第4話 依頼達成
誠改めドワコは先ほど火の魔法を発動した魔法書を読んでみることにした。読み進めてみるとおおまかな説明などいろいろ書いてあるのに気が付いた。魔法のランクは3段階あり下から順に下級魔法、中級魔法、上級魔法となっている。下級は魔法の名称を言うことで発動できるものから、簡単な詠唱を行うことで容易に発動できるようだ。中級、上級に関しては長々とした文面と魔法陣のような図形が魔法書に記載されていた。今の時点ではその文字を読むことすらできないので使い方がわからない。そのため現段階では初級魔法以外を使用するのは無理なようだ。
(今はオオネズミを探すのが優先なので時間があるときに魔法の練習してみよう)
ドワコは方針を決め、昼ごはんとしてマンガ肉を食べ、空腹だったお腹を満たして森の奥へ進んでみた。するとさいさき良くオオネズミを発見した。ドワコの気配を感じたところでオオネズミが襲い掛かってきた。魔法書をアイテムボックスと便宜上命名したものに収納して続けて武器と防具を取り出し応戦する。前回その辺りに落ちていた棒を拾って戦っただけで勝てたくらいなので、武器として作られた物を完全装備したドワコの敵ではなかった。倒した後でナイフを使いしっぽを切り落とし回収した。これもアイテムボックスへ入れておくことにした。
このような感じで夕方までにはしっぽの回収作業を終え、ギルドへ報告と納品に向かうことにした。ギルドの中には朝と同様おばちゃん一人が受付の対応をしていた。
「おや、依頼の方は終わったのかい?」
おばちゃんはドワコに話しかけてきた。
「はい、オオネズミのしっぽを5つ集めてきました」
「じゃあ確認するね。大丈夫、それじゃ依頼完了ね。ギルドカードを預かるね」
レアな討伐証明ではないので、見てすぐに依頼の品物だと判断したおばちゃんはドワコからギルドカードを受け取り、手で持つタイプのバーコードリーダーのような物をあてて依頼達成のデータを記載し、ドワコに返却した。
「これは何をやっているんですか?」
気になったドワコがおばちゃんに尋ねた。
「依頼の達成をギルドカードに記録しているんだよ。達成したときに得られるポイントが一定量が蓄積されるとランクアップできるよ。もちろん失敗したらポイントは下がるよ・・・って初歩的なことなのだが、ギルドカードを作るときに説明なかったかい?」
(ごめん、チュートリアルで表示されていた気がするけど読み飛ばしてたかも)
ドワコは内心おばちゃんに詫びていた。
「それじゃ今回の報酬ね」
依頼達成の報酬としてドワコは銀貨3枚を受け取った。硬貨をポンと渡されてもいまいちどれくらいの価値かわからなかったが、それをアイテムボックスへ入れてみると所持金が3000増えたと表示された。これを元にこの硬貨がどれくらいの価値を持つのかをドワコは理解した。
「それじゃまた来ます」
「はいよ。またおいで。」
ドワコは挨拶を交わし冒険者ギルドを後にした。
(さて今日の寝床を確保しないと・・・村の中心部の端の方で見かけたベットの絵が描かれた建物に入ってみる。多分宿屋かな?)
収入を得たところで今日の寝床の確保をしなくてはならない。ドワコは村の中を歩き、宿屋と思われる看板を見つけた。そしてその建物に入ることにした。
「らっしゃーい」
建物の中に入るとすぐに宿屋のおやじと思われる人がドワコに声をかけてきた。
「お嬢ちゃんかい?噂になってるドワーフの娘って言うのは。泊っていくのかい?それとも他の用かい?」
見た目が珍しいのかドワコのことは村で有名になっているようだ。
「一晩お願いしていいですか?」
「ありがとよ。それじゃ夕食、朝食付きで銀貨3枚だ。良心的な価格だろ?」
ドワコは宿泊の意思を伝えた。宿屋の相場がわからないが、何となく悪い感じのしないおやじだったので疑うこともせず銀貨3枚を払うことにした。取りあえず今夜の寝床は確保することに成功した。
「部屋は2階の一番奥だ。鍵はこれな。食事がしたくなったら俺に声をかけてくれ」
宿屋のおやじに自分にあてがわれた部屋の鍵を渡された。ドワコはお礼を言って2階に上がり部屋に入ってみると広さは畳6畳程度の広さがあり、一人用のベットと机と椅子が備え付けられてあった。自分の体が小さくなったのもあり、試しに寝てみるとベットが広く感じた。しばらくすることもなくゴロゴロしているとお腹がすいてきた。下に降りて宿屋のおやじに声をかけると食事を用意すると言って奥に入り、少ししてからトレイにのせられた夕食を持ってきた。トレイには焼いた芋と野菜の入ったスープと良くわからない焼いた肉が載せられていて、ロビーの一画に設けられた飲食用のスペースに並べられた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
エリーの家でも焼いた芋と野菜の入ったスープが出たけどこの村での主食なのだろう。などと考えながらドワコは食べ物を口に運んでいった。味の方はまずくはなかったが何か物足りないと感じた。元居たところではいろいろな食べものがあり、好みに応じていろいろと加えることができたのもあったのかもしれない。機械的に食べ物を口の中に運び、食事が終わったところで宿屋のおやじが話しかけてきた。
「ドワーフの嬢ちゃんいつまでこの村にいるんだい?」
(この先全くの未定なんですけど・・・)
「特に行く予定もないので考え中です」
特に今後の予定を立てていなかったドワコはそう答えた。
「そうかい。もしこの村に工房を作るならいつでも相談にのるぜ」
「工房って?」
どこかで聞いたワードではあったが、聞き返すとおやじが変な顔をした。
「ドワーフって村や町に工房と言う物を作りそこを拠点に生活するって聞いたけど違うのかい?この村にはドワーフなんて滅多に来ないし、滞在したこともないから聞いた話だけどよ」
とおやじは答えた。思い返せばチュートリアルで説明があったような気がする。借りた家や購入した家で『工房権利書』を使用すると『工房』と言う物を作ることができ、その工房を使用することで素材を集めると武器や防具が作れるというシステムがあった。権利書は工房を閉鎖すると再び権利書としてアイテムに戻る仕様だったと記憶している。
(しばらく滞在するなら工房を作ってみるのも良いかも。当面の生活費とか稼げそうだしね)
おぼろげながら、ドワコはこの後のことを考え出した。
「工房ね・・・思い出した。ちょっと考えてみるね。」
「よろしく頼むぜ嬢ちゃん」
宿屋のおやじは何かを期待しているようであった。そのような会話をしてドワコは自分の部屋に戻り休むことにした。
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