第7話 生活環境づくり
ドワコは木材採取のために森に入った。人の通りのない奥へ入っていろいろな木を物色してみた。そして、程よい大きさの木を見つけては鉄の斧を使って切り倒す。種族的な特性だと思うが、小さい体からは想像できないような馬鹿力で大きな木も簡単に切り倒してしまう。倒した木から余分な枝や葉を落とし丸太に近い状態にしてからアイテムボックスへ放り込む。この作業を数回行った後で工房へ戻った。丸太はそれなりの大きさがあったので工房の中には置くことができず、建物の横の空いたスペースに積み重ねておいた。ここから制作に必要な分だけ切り分けて工房へ持ち込むことにした。
材料が用意できたところで、必要性のある家具や道具から次々に作成していく。完成した家具が定位置に収まり、道具は棚などに収納した。
(内装はこんなものかな。これで食糧を除けば当面の生活は大丈夫だろう。足りなければまた作れば良いし)
ドワコは次の作業に移ることにした。ボロボロで修繕が必要な建物をリフォームするために建材や工具の制作を行っていく。制作自体はクリエイトスキルで即座に完成するので効率が良い。材料の準備ができたら、それを使い建物の改修作業に入る。力がかなりあるおかげで、複数の人が必要となる作業でも一人でも難なくこなすことがた。夕方ごろには今までボロ屋だったのが嘘のようにマイホームは新築同様の建物に生まれ変わった。木製品はこれでよいが、布製品に関してはこのスキルでの作成はできないため、布団や衣類の調達に関しては後回しにすることにした。
住に関しての生活基盤は完成したので、今後の収入をどのようにして得るかを考えることにした。まずはクリエイトスキルを使用して製作したものを売って生計を立てる。武器や防具、生活用品などいろいろ製作できるが相場や需要がわからない。商売に詳しい仲買の商人さんを間に入れた方が良さそうだ。次に冒険者としてギルドで依頼を受けてお金を稼ぐ方法がある。この2つの内のどちらか、又は両方で生計を立てるのが無難だろう。他にも力仕事ならできそうな感じなので肉体労働で稼ぐという方法も思いついたが今回は除外した。その理由は単純な作業ではなく、変わったことをしてみたいという気持ちが大きいからであった。
販売用に新たな武器を製作して、今日材料を仕入れた武器屋で売却して相場を確かめることにした。どの武器にしようかと考えながらクリエイトブックを開いてリストを確認した。今ある素材は鉄と木材のみなので制作可能な武器は限られる。今回は試しに鉄の剣を3つ製作することにした。鉄と木材をクリエイトブックで指定された適量を工房にある製作用の箱に入れ蓋をする。クリエイトブックから『鉄の剣』を選択して実行する。すると箱が光り蓋が開く。中を確認すると鉄の剣が鞘に収納された状態で入っていた。鞘まで付いてくるのは親切だなと思いながら、同じ作業を2回繰り返した。これで明日の準備は完了した。そのまま夜を迎え、昼にエリーと一緒に行った食堂で夕食を取り、帰宅後寝ることにした。
翌朝、製作した3本の鉄の剣を売るために武器屋へ向かった。
「ココハ、ブキトヨロイノミセダ、ナニカカウカネ?」
昨日と同じ機械的な文句で店の主人が話しかけてきた」
「今日は武器の買い取りをお願いします。これなのですが・・・」
ドワコは3本の鉄の剣をカウンターに置いた。
「ちょいと待ってくれ。確認させてもらうよ。」
目の前に現れた剣を見た店の主人の目つきが変わった。慣れた手つきで鉄の剣を鞘からだし刃の状態を確認しはじめた。
「これは製造されて間もない未使用の剣だな。このような上物が出るのは珍しいな」
店の主人が驚いた表情で言った。
(元々はここで見切り品で売ってた物だけど・・・)
内心ドワコは思っていたが、口には出さなかった。
「ひとつ大銀貨2枚、3本で大銀貨6枚でどうだ?」
査定が終わり、店の主人が査定額を提示した。
(大銀貨6枚・・・金額で言えば6万くらいか)
元はタダ同然で材料を仕入れた物なので、それでドワコは納得し売却することにした。
「それじゃそれでお願いします」
「ありがとよ」
商談が成立した。定期的に鉄が入手できれば、これは手間も余りかからず良い商売になりそうだ。ドワコはお金を受け取り店を後にした。その足で食料を調達するために昨日エリーから教えて貰った市場へ向かうことにした。
今日は市場が開催される日だ。市場には露店が並びいろいろな食材が売られ、たくさんの人でにぎわっていた。この村にいる人が全員いるのではないかと思われるくらい混み合っていた。見慣れない食材もあったために調理方法がわからないものもあったが、適当に食材を買いあさり当面の食糧を確保した。露店には串焼きみたいなものなど手軽に食べられるような物も売られていて適当に買って食べながら市場を回った。手にした食べ物はどれも薄味だった。ここで購入して調達した食料はまとめて袋の中に入れアイテムボックスへ入れた。この中に入れている間は時間の経過がしないのか、幾ら時間が経過しても食材が痛まず、次に取り出すまでは冷たい物は冷たいまま、温かい物は温かいままを維持するようだ。
午前中はこのように過ごし、午後からは冒険者ギルドへ向かうことにした。
「いらっしゃーい」
ギルドのおばちゃんが声をかけてきた。
「こんにちは、何か良い依頼とかないですか?」
ドワコが尋ねてみると、おばちゃんは微妙な顔つきになった。
「今このランクで紹介できる依頼で近くで行える物はないね。少し離れた場所になるけど、この村から少し行った小山のふもとに魔物の住むダンジョンと言う物があるのだけれど、行ってみるてはどうかな?そこに現れる魔物を倒すと魔石って言うのが落ちるからそれを回収してくればギルドで買い取るよ。収入にもなるし、買い取った分に相応したギルドポイントが付くよ」
おばちゃんがそう説明した。
(何かゲームみたいで楽しそう)
ドワコはシステムがゲームのようで少し面白そうに感じていた。
「でも2階層より下に行っちゃ駄目だよ。初心者だと生きて帰られないかも」
さらりとおばちゃんは物騒なことを言った。魔物のと戦う以上、危険が伴うということのようだ。
「わかりました。行ってみることにします。」
「詳しいことはダンジョンの手前にギルドの詰め所があるからそこで聞いてみると良いよ。現地調達は厳しいから食料や水の確保、武器や防具の装備を整えてから向かうといいよ」
今回は依頼は受けず、翌日ダンジョンへ向かうことにした。
ドワコは工房に戻り、ダンジョンの探索に備えるため魔法書を読んでみることにした。下級魔法は基本的に魔法名を言うだけで発動するようだ。不測の事態に備えるためにも出かける前に最低限これだけは覚えておきたい。中級、上級魔法は複雑な詠唱と魔法陣が必要になるので書かれた文字が読めないために現段階では使用できない。取りあえず下級魔法の練習をするために工房で木製の的を作り、村から出て人気の少ない場所へ移動する。火系魔法の火とかで火事になると大変なのでその辺を考慮してである。
魔法の練習を始めると、下級魔法は数が少ないので容易に覚えることができた。火属性の『ファイア』、水属性の『ウォーター』、風属性の『ウィンド』、土属性の『ストーン』これらは相手に向けて発動することで攻撃魔法として使用できるようだ。威力もある程度なら頭の中でイメージすることで任意で威力を調整できるようだ。ファイアやウォーターは自分に使用することで火を熾して焚き火ができたり、水を確保することができることが分かった。光属性の『ヒール』は回復魔法のようだ。実際使用する対象がないので現時点では威力がどれくらいあるのかは不明だ。闇属性は下級魔法には存在しないようだ。
ドワコは日が暮れるまで魔法の練習に取り組んだ。攻撃系魔法を的に得ている練習を重点的に行い、ある程度の命中精度が確保できるようになった。練習を終えて家に戻り、明日に備えてゆっくり休むことにした。
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