第28話 幼馴染に手を掛ける

幼馴染との久しぶりの再会は、幼馴染が人質になっているという衝撃的なものだった。




ボスは、いつものように人質をどのように逃すのか算段を立てる事になる。




「でも、まさかあっくんとこんな所で会うなんてね〜。」




のほほんと話す幼馴染に、緊張感は全く無い。


ボスも一安心していた。部下をなんとかすれば、今回も乗り越える事ができる。




「まぁでも残念ですね〜!」




部下が声を張り上げる。


ボスは心の中で頭を抱えた。明らかに部下は人質の幼馴染に嫉妬している。




「ボスは人質を殺さないといけませんからね!いつものように!」




ボスは、一寸前の安心感を急ピッチで撤回した。


場合によっては、ボスは部下と衝突しなければならないかもしれない。




そんな不安を抱えつつ、なんとかできないか考えるボス。


人質の幼馴染が口を開いた。




「え〜。私、殺されちゃうの?」




少しだけ寂しそうに言う。


そんな幼馴染に部下は叫ぶ。




「そうだよ!!お前は幼馴染に惨めに殺されるんだよ!!そして、ボスはお前なんかに1ミリも興味はないからな!!」




なぜなら、ボスが1番好きなのは私だからね!


そう言いながら、部下は黒い瘴気を発して笑う。




そっかぁ。


人質の幼馴染は悲しそうに呟く。




寂しそうな笑顔を作った後、ぽつりと呟いた。




「まぁ、仕方がないよね。でも、最期にあっくんに会えて本当によかった。」




一粒の涙が、人質の幼馴染の頬を伝う。


俺は...。そう言って、下を向くボス。




「さぁ、早く私の首に手をかけて、あっくん。」




ボスは、クソッ!と言って幼馴染の首に手を添える。細い首から鼓動が流れてくる。




「えへへ...。そんな悲しい顔しないで、あっくん。私はあっくんに殺されて嬉しいんだよ。」




その言葉に、目頭を熱くさせるボス。


○○...!○○....!幼馴染の名前を呼び続ける。




「私はもう死ぬけれど、最後に、本当の最後にあっくんに伝えたい事があるの....。私は、あっくんのことが....ずっと....ずっと...す....。




「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!!!!!」




たまらず部下は叫んだ。




「何2人でロマンチックな空間作り上げてるんですか!!!こんなのもうやめですよ!!!ボス!この女を殺しちゃダメです!!!」




その言葉が聞こえた瞬間、ボスはさっと人質の幼馴染から手を離す。




そして、ポケットに忍ばせていた録音用のマイクのスボタンを押した。




「いやー、部下が殺しちゃダメって言ってくれて良かったなぁ。」




ボスは、白々しく伸びをする。




「本当に、部下ちゃんがいい子で私ラッキーだったなぁ。危うく死んじゃう所だったよぉ。」




人質の幼馴染はさっきまでの涙が消え去り、ニコニコとしている。




部下は、ワナワナと震え出した。




「あんたら....。2人で私をはめやがったな!!!」




悔しさのあまり、涙目で睨みつける部下を見てかわいいなぁと2人は呟いた。

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