卒業から始まる物語②

「おはよう、春木」

「春木、おはよう」

「おはよう、裕太、氷雨」


下足室に着くと、同じクラスのヤツが挨拶してきた。


「ところで、どうしたんだ2人とも。いつもならもう少し早く登校してるだろ?」

「いや、お前と会えるのが今日で最後だから挨拶しておこうかなって」

「高校、東京の方に行くんだろ?」

「なんで、そのことを知ってるんだよ……」

「すまない、進路決定表見てしまったんだよ」

「そっか……、でも紗芽には内緒で頼む」

「わかってるよ、心配するな」

「あと、答えられないなら答えなくてもいいけど、東京に行くのは、家族の転勤とかなのか?」

「……いや、東京に行くのは僕一人だ。というよりもこの町から離れて、一度別の世界を見てみたいというのが、僕の親への唯一の我儘だから」

「そうか……、寂しくなるな」

「大学はどうするんだ?」

「多分、こっちに戻ってくるかも知れないな」

「なら、大学からはもう一度同じ学校に通うことが出来るな!!」

「そうだね……」

「あ、メッセージのIDは教えろよ。何か相談していことがある時は、気兼ねなくしてくれよ!!」

「ありがとう、助かる」

「じゃあ、僕達はここで……」

「じゃあ、またね」


そう言うと、2人は自分達のクラスに入っていった。

僕も自分の教室へ向かった。











「おはよう、春木」


クラスに入ると、男子生徒から挨拶された。


「お、おはよう」

「今日で、俺達も中学生終わりだぜ」

「そ、そうだね……」

「ところでさ、お前、どこの高校行くんだ?」

「ああ、御崎高かな……」

「そうか、俺とは別か……、次会うのは、成人式か同窓会かな」

「そうなの、かもね」

「じゃあ、今日の謝恩会にも出ないのか?」

「ちょっと用事があって、出れないんだよ」

「そうか、卒業式楽しめよ」

「ありがとう」


そう告げると、男子生徒は立ち去って行った。

と同時に


「お前ら、席に着けー」


担任が最後の朝のホームルームを行うために入室した。

どうやら先生は少し寂しそうな顔をしている。

3年間育ててきた生徒の旅立ちだ、嬉しくも悲しくもあるんだろう……

そこからは、卒業式までの連絡事項の報告が始まった。


「さてと、最後に……、入ってこい」

ガラガラガラ

と教室のドアが開いた。


「失礼します、1年4組の河原です。卒業する先輩方に記念品を手渡すために来ました。先輩方、本日は卒業おめでとう御座います!!」


と言いながら、河原くんは一礼した。

それと同時に廊下にいたと思われる1年生が3人、僕らのクラスに入室した。


「ありがとう、河原。そして、残りの一年生達も」

「僕たちの一年生も先輩方にこのように歓迎していただいたので、僕たちの恩返しです」


その瞬間、さっき僕と話していた男子生徒が立ち上がった。


「河原くん、ありがとう!!ここに居る卒業生の代表として委員長の僕がお礼を言わせてもらうね、これからもお互い頑張っていこう!!」


そう言うと、男子生徒は右手を河原くんに差し出した。


「はいっ!!先輩方もお元気で!!」


そう言うと2人はとても熱烈な握手をした。


「それじゃあ、卒業生1人ずつの机を回って渡していきます!!」


そう言うと一年生は1人ずつに手渡しで記念品を手渡していく。

僕の列は少し小柄だけど、かなり可愛い女の子が1人ずつ手渡していた。

僕は一番後ろの席に座っているため、順番的に最後になった。


「先輩、卒業おめでとうございます。これからも頑張ってください」


そう言うと記念品を僕の机に置いた。


「ありがとう、君も頑張って!!」

「はいっ、ありがとうございます!!」


そう言うと嬉しそうに教卓の方に戻って行った。


「それでは、僕たちはこの辺で失礼します。皆さん、これからも頑張ってください!!」


そう言うと河原くん一同は、教室を出て行った。


「じゃあ卒業式までもう少しあるから、ゆっくりしていてくれ」


そう言うと担任は教室を出て行った。

僕は、記念品をカバンに直そうとすると、記念品の下に手紙が入っているのを見つけた。


『卒業式が終わったら、校舎裏の桜の木の下に来てください』


と可愛らしい字で書かれていた。

これは、どう考えても告白だよな……

そんな事を考えながら、僕は卒業式までゆっくりすることが出来ず、卒業式本番に向かうのであった。

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