第5話 誕生日プレゼントは何がいい?

 妹の瑠華がおやつを食べながらおしゃべりしたいと言ったので、俺達三人は大型商業施設内の喫茶店に移動した。


 四人がけのテーブルに俺と瑠華が並んで座り、正面に立花さん。


 瑠華はチョコパフェとオレンジジュース、立花さんはショートケーキとコーヒー。俺はコーヒーだけを注文した。


「はおししゃんはなにをはひひきはんれしゃか?」


「……瑠華、なに言ってるかわからないから、食べてからにしたら?」


「ふゃ〜い」


 口いっぱいに入っているチョコパフェをモグモグと食べ、オレンジジュースをゴキュゴキュと飲む瑠華。


「ぷはぁぁ。おいしい〜」


「そっか。よかったな」


「奢りだとさらに美味しく感じるね。ありがと、お兄ちゃん」


 ……いや待て。奢るとは一言も言ってないぞ。誕生日だからって調子にのるなよ。


「優しいお兄さんで良かったね」


「瑠華、他に食べたいものがあるなら、頼んでいいからな」


 まぁ……瑠華は今日誕生日だから特別に許そう。


 そして、立花さんに良き印象を与えておこう。


「沙織さんの買い物ってなんですか〜? 瑠華は今日誕生日だから、お兄ちゃんからプレゼント買って貰うんですぅ」


 楽しそうに弾んだ声で話す瑠華。


「瑠華ちゃん今日誕生日なんだ。おめでと」


「ありがとございま〜す」


「じゃあ、私からも、なにかプレゼントしようかな。高い物は無理だけど、なにか欲しい物ある?」


「いいんですか? やったぁ。じゃあじゃあ、一日だけでいいから勉強教えてもらいたいですぅ」


「勉強? うん。いいよ」


「やったぁ。沙織さん、瑠華と連絡先交換して下さ〜い」


 立花さんと瑠華はお互いスマホを取り出し、連絡先を交換している。


 妹と連絡先を交換中、俺をチラチラ見る立花さん。なんだろ?


 ……あ〜、あれか。俺は立花さんから信用ないっぽいからなぁ。


 大丈夫だよ立花さん。いま妹と交換した連絡先は絶対に聞かないから、安心して下さいな。


「沙織さんの買い物ってなに〜? 気になる〜」


「えっ? えっと……誕生日プレゼントを買いに来たの」


「彼氏にですか?」


「違うよ。ただの幼馴染に、だよ。明日誕生日でね。プレゼント欲しいって泣かれちゃって、それで仕方なく買いに来てるの」


 ほう。おそらく幼馴染は神谷司だろう。プレゼント欲しいからって泣くなよ。情けない。


「でもね、何を買うか悩んでるの。私のプレゼントなら何でもいいって言われちゃって」


「その人って男の人です?」


「うんそう」


「お兄ちゃん」


「なに?」


「考えて」


「なにを?」


「幼馴染君にあげるプレゼント」


 は? 何故俺が神谷司へのプレゼントを考えないといけないんだ?


 立花さんを見ると、期待の眼差しで俺を見ていた。これは真剣に考えた方が良さそうだ。


「う〜ん。立花さんから貰ったら嬉しいものね」


 神谷司の気持ちは分かる気がする。確かに何を貰っても嬉しいと思う。


「そうだなぁ……俺なら手作りのお菓子かな。プレゼントで貰えたら、すげ〜嬉しいと思うよ」


「手作りのお菓子……それにします。ありがとうございます」


 よかったな神谷司よ。俺に感謝するんだな。立花さんの手作りお菓子を貰えるぞ。


 それから立花さんと瑠華は自分達が注文した、チョコパフェやケーキを食べながら雑談をした。


「指輪買ってもらうんだ。いいなぁ」


 立花さんが羨ましそうに話をしている。


「沙織さん、このあと一緒に指輪見に行きませんか?」


「私も?」


「うん。ダメですか? うるうる」


「いいよ。一緒に行こっ」


 う〜ん。妹の瑠華が凄いのか、立花さんがちょろいのか……いや、これは両方だな。


 二人の話がまとまった頃、注文していた商品もすべて食べ終えたので、俺達は店を出た。


 立花さんの分は本人が支払った。俺が出すと言ったけど断られた。


 さてさて、指輪の売っているお店に移動しますか。貯めていたお年玉が全部なくなるけどね……。

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