第4話 立花さんと妹の初顔合わせ。
日曜日の午後。俺は家から少し離れた大型商業施設に一歳下の妹、
「らんらあ〜。ゆびわっ、ゆびわっ、お兄ちゃんからの婚約指輪〜」
「おい瑠華。なんだよ婚約指輪って。ただの誕生日のプレゼントだろ」
「お兄ちゃん、美少女心が分かってな〜い。つまんなーい」
美少女心ってなんだ? 乙女心ってやつじゃないのか? 意味がわからん。
◇◆◇
今日は妹の誕生日。朝、普段起こしにこない妹に起こされた。
寝ぼけている俺に妹の瑠華は、あげる予定のなかった誕生日プレゼントをしつこくねだってきた。
だから仕方なく妹と二人で買い物に来ている。何が欲しいと尋ねると、指輪が欲しいとのこと。
中学三年生が指輪って……。
「あ、お兄ちゃん」
「なに?」
「お花摘みに行きたい」
「ああ、わかった」
妹はトイレに行きたいらしい。俺は大丈夫なので近くのベンチに座って待つことにした。
妹を待っている間ひまなので、目の前を通る人達を眺める。
家族連れが多い。俺と同年代も結構いるね。
ん? アレは……。
遠くに見慣れた人がいる。立花さんだ。一人かな? 周りに友達はいなさそうだけど……。
私服姿の立花さんは初めて見た。制服姿もかわいいけど、私服姿は二倍増しでめっちゃかわいい。
立花さんを見つめていると、向こうもこちらに気づいた。
驚いた表情を一瞬見せる立花さん。
俺が小さく手を振ると、少し躊躇してからコチラに近づいてくる。
今回は無視されなかった。
「こ、こんにちは、橋野君」
立花さんは何故か緊張している。俺、同級生ですよ? 人畜無害な存在ですよ?
「こんにちは。立花さんは何か買いに来たの?」
「は、はい」
「なになに、何買いに来たの?」
「えっと、あの、それは……」
立花さんの緊張を和らげようと思い、フレンドリーに話をしてみた。
残念ながら立花さんの緊張は解けない。しかも何を買うのか教えるのをためらっている。
「お待たせ〜。ねぇねぇ、そのひと誰〜?」
妹の瑠華がトイレをすませて戻ってきた。
「おかえり。この人は同じ一年生でクラスメイトの立花沙織さん」
「はじめまして〜」
妹の瑠華が立花さんに挨拶をした。
「は、はじめまして。橋野君の彼女さん……ですよね。ごめんなさい……お二人の邪魔をするつもりはなかったので……すみません。これで失礼します」
へっ? 彼女? 瑠華が?
「ちょ、ちょっと待って。瑠華は妹で、彼女じゃないよ」
「えっ? そ、そうなんですか?」
瑠華もコクコクと頷いている。
立花さんと妹の瑠華は初対面だけど、なにをどうしたら俺の彼女と勘違いされるんだ?
「なんで瑠華が彼女と思ったの?」
「それは噂で……」
「噂?」
「はい。橋野君がお人形かと思うくらいすっごくかわいい女の子と腕を組んで歩いていたと噂があって……みんなが『絶対に彼女だよ』と言っていたから……」
「あ〜、なるほど。全部コイツです。俺に彼女はいません」
俺は瑠華に指をさしながら立花さんに真実を教えた。
「スキンシップは兄妹のたしなみです」
「瑠華、ドヤ顔しない」
「あの……私、買い物があるので、そろそろ……」
どうやら立花さんはココから一刻も早く立ち去りたいようだ。
「瑠華、沙織さんともっとお話しした〜い」
「え? 私と?」
「うん。瑠華とお話ししませんか? うるうる」
……瑠華の腹黒が出たな。コイツは自分がかわいいと理解している。そしてそれを最大限に利用して、立花さんを落とそうとしている。
「う〜ん……いいよ。買い物は特に急がないから、お話ししよっか」
おい、おいおいおい! ちょっろ! ちょろすぎる。俺の時とは態度が大違いなんですけど!
……ちくしょー。妹に負けた! 簡単に落ちすぎでしょ立花さん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます