第27話 あっくん
懐かしい夢を見たボスは、寝ている部下に抱きしめられ身動きが取れない状態だった。
そんな状態の中、夢で一緒に遊んだ少女について考える。
すると、ドアからノックの音が聞こえてきた。
まずい事になったな、焦りを感じるボス。
まだ入るな。そう言おうとした瞬間、凄まじい力で部下に抱きしめられる。
その力に驚きを感じながら、ちらっと上を覗くと、起き抜けで眠そうな目をしながらも、しっかりと状況が把握できた部下の顔が。
部下の胸の中で、もごもごと声を出そうとするボス。しかし、その声はノックの主には届かなかった。
「ボス、人質をお届けにッッッ........」
ノックをしてから、くぐもった声が聞こえてきたので入ってもよいと思った黒服の男は、衝撃的な光景に言葉を詰まらせる。
ソファの上で、激しく交わるボスと同僚を見て、全てを察した黒服の男は、人質をさっと部屋に入れると、失礼しました!!!と大声で叫び、一目散に逃げていった。
黒服の男が去っていくと、部下はボスの事を解放する。
「...やってくれましたね。」
ボスは、諦めたように言う。
「責任とって下さいね。」
部下がニヤニヤしながら、ボスの耳元で囁く。
そんな光景を見て、現状をいまいち把握できていない人間が部屋に存在していた。
「あの〜...」
その声に、ボスはようやく顔を向ける。
その人質は、夢でみた少女をそのまま大人にしたような顔をしていた。
驚きのあまり大きく口を開けるボス。
「君は夢で、おっぱ...丘で一緒に遊んだ!!」
テンションが上がり、人質を指さして話すボス。
「おっぱ丘??」
不思議そうな顔で首を傾げる、人質の女。
部下は状況がいまいち掴めぬまま怪訝な顔をしている。
何かを思い出すように人質の女は、ボスの顔をマジマジと見つめた。
はっ、とした顔で手を叩く人質の女。
「もしかして!あっくん!?」
人質の女は、ボスに尋ねる。
そのあだ名を聞いて、ボスは過去の記憶が鮮明に蘇った。
「あぁぁぁぁ!!昔、近所に住んでた!!あの子か!!」
ボスは叫んだ。
懐かしい記憶が、芋づる式に蘇る。
ただ1人、取り残されているのは部下だけだった。
「で、結局この人質は誰なんですか?」
部下はつまらなさそうにボスに尋ねる。
ボスと人質の女は顔を見合わせて、少し照れたような素振りを見せる。
その様子に、少しイラッとする部下。
ボスは、優しい笑顔を見せながら言った。
「まぁ、幼馴染...みたいな感じかなぁ?」
あはは...と照れ笑いを浮かべる2人。
あっそうですか。そう言いつつ貧乏ゆすりをしながら、肘をつく部下。
「あっくん、大きくなったんだね。」
人質の幼馴染は、しみじみと言う。
「まぁ、引っ越しちゃってからだいぶ経つしね。」
ボスも懐かしそうに話す。ほのぼのとした時間が過ぎていた。
「ていうか、あっくんてなんですか?」
部下はぶっきらぼうに尋ねる。
それはね〜。えへへと笑いながら人質の幼馴染は答える。
「昔から、この子は悪役が好きでね。それで、私があっくんってあだ名をつけたんだよ。」
悪役好きで、あっくん。懐かしいなぁ。と思い出に浸る人質の幼馴染。
あぁー!そんな事あったねぇ!ボスも明るい口調で話す。
「ふーん、そうですかぁ。かわいいあだ名じゃないですかぁ。ねぇ、あっくん?」
部下が冷たい目でボスを見ながら、ボスの脇腹をつねる。
その痛みでやっと冷静さを取り戻したボス。脳裏によぎるのはいつものことながら、どのように人質を逃すかだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます