第26話 懐かしい人
柔らかい風が吹いていた。
ボスは、優しい陽光を浴びながら、薄い白と黒のグラデーションが作る空を眺めていた。
ひどく懐かしさを感じるボス。
ボスの隣には、少女が立っていた。
気が付けば、ボス自身も少女と同じ背丈になっている。
少女がボスの方を向き、寂しそうに少し笑って、何かを言った。
ボスは、その言葉を聞くことができず、ただ頷くだけだった。
2人は、草原で遊んだ。
敷き詰められている白い草花の丘は、とてもやわらかく素晴らしい感触だった。
その丘は2つ存在していた。
ゴムボールのような感触を感じながら、2人は遊んでいた。
お互い言葉を交わす事は無かったが、とても懐かしくて、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
しばらくすると、その丘が徐々に傾いている事に気がついたボス。
あれよあれよと言う間に、丘はひっくり返ろうとしていた。
危ない、そう感じた時にはもう遅かった。
急いで隣を確認すると、いつの間にか少女の姿は無くなっていた。
そのまま、柔らかな丘に押し潰される。
とても安心するような香りに包まれるが、ひどく苦しい。
ボスはもがく。何度ももがいたが、そこから出る事ができない。
何かがおかしい。頭の後ろを押さえつけられている気がする。
あれ?これ、どういうことだ?
ボスはどこかに質問を投げかける。
はっと気がついた。
ここでボスは自分が夢の中にいた事を理解した。
目を開けるボス。
視界は真っ暗だった。息も苦しい。
かなり焦る状況だったが、次の瞬間には、全てを理解した。
部下にかなり抱きしめられている。
なんとか鼻と口を外に出し、空気を吸うボス。
部下はまだ夢の中にいるようだった。
酸素を取り込んだ事で、徐々に覚醒に向かうボスの脳と感覚。
部下の胸の感触を顔に感じながら、落ち着こうとするボス。
気付けば、さっきまで見ていた夢を思い出していた。
あの丘は、そういう事か...。ボスはそっと呟くと、苦笑いを浮かべた。
そして、次に思い起こしたのは、あの少女についてだった。
あの丘で一緒に遊んだ少女には見覚えがあった。
しかし、いまいち思い出せない。
あの少女についてゆっくりと思い出そうと考えたボス。
まずは、寝ている部下から脱出しなければならない。
力を込めて、部下をどかそうとするが、信じられない力で締め返される。
安らかな寝顔からは考えられない剛力に対し、ボスは早々に脱出を諦めてしまった。
それにしても、あの女の子は誰だったのだろうと考える。
すると、ドアからノックの音が聞こえてきた。
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