第53話
〈ユウ視点〉
伊織が俺部屋に移り住んで2週間になる
できる限り定時で終わらせてから
真っ直ぐマンションへ帰宅するが
片道40分の道のりが長く感じる…
駅の改札を抜けると伊織を見かけ
声をかけようか迷ったがこの駅に入っている
スーパーに用があるんだと分かり声をかけずに
後ろから伊織の後を追った
調味料関係はコッチのスーパーの方が安いと
言っていたから夕飯に使う予定の調味料で
足りないものでもあったんだろうと思い
「ふっ…」と笑いがでた
こんな時間だしちょっと高くなっても
マンション近くのコンビニで買えばいいのに
それをしないのが…伊織らしい…
探していたのは砂糖だったようで棚の前に
立ってまた何かを悩んでいるようだった
相変わらずだと思いながら伊織に近づいていき
ユウ「今日の夕飯はなんだ?」
そう声をかけると驚いた顔をして
「お帰りなさい」と言う伊織に「ただいま」と
言いながら手を握った
ユウ「で、今回は何を悩んでんだ?笑」
「・・・・また見てたの?ストーカーさん?笑」
ユウ「ふっ…早く買って帰ろう」
「・・・待ってね…
てんさい糖と、きび砂糖を迷ってるのよ…」
ユウ「普通の砂糖じゃないのか?」
「・・・・・・・」
前に伊織の家で使ってたのは
普通の白い砂糖だったはずだと思い尋ねると
伊織は俺をチラッと見た後「なんとなく」と言って
てんさい糖を手に取ってレジに向かって歩きだした
パッケージに書かれている文を見ると
体にいいんだろうが、値段は通常の砂糖に比べても
約2倍位は高くあの伊織がソレを買っている事に
少し驚いたが・・・・
( 多分、俺の為だろう… )
伊織の中で俺が少しずつ〝特別〟な存在に
なっていってるのが嬉しくなった…
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