞ⁉」
サングラスの組員の言う通り人数的にもそうだが、武装している数では圧倒的に恭兵たちが不利だ。
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫です。これ持ってください」
不安そうな舞に恭兵は言い聞かせると、ライフルを舞に渡し、SKN1のコントローラーを取り出し起動した。
「確かにそっちの方が頭数は上だ――でもな、それだけで勝った気になるのは早いぜ!」
「ふん。強がるなよガキが――」
「――後ろ見てみろ!」
そう言って振り返った隙をついて反撃という定番の手段。
組員たちは恭兵の言う通り全員振り向く――
「おい、見てみろ」
「はい」
――ことはなく。チンピラの1人だけが後ろを振り返って様子を窺い。それ以外の連中は恭兵たちの方を向いたままだった。これでは反撃しようと現れた瞬間に撃たれてしまう。
「誰も居ませんよ」
チンピラの一言に「やっぱり」とサングラスの組員はもらした。
「全然引っかかってないじゃないですか恭兵さん……」
これには芽愛も少々呆れ気味だ。
「この嘘つき野郎。誰も居ねぇじゃねぇか!」
「誰が人間だって言った⁉」
「はぁ⁈」
組員たち全員恭兵の言うことが理解できず、首を傾けた。
「絶対に顔を出さないで」
芽愛と舞にそう言うと、恭兵はSKN1のコントローラーに付いているボタンに指を置いた。
「
そう言ってボタンを押すと、SKN1のボンネットにある2つの
「なんだ?」
その機械音に気づいた組員たちが振り返った瞬間、マシンガンが火を噴いた。この銃は操作をしなくても自動で動く物を攻撃する「
マシンガンによって次々に倒れ、やがて攻撃対象が居なくなったため、マシンガンは沈黙した。
恭兵はもう一度コントローラーのボタンを押してマシンガンを格納。
恭兵が下駄箱の陰から出た。組員たちは全滅しているようだ。
「もう大丈夫だ。早く車に!」
先に駆け出した恭兵に芽愛と舞も続こうとしたが、舞は足を止め、芽愛もつられて立ち止まった。
横たわる組員を見て、舞はやはり複雑な表情を浮かべていた。
「さぁ、早く!」
先に進む恭兵が2人に向けて急かした。
その時だ。
ドン!
ズカーン‼
「うおっ‼」
SKN1が突然の爆発。恭兵は爆風で押し戻される形で床を転がった。
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