第5話 工房作りました

翌朝、朝食を終えて宿屋のおやじに尋ねてみた。


「この村で家を借りたり、購入できたりできるお店ってありませんか?」

「おっ、嬢ちゃん村に住む気になったのかい?その店ならこの宿の近くにあるぜ。」


ドワーフが村に住むということがどれだけすごいことなのかわからないが、宿屋のおやじの態度を見るとかなり歓迎されているようであった。おやじの言うとおりその店の場所は宿屋から近く、迷わず行けそうであった。


「ありがとうございます。それじゃ行ってみますね。」


ドワコは宿屋のおやじにお礼を言ったあと、部屋の鍵を返し宿屋を出ることにした。聞いたとおり目的の場所は近く、宿屋を出て1分もたたないうちに店に到着した。


「いらっしゃい。ドワーフの娘さんとは珍しいね。住む所を探しているのかい?」


店に入ると年配の亭主とみられる男性が声をかけてきた。


「はい。まだこの村に住むかは決めてませんが、話だけでも伺おうと思いまして・・・」


そうドワコは答えた。


(自分が出せる金額を超えている場合は、諦めるしかないよね)


不動産の相場がわからないので手持ちの金で足りるのかは不安であったが、聞かないことには金額もわからない。取りあえず結論はそれを聞いてからだとドワコは考えていた。


「どれくらいの規模の家を考えているんだい?」


まずは亭主がどのような物件を希望しているのかを尋ねてきた。


「取りあえず、私一人だけなので大きくなくても良いです」

「ふむふむ。それじゃこれくらいかな?該当する空き家は2軒だな。両方とも購入できるし貸すこともできるよ」


ドワコが希望を伝えると、それに見合った物件を亭主は2件提示した。


「それじゃ見せてもらっていいですか?」

「あいよ。ここからそんなに離れていないから案内するよ。」


取りあえず現物を確認しなければ決めようがないので、亭主に案内され物件を見ることにした。



1軒目。見た目はかなりくたびれて年季を感じだが、大きな部屋が1つと小さな部屋が2つある建物だ。1人で住むのには問題がない広さがあった。購入なら土地代込みで金貨5枚。賃貸なら1か月大銀貨1枚だそうだ。ボロいけど購入しても予算内で十分収まる物件だ。



2軒目。比較的新しそうな建物で、大きな部屋が1つと小さな部屋が1つある建物だ。購入なら大金貨5枚、賃貸なら1か月大銀貨7枚だそうだ。予算を超えているため購入は無理だが賃貸なら可能な金額だ。



ついでに尋ねてみたが、人口が少ないために、この村にはアパートのような集合住宅はないそうだ。



現在の所持金が150万あり、金貨5枚が50万、大銀貨1枚が1万、大金貨5枚は500万、大銀貨7枚は7万に相当する。この先どうなるかわからないが、1軒家を持つという向こうの世界での憧れがあったために1軒目で案内された物件を購入することにした。


(小さくても一城の主だ・・・なんちゃって)


ドワコはこれからのことを想像して少し顔がにやけていた。


「それじゃ最初に案内していただいた家を買うことにします」


ドワコは決断し、購入の意思を伝えると亭主は喜んでいた。



店に戻ってから譲渡に関する契約書(実際は板だが)を交わし・・・と言っても字が読めないので契約書に何が書かれているかわからなかったが、亭主が丁寧に書かれていることを説明してくれた。代金の金貨5枚を支払い、家の鍵を受け取った。手続きは終わっているので今日から住んでもかまわないそうだ。ドワコは早速自分が購入した家に向かうことにした。




平屋のボロ屋ではあるが今日から自分の家となる。まずは一番気になっていた『工房権利書』と言う物を発動させることにした。


(工房は一番大きい部屋で良いかな・・・)


ドワコは場所を決め、工房権利書を使用することにした。使用してみるとあっという間に工房らしい空間が部屋に出現した。壁際には大きな箱のような物体、部屋の中央には作業台と思われるテーブルと椅子、その他空いたスペースにはいろいろな物が置ける棚が配置されている。それ以外は何もないので寝るところもない状態だ。なければ作れば良いと思い、アイテムボックスにあるクリエイトブックを開いてみることにした。


(いろいろあるな)


クリエイトブックには武器や防具はもちろん家具や農機具などの記載があり、材料さえ揃えば作成可能なようだ。まずはスキルで製作するには記載された材料を準備する必要がある。


(まずは、寝床となるベットを作ってみよう・・・ふむふむ)


ある程度の木材があれば最低レベルの品物は作れるようだ。取りあえず材料調達の目的地は森になった。




森へ倒木を探しに行く。なぜ新しく木を切らないかと言うと木を切るための道具がない。キャラメイキングのときに武器を戦闘斧とかにしておけばと少々後悔したが今更言っても仕方がない。さらに森の奥に進み探索するとちょうど良い大きさの倒木を発見した。それをアイテムボックスに入れて帰宅する。これを工房に設置してある箱に入れ蓋をする。クリエイトブックを開き作成予定のベットが記載されているページに合わせ念ずると箱が光って蓋が開いた。中を見ると完成したベットがあった。


(まじですか)


これにはかなり驚いた。材料を箱に入れ蓋をすると記載されていたので書かれたとおりにすると完成品がポンと現れるようだ。これだけお手軽に物が作れるのなら素材集めは大変そうだけどいろいろと使えそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る