第3話 冒険者ギルドへ行ってみました

エリーに空いている部屋を案内してもらった。お世辞にも綺麗な部屋とは言えず、半分物置のような部屋で手入れも行き届いていなかったが、野宿をすることを考えれば雲泥の差だ。今日の寝床を確保して落ち着いたところで今後の予定を考えてみることにした。


(まずは衣、食、住の確保かな?)


衣については今着ている服。これはキャラクター作成したときに着ていた物のようだ。派手な装飾もなく、地味な服だ。食に関しては収入を得て購入するか、自分で狩りに出て確保してくる必要がある。住については、宿屋を利用するとしてもお金の持ち合わせがない。家を借りたり、買ったりお金のかかることは論外だし。まずは生活するために収入を得ることが先決のようだ。幸い詳細はわからないがこの村には冒険者ギルドと言う物が存在するようなので、収入を得る方法については、ここで確認することにした。だが、既に時間がかなり経過し、日が暮れてきたので冒険者ギルドには明日行くことにした。


「かえったぞ」


しばらくするとエリーの父親が畑仕事から帰ってきた。彼からはエリーを助けたことについてのお礼を言われ、そのまま4人で夕食を取ることになった。この世界では芋が主食なようで、食卓に並んだ焼いた芋と野菜の少し入ったスープを頂いた。誠は今までの生活では総菜弁当に慣れた生活だったため、このような食事も新鮮に感じた。



ついでだったので誠は食事のときにエリーの両親にこの村と周辺の状況について尋ねてみた。両親の話では、この国は周りから見るととても小さな国で、人が集まっているような場所は現在いるアリーナ村と少し離れた所にある王様の住む城と城下町とで構成される王都のみで、周辺には農業などを営む小さな集落などが点在するらしい。規模としては他の国で言う領地と呼ばれる程度しかなく、侵略する気で他国から攻められるとひとたまりもないらしい。


(ここって結構あぶないところ?)


誠は話を聞いたときにそのように感じた。元々はもう少し大きな国だったそうだが、20年前にあった隣国との戦争で大きく領地を削り取られてしまい今に至るらしい。


(そういえばゲームでは隣国との戦争みたいなのはなかった気がする)


実際は本人は知らなところでプレイヤーが多人数で行う戦争はイベントとして行っていたのだが、ゲーム初心者の誠はそれを知らなかった。戦争の話を聞き、誠は平和が一番だと感じていた。




翌朝


エリーの家で朝食を頂き、誠はエリーと家族にお礼を言ってから家を出た。「もし今夜も泊まる所がなければうちに来てね」とエリーの母親から温かい言葉を頂いた。できれば自立したいが、泊まり先が見つからなかった場合、頼らせてもらうことにした。


(まずは仕事探しのために冒険者ギルドへ行ってみよう)


誠は村にある冒険者ギルドを目指すことにした。


「いらっしゃーい、ドワーフさんとは珍しいね」


冒険者ギルド・・・イメージしていたのと違いコンビニぐらいの広さで真ん中にカウンターがあり奥は事務用のスペース、入り口側には数人が座れる程度の椅子と壁には良く変わらない字の書かれた紙(のようなもの)が貼りつけてある。


(この紙は恐らく依頼かな?)


ギルドの中には受付嬢のおばちゃん(?)が1人いて他には誰もいない。誠が入ったのを確認すると威勢のいい返事があった。ギルドの中を確認すると掲示板には数枚の紙が張り出されていた。


「仕事の依頼かい?それとも依頼を受けに来たのかい?」


受付のおばちゃんが誠に用件を尋ねた。


「実は今手持ちがなくて、仕事がないか探しにきました」


と誠は答えた。


「と言うことはギルドには冒険者の登録してあるのかい?ギルドカードを見せておくれ」


とおばちゃんが言った。ギルドカード・・・あれ手に何か持ってる・・・。誠の手には何かのカードが握られていた。


「それがギルドカードだね。見せておくれ。どれどれ・・・」

「えっと、名前はドワコさん。ランクは銅だね」


ギルドカードを確認したおばちゃんが言った。


「銅ランクなら今受けられるのは茶色の紙で書かれている依頼だね」


おばちゃんは掲示板に貼られている紙を指差して言った。


「すみません。字が読めないんです」


見たことがない文字が書かれている紙は当然何が書かれているかわからず、誠は正直に答えた。


「そうかい、それじゃ何個か選んでみるからその中から決めるといいよ」


おばちゃんから提示された依頼はこの3つだ


*オオネズミのしっぽを5つ

*山菜収集(依頼主の要望する種類を指定するかご一杯)

*薬草取集(依頼主の要望する種類を指定するかご一杯)


(・・・山菜や薬草って全くわからないし、遭遇したことあるオオネズミしか選択肢がないじゃん)


と言う訳でオオネズミのしっぽ5つを集めてくることにした。


「いってらっしゃい。頑張ってね」


受付のおばちゃんに送り出され、誠は昨日行った森を目指した。




森に入ってから気が付いたが、手ぶらのままで出かけてしまい、誠は狩りをする武器などを装備をしていなかった。たまたま前回は木の棒で倒せたが、しっぽを集めるとなれば棒で殴ってホームランを放つ訳にはいかない。しっぽの回収も必要となり、道具も必要だ。どうしようかと考えていたら、ふとギルドでのやり取りを思い出した。


(ギルドカードってどこから出てきたんだろう???)


ギルドカードはいつの間にか手元から消えていた。・・・どこへ行ったんだろうと考えていると頭の中に所持品リストが出てきた。


*****所持品*****(16/上限20)

マンガ肉

マンガ肉

マンガ肉

マンガ肉

マンガ肉

水筒(残量2L)

皮の靴

皮の鎧

皮の盾

鉄のハンマー

ナイフ

テント

クリエイトブック

魔法書(+255)

ギルドカード

工房権利書


所持金 1567020

*************


(おお?これってゲームで持っていた物と同じだ。所持金もそこそこある。自由に出し入れできるなら当面の生活は大丈夫そう)


取りあえずリストの中から皮の靴、革の鎧、皮の盾、鉄のハンマーを取り出し装備することにした。リストの中にあったマンガ肉と言うのが誠は気になっていた。試しに1個取り出してみることにした。


ポン!


音と共に現れた物体。正にマンガ肉だ。1本の太い骨に何かよくわからない肉が巻き付いている。


「うまいっ!」


試しに一口食べてみるとすごく美味しい。昔見たこれと似た肉を美味しそうに食べる石器時代が舞台になったアニメを思い出した。


(そう言えばミンミンさんにもらった品物って何だろう・・・)


譲って貰ったときに名前確認してなかったが見慣れない物が1つあった。魔法書(+255)と言う名称の物だが試しに取り出してみる。だが、指定した物は現れなかった。するとどこからともなく声が聞こえた。


「取り出せません。両手を開けた状態で再度お試しください」


両手を開けた状態ね・・・改めて両手を見てみる。右手には鉄のハンマー、左手には皮の盾。確かに声の言うとおり両手が塞がった状態であった。



鉄のハンマーと皮の盾を収納し、再度魔法書を呼び出すと手元に出てきた。本のような形状をしているので取りあえず適当なページを開いてみる。すると魔法の名称と思われる物の下に難しい言い回しとよくわからない魔法陣のようなものが記載されている。書かれている文字は日本語ぽいですが、さっぱり意味が分からなかった。表紙から改めて見直してみると『下級魔法』と書かれている。この項目には難しい言い回しや魔法陣のような記載はなく魔法の名称のみ記載されている。


「ファイアー」


と書かれていた物を言ってみると目の前に火が出た。


(ひょっとしてこの魔法書と言う物を使うと魔法が使えたりする???)


自分の意思で現れた火を見た誠はそう思った。

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