第50話

〈ユウ視点〉







あの後、俺に抱きついたまま半分寝てしまった

伊織をタクシーに乗せて

マンションまで帰っていると

寝ぼけた伊織が「んー枕」と言いながら俺の膝に

頭を乗せてきて驚いたが…






こんなに楽しく酔っている

伊織を見るのは初めてで可愛く思った



 



今日であの仕事を終えて多少開放的にも

なってたんだろうが、外であんな風に甘えて

くるなんて今後ないだろうし素直に嬉しかった…






伊織はあの日俺を〝ちゃんと知りたい〟と言って

くれて俺に向き合ってくれていて…

「泊まりたい」と言っても前みたいに

困った顔をしなくなったし一緒に住む事も…






もしかしたら俺が泣いたりしたから

無理してる部分もあるんじゃないかと

不安になったりもした…






だけど・・・

俺の足に頭を乗せて眠る伊織を見ながら…

間違いなく俺と伊織の距離は近づいている気がして

自分の頬が緩んでいるのが分かった…





俺のマンションに着き伊織を

タクシーから降ろして

部屋のソファーに座らせると





「・・・・山ちゃんは?」





と部屋の明かりが眩しいのか

目に手を当てながら聞いてきた





ユウ「あの女……山ちゃんなら先輩達が送った」






と言って伊織に水の入ったグラスを渡すと

受け取りながらも

何故か機嫌が悪そうな顔をしている…







「なによ…馴れ馴れしく…」





ユウ「・・・・・・・」






俺の勘が当たっているのであれば…

コレはヤキモチってやつだろ…





ユウ「・・・伊織?」






返事をせず水を飲みながら

コッチに目をやったかと思えば

「フンッ」と顔を背ける…






ユウ「・・・・俺のこと…」






(好きか?)と聞こうかと思ったが止めた…

アノ言葉は伊織が自分から言ってくれるまで

待とうと思ったから…






「・・・・なによ?」






ユウ「・・・・・・・」







さっきまでは可愛いかったのに

ヤキモチを妬くと…

どーやら面倒くせー女になるらしい…




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る