第17話 二人の関係。

 立花さんと司がハンバーガー屋から俺の所まで来た。


「はい、どうぞ」


 ベンチに座っている俺は、司から紙袋を受け取る。


 袋を開け中を見るとハンバーガーとポテトが入っていた。


「ど、どうぞ」


 立花さんからはハンバーガー屋の大きめの紙コップに入った飲み物を受け取る。中身は炭酸飲料だ。


「二人ともありがと」


 俺はニコッとスーパースマイル。二人に感謝だ。


「いくら?」


 司に代金を支払う為に値段を聞く。


「いいよいいよ。僕のおごり」


「いや、ちゃんと払うよ」


「いいよいいよ。その代わり唯さんと何の話をしていたか教えてね。すっごい気になるから」


 そりゃあ気になるだろうね。唯ちゃんが俺の元カノだと立花さんは気づいただろうし、司にも教えてるはずだしね。


 俺は二人を見た。司は興味津々っぽい。立花さんは……よく分からない。見つめたら目を逸らされた……。


「ハンバーガーをおごらなくても教えるよ。別に隠すほどの事でもないからね。

 でも、せっかくだから甘えようかな。司、ありがとな」


 俺はベンチから移動して、目の前の芝生に座った。理由はベンチだとハンバーガーが食べづらそうだったから。


 司と立花さんは今まで俺がいたベンチに座ってもらった。


「話は食べながらでいい? 腹減ってツライ」


「いいよ」


 とりあえずハンバーガーを一口……うめぇ、美味すぎる。も、もう一口。


 予想以上にお腹が空いていた。一気にハンバーガーを食べ、ジュースをゴクゴクと飲んだ。


「よっぽどお腹空いてたんだね」


「あ、ごめん。美味すぎて夢中になった」


 司と立花さんはクスクスと笑った。笑われるほどガブガブ食っていたのか……。


「で、何から話そうかな」


「一応確認なんだけど」


「何?」


 司が何か確認したいらしい。


「唯さんは、真一の元カノさん?」


「そうだよ。中三の頃に付き合っていた」


「二人の関係を詳しく知りたいなぁ」


 司は俺と唯ちゃんの関係に興味津々だ。


 隠す必要もないので、俺は唯ちゃんとの関係を説明した。


 ◇◆◇


 宇座川唯ちゃんとは中学の部活で知り合った。部活は陸上部で短距離。


 第一印象はとにかく可愛い。なにをしても可愛い。そして笑顔が最強と思った。


 残念なことに俺と唯ちゃんは一年から三年までクラスは違った。だから話す機会も少なかった。


 唯ちゃんは明るく元気で誰とでも気さくに話をする子だった。


 初対面の俺にも話しかけてくれた。はい、そうです。一瞬で好きになりました。


 で、三年生になりたての部活の終わりにたまたま二人きりになった。部室の鍵を職員室に持って行く時にね。


 その時に唯ちゃんに告白された。『私、しんちゃんのこと好きなの。付き合って下さい』ってね。


 突然の事で俺は頭がパニック全開。パニックになりながらも『はい、喜んで』と返事した。


 唯ちゃんには笑われた。声が裏返ってたしね。


 毎日が幸せだった。学校一の美少女と言われていた女の子が彼女だよ。幸せ以外の何がある?


 でもね……幸せな日々はあっという間に終わった。


 俺は夏休み前に振られた。『もっとドキドキする恋がしたい』って言われてね。


 振られるもの当然。唯ちゃんとは一度もデートをした事はなかった。手も繋いだ事はない。一緒に帰った事もない。


 スマホも持ってなかったから、電話とかチャットとかもしてなかった。


 唯一の接点と言っていい部活の時も付き合う前と変わらない関係だった。


 俺たちは恋人って言えるものじゃなかった。だけどそれは俺が何も行動を起こさなかったから。全て俺が悪い。


 ◇◆◇


「まぁ、だいたいこんな感じかな。別れてからも唯ちゃんは変わらず気さくに話しかけてきたから、今日も普通に話が出来たんだけどね」


「そうなんだ」


 司は俺の説明を一通り聞いて満足したようだ。立花さんは……よく分からない。真剣に話を聞いてはいたようだけど……。


 ふぅ、ちょっと休憩、ポテトをパクパク。うんまい。食べながらチラッと立花さんを見ると俺を見ていた。


 う〜ん、改めて立花さんと司を見ると、美男美女だよね。しかも二人は成績優秀、スポーツ万能、人望もある。完璧だ。


 しかも二人は幼馴染ときたもんだ。もうね、ドラマやアニメや小説の主人公なんだよね。


 そんな人達が現実にいるなんてね。凡人の俺とは大違いだ。


「……真一、聞いてる?」


「あ、ごめん。聞いてなかった」


「唯さんとさっきは何の話してたの?」


「雑談と、また俺の彼女になりたいって言われた。断ったけどね」


 ……ん? どうして立花さんがホッとしてるんだ? なんで司は喜んでいるんだ? はて? 


「唯さんは自分から振ったのに、また付き合いたいって変だよね?」


「ドキドキより、気を遣わない方が良いということに気づいたらしいよ」


「なるほどね。ところで真一と唯さんはスマホ出してたよね。もしかして連絡先交換したの?」


「うん。しつこかったから仕方なく」


 そうなんだよね。仕方なくだよ、喜んで交換はしてない。いやマジで。


「そっか。じゃあ、真一は沙織とも連絡先の交換しないとね」


 へっ⁉︎ 急に何言ってるんだ? 唯ちゃんと交換したからって、どうして立花さんとも交換になるんだ⁉︎ マジで意味が分からん。


 立花さんもおまえが訳の分からない事を言い出したから、声を発さずに口を開けてメッチャ驚いてるぞ。

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